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154話 「高級宿だったらしい」
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「はい、これ頼まれてた奴」
翌朝探索者達に前日頼まれていた日持ちのする弁当を渡す加賀……ではなくアイネ。
「アイネさんあざっす……加賀ちゃん大丈夫?」
受け取った探索者達は加賀が出てこないのを心配するように厨房の方へと視線を向ける。
そういったスケジュールが組まれていたのだろう。皆が皆、泊まりがけでダンジョンに行くことになり宿の従業員は昨晩から必死になって探索者達に渡す食料を拵えていたのだ。
アイネは余裕そうであるが、加賀はそうも行かなかったらしく厨房から出てくる気配がない。
「大分疲れていたけど今日一日休めば大丈夫だと思う」
「加賀さんには悪いことしていまいましたねぇ。事前に人数とか知らせておけば良かったです……」
「そうね、次からそうして貰えると助かる……集合時間遅れるよ?」
アイネの言葉に慌てて礼を言って玄関へと向かう探索者達。新人達より遅れるわけにはいかないのだろう。
集合場所であるギルド前に来てみればどうやらまだ新人たちは来ていなかったようだ。とりあえず新人達より遅れなかったことにほっとし、乱れた息を整える。
「お、きたか」
宿から急いできた探索者達ではあるが、それは正解だったかもしれない。
少しだけ新人達の意識も変わってきたのか、予想よりも早めに集合場所へと表れたのである。
「お待たせしました」
「いいや、大した待ってないよ……んじゃ、荷物確認から始めるかね」
そろったのを確認し新人達の荷物を確認しだす。今日は泊りがけでダンジョンに潜るのだ、それなりに用意は必要である。
「ま、こんなもんかね……ああ、携帯食は少なめで良いぞ。お前らの分も食料持ってきてるからな」
おまえの分も持ってきていると聞いた新人達の反応は様々だ。素直に喜ぶ者、嫌な予感に顔をしかめるもの、買いすぎた食料をどうしようかと頭を悩ますもの等々。
「……空が見える」
「迷路タイプだな、壁に片方の手を当てて進んできゃいずれ出口に着くが……間違っても実際手をつくなよ? 罠あっからな」
罠があると聞いて慌てて手を放す新人達、それを見て苦笑しつつ探索者たちは先へと進む。
迷路は他と比べ敵が多いがその分見返りも大きい。迷宮を抜ける頃には彼らはいくつかの宝箱を見つけることが出来ていた。もっとも見返りが大きいとは言ってもそれは低レベルなダンジョンにしてはという話であるが、それでも新人達は宝箱を見つけたことで喜びに満ちていた。
「それじゃ今日はここで野宿する。ああ、寝るときの見張りはこっちとそっち一人ずつ計二人で2時間毎に交代な」
んじゃ、飯にすっかねと言って焚火に向かうヒューゴ。
カバンから瓶詰めを取り出し中身を鍋にあけ水を入れ火にかける。
加賀はとりあえず日持ちしそうなものと言うことで水分を少なくして作ったスープや煮込みハンバーグ等を瓶詰めにしておいたのだ。冷蔵庫などに入れておけばひと月は余裕でも持つものであり、ダンジョンに潜る間であればまず問題ないだろう。
これ以外にはバクスの燻製肉や、アイネと加賀が作ったビスケットなども一緒に持ってきている。
少なくとも干し肉と干からびたパン等と比べれば大分上等な食事と言えるだろう。
「このスープうめえ」
「え、これ保存食? ……普段食ってるのより上等なんだけど」
「おう、そうだろ? 宿の人に言ってな用意してもらったんよ。 うん、うまいな」
普段食っているものを褒められると自然と自分もうれしくなるものだ。
ここまで新人達とすごす中ではじめて自然な笑顔を浮かべる探索者達。スープを啜り、ビスケットを浸してぱくりと食べ、ゆでた腸詰にかぶりつく。
「普段からこんなの食ってんですか?」
「んー? ……いや普段はもっと豪勢だな。今日は保存効くのだけ用意してもらったかなあ……味もまあ、やっぱ宿で食った方が上かな?」
「まじすか……その宿って、あれですよね? 東門のそばにある……」
東門のそばにはいくつか宿が存在するが、この言い方からしておそらく自分たちの泊っている宿であると理解して探索者はこくりと頷くと口を開く。
「2階建てのでかいやつだろ? あの宿だぞ」
「やっぱり」
顔を見合わせ納得したように頷く新人達。
彼らの反応をみて何か変な噂でもあるのだろうか、そう思った探索者は自然と口を開いていた。
「あの宿がどうかしたのか?」
「……やっぱ高いんすかね?」
そういうことかと、小さくほっと息を吐く探索者。
少し言いにくそうに頬をぽりぽりとかきつつ口を開く。
「食事の内容や酒を頼んだりで変わってくるが……大体1泊1万リアってとこだな」
1万リアと聞いて絶望したような表情を見せる新人達。
彼らが泊っている宿の下手すれば10倍近い価格である、料理を食べ興味を持ったがさすがにその値段は無理、と言うことだろう。
「まあ、何年か続けてりゃそのうち普通に泊れるようになるさ」
これは嘘ではない、今はまだ安定しないだろうが少なくともこの初心者用のダンジョンを安定して最下層まで行けるようになれば日々の出費を払った上でたまにバクスの宿に泊まるぐらいの余裕は生まれるだろう。
「だから無理はしないようにな、体が資本なんだ……お、チーズ入り」
割りとまじめな口調で無理はしないように新人達へ伝えるヒューゴ。
自身の経験もあるのだろう短い言葉ながらも新人達の心へきっと届いた事だろう……最後のは余計だが。
翌朝探索者達に前日頼まれていた日持ちのする弁当を渡す加賀……ではなくアイネ。
「アイネさんあざっす……加賀ちゃん大丈夫?」
受け取った探索者達は加賀が出てこないのを心配するように厨房の方へと視線を向ける。
そういったスケジュールが組まれていたのだろう。皆が皆、泊まりがけでダンジョンに行くことになり宿の従業員は昨晩から必死になって探索者達に渡す食料を拵えていたのだ。
アイネは余裕そうであるが、加賀はそうも行かなかったらしく厨房から出てくる気配がない。
「大分疲れていたけど今日一日休めば大丈夫だと思う」
「加賀さんには悪いことしていまいましたねぇ。事前に人数とか知らせておけば良かったです……」
「そうね、次からそうして貰えると助かる……集合時間遅れるよ?」
アイネの言葉に慌てて礼を言って玄関へと向かう探索者達。新人達より遅れるわけにはいかないのだろう。
集合場所であるギルド前に来てみればどうやらまだ新人たちは来ていなかったようだ。とりあえず新人達より遅れなかったことにほっとし、乱れた息を整える。
「お、きたか」
宿から急いできた探索者達ではあるが、それは正解だったかもしれない。
少しだけ新人達の意識も変わってきたのか、予想よりも早めに集合場所へと表れたのである。
「お待たせしました」
「いいや、大した待ってないよ……んじゃ、荷物確認から始めるかね」
そろったのを確認し新人達の荷物を確認しだす。今日は泊りがけでダンジョンに潜るのだ、それなりに用意は必要である。
「ま、こんなもんかね……ああ、携帯食は少なめで良いぞ。お前らの分も食料持ってきてるからな」
おまえの分も持ってきていると聞いた新人達の反応は様々だ。素直に喜ぶ者、嫌な予感に顔をしかめるもの、買いすぎた食料をどうしようかと頭を悩ますもの等々。
「……空が見える」
「迷路タイプだな、壁に片方の手を当てて進んできゃいずれ出口に着くが……間違っても実際手をつくなよ? 罠あっからな」
罠があると聞いて慌てて手を放す新人達、それを見て苦笑しつつ探索者たちは先へと進む。
迷路は他と比べ敵が多いがその分見返りも大きい。迷宮を抜ける頃には彼らはいくつかの宝箱を見つけることが出来ていた。もっとも見返りが大きいとは言ってもそれは低レベルなダンジョンにしてはという話であるが、それでも新人達は宝箱を見つけたことで喜びに満ちていた。
「それじゃ今日はここで野宿する。ああ、寝るときの見張りはこっちとそっち一人ずつ計二人で2時間毎に交代な」
んじゃ、飯にすっかねと言って焚火に向かうヒューゴ。
カバンから瓶詰めを取り出し中身を鍋にあけ水を入れ火にかける。
加賀はとりあえず日持ちしそうなものと言うことで水分を少なくして作ったスープや煮込みハンバーグ等を瓶詰めにしておいたのだ。冷蔵庫などに入れておけばひと月は余裕でも持つものであり、ダンジョンに潜る間であればまず問題ないだろう。
これ以外にはバクスの燻製肉や、アイネと加賀が作ったビスケットなども一緒に持ってきている。
少なくとも干し肉と干からびたパン等と比べれば大分上等な食事と言えるだろう。
「このスープうめえ」
「え、これ保存食? ……普段食ってるのより上等なんだけど」
「おう、そうだろ? 宿の人に言ってな用意してもらったんよ。 うん、うまいな」
普段食っているものを褒められると自然と自分もうれしくなるものだ。
ここまで新人達とすごす中ではじめて自然な笑顔を浮かべる探索者達。スープを啜り、ビスケットを浸してぱくりと食べ、ゆでた腸詰にかぶりつく。
「普段からこんなの食ってんですか?」
「んー? ……いや普段はもっと豪勢だな。今日は保存効くのだけ用意してもらったかなあ……味もまあ、やっぱ宿で食った方が上かな?」
「まじすか……その宿って、あれですよね? 東門のそばにある……」
東門のそばにはいくつか宿が存在するが、この言い方からしておそらく自分たちの泊っている宿であると理解して探索者はこくりと頷くと口を開く。
「2階建てのでかいやつだろ? あの宿だぞ」
「やっぱり」
顔を見合わせ納得したように頷く新人達。
彼らの反応をみて何か変な噂でもあるのだろうか、そう思った探索者は自然と口を開いていた。
「あの宿がどうかしたのか?」
「……やっぱ高いんすかね?」
そういうことかと、小さくほっと息を吐く探索者。
少し言いにくそうに頬をぽりぽりとかきつつ口を開く。
「食事の内容や酒を頼んだりで変わってくるが……大体1泊1万リアってとこだな」
1万リアと聞いて絶望したような表情を見せる新人達。
彼らが泊っている宿の下手すれば10倍近い価格である、料理を食べ興味を持ったがさすがにその値段は無理、と言うことだろう。
「まあ、何年か続けてりゃそのうち普通に泊れるようになるさ」
これは嘘ではない、今はまだ安定しないだろうが少なくともこの初心者用のダンジョンを安定して最下層まで行けるようになれば日々の出費を払った上でたまにバクスの宿に泊まるぐらいの余裕は生まれるだろう。
「だから無理はしないようにな、体が資本なんだ……お、チーズ入り」
割りとまじめな口調で無理はしないように新人達へ伝えるヒューゴ。
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