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140話 「街の床屋さん」
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「引くわー、普通に似合っててドン引きですわー」
「やかまし」
からかう八木のすねをげしっと蹴り上げる加賀。
良い具合に決まったのか八木はうめき声をあげ蹲る。
「……似合うと思ったのだけど、だめだった?」
「んんん……いや、だめでは? ないです」
「そう、ならいいの」
八木のからかいにはいらっとして蹴りを入れた加賀であるが、アイネにはあまり強く出れない様で複雑な顔をしながらもその髪型を受け入れるのであった。
「アイネさんってかなり髪長いですよね」
「……そうね、あまり気にした事なかったよ」
アイネの髪は普段は服の中に隠しているため分からないが、実はくるぶし近くまで伸びており、かなりの長髪だったりする。
「フードずっと被ってたから、邪魔になった前髪だけ切ってたのよね……」
「あー、なるほど」
初めて会った頃のアイネは自分の姿を周りに晒さないようローブとそれにフードを深く被る様にしていた。
ずっとその恰好でいるのなら邪魔になった前髪をたまに切れば良い。
「んで、八木はどーするのさ? さすがに鬱陶しいでしょ、それ」
「そうなんだよなー……さすがにそろそろ切らないとなんだけど」
目にかかるぐらいまで伸びた髪を指でもて遊ぶ八木。
いい加減切らないと鬱陶しいが、かと言って切るのもめんどう。そんな何とも言えない状態なのである。
「ボクが切ってあげようか?」
「おう、まずそのナイフ仕舞おうや」
にっこりとほほ笑み髪を切ろうかと提案する加賀であるがその手に握られているのは鋏ではなくナイフである。
「だめよ命、ナイフなんて使っちゃ……ほら、これ使いなさい」
「バリカンしかない! 鋏! 鋏はどこですか!?」
咲耶が用意したのは全てバリカン。
どこか既視感のあるその光景。親子そろって八木の髪を一体どうしたいのか……おそらくまともな髪形では無いだろうことはわかる。
二人の攻勢に合い涙目な八木であったが、そんな彼の肩をぽんと叩くものがいた。
うー(わしがやっちゃろう)
「刃物ですらない! なに、その手でどうするつもりなの!? やめて!引っこ抜く気でしょ! エロ同人みたいに!!」
肩を叩いたのはうーちゃんであった、得意げに手をくいくいと動かすようすは非常に可愛らしいが、その手によって何をされるのかと言えば、きっとろくでもない事しかないだろう。
「エロ同人が何なのかは知らんが……いい加減諦めて床屋いってきたらどうだ?」
騒ぐ4人を見て盛大にため息を吐いたバクス。
呆れた様子で八木に床屋に行くよう勧める。
「行く! 行きます! こんな鬼畜どもと一緒の所にいてたまるか! 俺は床屋に行くぞっ」
フラグが立ちそうなセリフを吐いて玄関へと向かう八木。
そんな八木を加賀が呼び止める。
「ねえ、八木。床屋ってもしかしてギルド側の? だったら別の所にしたほうが……」
「どこでもここよりはましっ! あばよーう」
「……いっちゃった」
加賀の静止を振り切りさっさと床屋に向かう八木。
そんな八木が出て行った玄関で佇んでいた加賀であるが、八木が戻ってこないと分かるとすっと食堂へと戻って行った。
「えーと……ギルドの隣の隣の……1か所曲がって。あった」
ギルドから歩いて1分も掛からないだろう所に床屋は存在していた。
中をちらりと除く八木であるが、幸いな事に先客は誰もいないようであった。
これはすぐ切ってもらえるなと思った八木。すぐ様扉をあけ床屋の中へと入っていく。
「はい、らっしゃい……あんた確かギルドの……」
八木を出迎えそう呟く店主。近所だけあって、八木の姿に心当たりがあったのだろう。
「あ、どうも建築ギルドの八木です」
「そうかそうか、あんたのお陰でこの街も大部様変わりしたよ……今日は散髪かね?」
そう言ってちらりと八木の髪へ視線を向ける店主。
大分伸びて邪魔そうになったその髪をみて確認するように問いかける。
「そうっす、いい加減邪魔になったんで……ちょいと短めに頼んます」
「おうよ、じゃあそこに座ってくんな」
店主に言われ椅子に腰かけた八木へ手際よく散髪の準備を始める店主。
八木の体はすっぽりと布で覆われ、頭だけが飛び出てる状態だ。
霧吹きで水を吹きかけ一通り濡らしたところで店主は道具を取り出した。
その道具を見た瞬間八木の目が釘付けになる。
鏡に映ったそれが妙にゆっくりと八木の頭に迫る光景をただただ見つめるしか無い八木、それが何であるか頭が理解しようとしないのだ。
「……す、すとおおおおおおおおっぷ!!」
道具が八木の髪に触れた瞬間、八木の悲痛な叫びが店内にこだました。
そしてその日の夕方。
坊主頭になって涙目……ではなくガチ泣きした八木が食堂のテーブルにつっぷしていた。
「だから止めたのに……」
そんな八木を見てさすがに気の毒に思ったのか、普段より優し気な視線を向ける加賀。
「どういうこと?」
「ん……ギルドの近くって事はギルド員がちょくちょく行ってると思うんだよね。で、そこにギルド員の八木が行ったら……当然あの髪形にされるよね」
なるほどと納得した顔で頷くアイネ。
結局八木があの後どうなったかと言うと、店主の持ったバリカンを止めようと叫ぶも時既に遅く、八木の髪はバッサリと刈られてしまったのである。そうなってしまった以上は元に戻す事は出来ない、苦肉の策として考えたのが全部刈って坊主頭にする事であった。
「……頑張れば生えないの?」
「や、がんばって生えるものじゃ……」
二人の会話を聞いてますます落ち込む八木。
ぐすぐすと鼻をすする音が聞こえ、加賀はしょうがないなあと呟き息を吐く。
「やかまし」
からかう八木のすねをげしっと蹴り上げる加賀。
良い具合に決まったのか八木はうめき声をあげ蹲る。
「……似合うと思ったのだけど、だめだった?」
「んんん……いや、だめでは? ないです」
「そう、ならいいの」
八木のからかいにはいらっとして蹴りを入れた加賀であるが、アイネにはあまり強く出れない様で複雑な顔をしながらもその髪型を受け入れるのであった。
「アイネさんってかなり髪長いですよね」
「……そうね、あまり気にした事なかったよ」
アイネの髪は普段は服の中に隠しているため分からないが、実はくるぶし近くまで伸びており、かなりの長髪だったりする。
「フードずっと被ってたから、邪魔になった前髪だけ切ってたのよね……」
「あー、なるほど」
初めて会った頃のアイネは自分の姿を周りに晒さないようローブとそれにフードを深く被る様にしていた。
ずっとその恰好でいるのなら邪魔になった前髪をたまに切れば良い。
「んで、八木はどーするのさ? さすがに鬱陶しいでしょ、それ」
「そうなんだよなー……さすがにそろそろ切らないとなんだけど」
目にかかるぐらいまで伸びた髪を指でもて遊ぶ八木。
いい加減切らないと鬱陶しいが、かと言って切るのもめんどう。そんな何とも言えない状態なのである。
「ボクが切ってあげようか?」
「おう、まずそのナイフ仕舞おうや」
にっこりとほほ笑み髪を切ろうかと提案する加賀であるがその手に握られているのは鋏ではなくナイフである。
「だめよ命、ナイフなんて使っちゃ……ほら、これ使いなさい」
「バリカンしかない! 鋏! 鋏はどこですか!?」
咲耶が用意したのは全てバリカン。
どこか既視感のあるその光景。親子そろって八木の髪を一体どうしたいのか……おそらくまともな髪形では無いだろうことはわかる。
二人の攻勢に合い涙目な八木であったが、そんな彼の肩をぽんと叩くものがいた。
うー(わしがやっちゃろう)
「刃物ですらない! なに、その手でどうするつもりなの!? やめて!引っこ抜く気でしょ! エロ同人みたいに!!」
肩を叩いたのはうーちゃんであった、得意げに手をくいくいと動かすようすは非常に可愛らしいが、その手によって何をされるのかと言えば、きっとろくでもない事しかないだろう。
「エロ同人が何なのかは知らんが……いい加減諦めて床屋いってきたらどうだ?」
騒ぐ4人を見て盛大にため息を吐いたバクス。
呆れた様子で八木に床屋に行くよう勧める。
「行く! 行きます! こんな鬼畜どもと一緒の所にいてたまるか! 俺は床屋に行くぞっ」
フラグが立ちそうなセリフを吐いて玄関へと向かう八木。
そんな八木を加賀が呼び止める。
「ねえ、八木。床屋ってもしかしてギルド側の? だったら別の所にしたほうが……」
「どこでもここよりはましっ! あばよーう」
「……いっちゃった」
加賀の静止を振り切りさっさと床屋に向かう八木。
そんな八木が出て行った玄関で佇んでいた加賀であるが、八木が戻ってこないと分かるとすっと食堂へと戻って行った。
「えーと……ギルドの隣の隣の……1か所曲がって。あった」
ギルドから歩いて1分も掛からないだろう所に床屋は存在していた。
中をちらりと除く八木であるが、幸いな事に先客は誰もいないようであった。
これはすぐ切ってもらえるなと思った八木。すぐ様扉をあけ床屋の中へと入っていく。
「はい、らっしゃい……あんた確かギルドの……」
八木を出迎えそう呟く店主。近所だけあって、八木の姿に心当たりがあったのだろう。
「あ、どうも建築ギルドの八木です」
「そうかそうか、あんたのお陰でこの街も大部様変わりしたよ……今日は散髪かね?」
そう言ってちらりと八木の髪へ視線を向ける店主。
大分伸びて邪魔そうになったその髪をみて確認するように問いかける。
「そうっす、いい加減邪魔になったんで……ちょいと短めに頼んます」
「おうよ、じゃあそこに座ってくんな」
店主に言われ椅子に腰かけた八木へ手際よく散髪の準備を始める店主。
八木の体はすっぽりと布で覆われ、頭だけが飛び出てる状態だ。
霧吹きで水を吹きかけ一通り濡らしたところで店主は道具を取り出した。
その道具を見た瞬間八木の目が釘付けになる。
鏡に映ったそれが妙にゆっくりと八木の頭に迫る光景をただただ見つめるしか無い八木、それが何であるか頭が理解しようとしないのだ。
「……す、すとおおおおおおおおっぷ!!」
道具が八木の髪に触れた瞬間、八木の悲痛な叫びが店内にこだました。
そしてその日の夕方。
坊主頭になって涙目……ではなくガチ泣きした八木が食堂のテーブルにつっぷしていた。
「だから止めたのに……」
そんな八木を見てさすがに気の毒に思ったのか、普段より優し気な視線を向ける加賀。
「どういうこと?」
「ん……ギルドの近くって事はギルド員がちょくちょく行ってると思うんだよね。で、そこにギルド員の八木が行ったら……当然あの髪形にされるよね」
なるほどと納得した顔で頷くアイネ。
結局八木があの後どうなったかと言うと、店主の持ったバリカンを止めようと叫ぶも時既に遅く、八木の髪はバッサリと刈られてしまったのである。そうなってしまった以上は元に戻す事は出来ない、苦肉の策として考えたのが全部刈って坊主頭にする事であった。
「……頑張れば生えないの?」
「や、がんばって生えるものじゃ……」
二人の会話を聞いてますます落ち込む八木。
ぐすぐすと鼻をすする音が聞こえ、加賀はしょうがないなあと呟き息を吐く。
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