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138話 「結局はそうなったらしい」

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そして中々結論が出ないまま約束の時間が迫る。

「もうさ、エルザさんに相談しちゃいなよ。お昼はともかく夜だと宿はちょっとあれだって、正直に話してエルザさんお勧めの所にでも行ってきたら?」

最終的にそう加賀が話した内容で行くことになり。八木はとぼとぼと肩を下ろしながらギルドへと向かっていた。

そして八木を見送ったあと宿の厨房では何時もの通り夕食の準備が始まる。
とは言え今日はリザートマン達がお魚を届けてくれた日であり、海から離れたこの街では贅沢と言える新鮮な魚介類を使ったメニューではあるが。

「ぁー……すっごい出汁でてる、おいしー」

うっ(うまうま)

小皿に味見にしては少々多めによそられた魚介たっぷりのトマトベースのスープ。
スープと言うよりメイン料理と言っても差し支えないぐらい具沢山のそれは濃厚な出汁がスープに溶けだし恐ろしく旨味たっぷりに仕上がっていた。

「うん……おいしい、けど。味見しすぎには気を付けてね」

「客に出す分無くなっても知らんぞ」

本格的に食べだしそうな雰囲気のうーちゃんを見てそうこぼすアイネとバクスの二人。

「そういうバクスさんも……燻製は数そこまで多くないですし、危ないですよ」

「む……そうだな、やめておこう」

名残惜しそうに皿を片付けるバクス、彼が食べていたのは魚介類の燻製、その試作品である。
試作品とはいえそれはかなりの出来栄えだったようで、一通り全ての種類を食べ終えた彼は二週目に入ろうとしていた所であった。

「皆、ちょっといいかしら?」

「ん? どったの母ちゃん」

「実が八木ちゃんがねえ……」

咲耶に言われ玄関へと向かう4人。
玄関に向かうとそこには八木、それに一緒にご飯を食べにいったはずのエルザが二人そろって立っていた。

「あっれ、八木どしたの?」

「いやぁ、それがさ──」


とぼとぼと肩を卸しギルドへと向かった八木であるが、そんな八木を出迎えたエルザはあっさりと言い放つ。

「別に宿でいいですよ、元から多分そこで食べるんだろうなと思っていましたし」

これに驚いたのは八木である。
エルザには宿に探索者は大量に泊まっているのは何度か話のネタにしたため伝わっている。
戸惑いつつもエルザへ確認しようと口を開く。

「え、いいの? むっさい男連中いっぱいよ?」

「慣れていますので」

「そうだった。うちの連中全部むっさい男じゃん! てかモヒカンしかいないし!」

確かにエルザの言う通り、彼女の職場にはむっさい男しかいない。
そういう事なら問題ないだろうと八木は考えエルザを連れ宿へと向かったのである。

「──と言う訳で」

「八木様の同僚のエルザと申します。今日はお招き頂きありがとうございます」

「お、おう……ま、ここじゃ何だし上がってくれ」

丁寧な口調に加えきっちりとお辞儀をするエルザに少し戸惑いつつ食堂へと案内するバクス。
食堂には夕食にするにはちょっと時間が早い事もあり探索者連中はまだ居ない。

「ん、そうだアイネさんちょっといいか?」

「なに?」

食堂に人が居ないのを確認し、アイネを手招きするバクス。そしてエルザに聞こえないよう小さな声でアイネに要件を伝える。

「探索者共に変な事すんなと言っておいてくれるか……? 夕食の準備は俺らで進めておくから」

「わかった。いいよ」

あっさりと了承し探索者達が泊まる部屋へと向かうアイネを見て少し安心した様子を見せるバクス。
バクスが知る限り八木が女性と二人でまともに食事なぞするのは初めての事だ、出来るだけ無事終わるようにしたかったのだろう。

「それじゃ、席に着いててくれ。少し早いが準備しちまうよ」

少し緊張した様子を見せる八木に見送られ厨房へと戻った3人。
誰となく顔を見合わせ、ひそひそと話を始める。

「ねえねえ、あれが例の八木ちゃんの?」

こっそり厨房についてきた咲耶が目を輝かせて話始める。
こういった話が割と好きらしい。

「うん、エルザさんだね。ギルド受付嬢のはず……」

「あらあらまあまあ……すごくしっかりしてそうだし良いんじゃない?」

ちらちらと食堂の方へと視線を向ける咲耶。
とても楽しそうである。

「まあ今までがあれだったからな……うまく行くと良いが」

「皮剥ぎ事件は衝撃だったね。……メニューどうしよ? 何か特別なのだす? と言っても出せるの限られてるけど」

とりあえず二人の関係は置いておいて、メニューについて話を振る加賀。
宿に来るとは思っていなかったので特別なメニューの用意などしていなかったのだ。

「……普段通りで良いと思う。普段のメニューでも食べた事ない人にとっては特別なメニューだよ……一応デザートだけちょっと種類増やしておく」

「そだね……じゃ、それでいこっか?」

とりあえずは普段のメニューでとのアイネに意見に特に反対する者もおらず、3人はいつも通り食事の準備を始めるのであった。
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