上 下
135 / 332

133話 「内緒の相談」

しおりを挟む
「やー……すごい人気だったね?」

「まったくだよ、あそこまで勧誘くるとは思ってなかったわ」

買い物を終え宿へと戻った一行であるが、食堂に入ると同時にぐったりとした様子で椅子に腰かける。
買い物の際中幾度となくPTへの勧誘があり、断っても断っても次から次へとくる勧誘にさすがに全員辟易した様子である。

「申し訳ないす……」

「まあ次からは大丈夫だろ? 全部ばっさり断ったし、噂にもなってると思うぞー」

「だと良いんですが……加賀さん、ご迷惑おかけしますが次もお願しても良いでしょうか?」

「ん、まかせてー。ボクも色々見てまわれるし問題ないよん」


ガタガタと荷車に買いあさった荷物を詰め込むリザートマン達。
買うものが増えさすがに持って帰るのが厳しいと考えた彼らはついでに荷車も買う事にしたのだ、森に入るまでは比較的平坦な道を進み、森に入ってからは他のリザートマン達やドラゴンが協力し道を開いているとの事でそこを通っていくそうだ。

「それじゃ皆さんありがとうございました」

「気を付けてねー、また3日後に~……あ、これドラゴンさんに。お菓子の詰め合わせです」

「あ……危ないまたうっかり忘れるところでした、ありがとうございます」

ドラゴンさんによろしくねーと手を振りリザートマン達を見送る加賀達。
完全に人込みに隠れ彼らの姿が見えなくなると手を下しさて、と呟く。

「夕飯の用意すっるよー。今日は絶対みんな量いくだろうから出来るだけ多めに下ごしらえしておかないと」

「……それもそうね。私は魚担当?」

「うん、お願いしても良いー? 小骨取るのは皆絶対喜ぶと思うんだよね」

そう言いあいながら厨房へと向かう3人。中にいたバクスと合流し夕食の準備を始める。
ダンジョンコアの事も早めに相談しなければと思う加賀であるが、まずは目の前の仕事を片付けねばならない。
相談するのは従業員の夕食時になるだろう。


「そんなわけでーですね」

「どんなわけだ? つか、飲み込んでから喋りなさい」

「あい」

スプーンを加えぴこぴこさせていた加賀を注意するバクス。
加賀はこれから話す内容に皆がどう反応するのか不安なのだろう、いつもとどこか様子が違う。
それは普段から加賀の傍にいるものにはすぐわかる事であった。

「命、何かあったの?」

姿かたちは変わっても自分の子供と言う事だろう、咲耶がいつもと様子の違う加賀を見て少し心配そうに声をかける。

「んー……ちょっと相談したい事があって……」

「ほう?」

ぴくりと眉を上げ加賀の言葉に反応するバクス。
加賀はバクスから気まずそうに視線をそらすとぽつりぽつりとダンジョンコアの事について話始める。


「……まあ、俺も多分そうだろうなとは思っていた。口にすると藪蛇になりそうなんで言わなかったがな」

「あ、やっぱり?」

復活したダンジョンがあまりに高難易度である原因が加賀の料理にあるとバクスは薄々頭の中では思っていたようだ。

「それで、ダンジョンが高難易度の原因が加賀の料理だとして、相談したい事ってのはなんだ? 別にあるんだろう?」

「えーとですね……実はたまにダンジョンコアがこの宿にきてましてー」

ここでバクスの眉がさらに神経質そうにぴくくと動く、加賀はそちらをチラチラと気にしつつぼそぼそと続きを話す。

「その……高難易度過ぎるよって伝えてあげようかなーと……」

「ふむ?」

「低難度の階層とか追加してくれないかなーなんて」

「駆け出しの連中用か……別に加賀が気にする事じゃないと思うぞ? ダンジョンがレベルに合わないなら別の所に行くだけだ」

割とあっさり答え鵜バクスであるが、加賀はどこか割り切れない様子である。

「気持ちの問題か……ま、あまり気になるなら聞いてみれば良いさ。ただ今あるダンジョンに影響のでない形でな?」

「んっ、分かりましたー。それじゃ早速呼んでみる……と言うか今日は来る日だから、もう待ってると思うけど」

そう言いながら料理を皿に盛る加賀、それはよくよく見ると普段精霊用に用意していよりも幾分多めであった。あからさまに量が変わらないせいで誰かの目にとまる事もなく今日までこっそりコアに料理を上げてこられたのだろう。

「んっし、まずは精霊さんごはんですよーう」

そう言って扉をあけ料理が乗ったお盆をことりと置いた直後、料理が次々に消えて行く。
一瞬で空になった皿をみてほほ笑む加賀。次いで残しておいた皿もことりとお盆に乗せる。

「こっちはダンジョンコアさんの分ね、人がいるけど出てきてだいじょぶよー」

出てきてだいじょぶと言う言葉に反応して加賀の足元からすっとコアが現れる。
コアはしばし空中をふわふわと漂っていたかと思うと料理の傍に転がり、料理を食べながら加賀に向け話はじめる。

「……ほかに人がおるとはの……何かあったんかいな?」

「ん、ちょっと相談したい事があって……食べたままで良いんで来てもらえますか?」

「ええよ、話してごらん」

コアに許可をとった加賀は先ほど皆で話した内容を伝えて行く。

「……と言うわけです」

「ふむ……ちと張り切って作りすぎたかの。ええよ、入り口二つに分けて難易度別の作ろうじゃないか」

あっさりともう一つダンジョンを作ると言うコアに驚きを隠せない加賀。
そんなぽんぽん作れるようなものなのだろうかと心配気な表情を浮かべる。

「正直魔力有り余っておっての……これ以上深くしても意味ないんじゃないかと思っとったんよ」

丁度よかったと笑うコア。
ちょくちょく加賀の料理を食べていたおかげでダンジョンを作成する際に消費した魔力はとうの昔に満タンあっており、今では無駄にダンジョンを拡張しまくっていたとの事である。

「人がこれないと意味がないでの」

「そういうものなんですねー」

「そうじゃよ? わしらの目的はあくまでダンジョンを作成して、それを攻略してもらう事だからの。攻略出来ないダンジョンなぞ作っても意味がない」

とりあえずそこまでのコアの言葉を皆に伝える加賀、攻略してもらう事が目的と聞いたあたりでバクスがなるほどなと言った表情を浮かべる。

「……前々から不思議に思っていたんだ。……やりようによってはダンジョンの中に入った人をあっさり皆殺しに出来るはず、なぜやらないのかと……攻略してもらうのが目的だったとはな」

分かるはずが無いそう言って肩をすくめるバクス。

「と、話の途中で止めてすまんな。続けてくれ……と言ってもこれ以上話す事はあまりないか?」

バクスの言葉をコアに伝える加賀であるが、コアのほうも今の所これ以上話す事は思い浮かばなかったようだ。

「そうだの……ま、ちょくちょく此処には来るでの。何かあればまた声掛けてくれればええよ。それじゃの加賀ちゃん、馳走になったわい」

コアの言う通りちょくちょく会えるわけで何かあればまた別途伝えれば良い。
地面に消える様に消えていくコアを見送り、今日の相談はここまでとなる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に転生!堪能させて頂きます

葵沙良
ファンタジー
遠宮 鈴霞(とおみやりんか)28歳。 大手企業の庶務課に勤める普通のOL。 今日は何時もの残業が無く、定時で帰宅途中の交差点そばのバス停で事件は起きた━━━━。 ハンドルを切り損なった車が、高校生3人と鈴霞のいるバス停に突っ込んできたのだ! 死んだと思ったのに、目を覚ました場所は白い空間。 女神様から、地球の輪廻に戻るか異世界アークスライドへ転生するか聞かれたのだった。 「せっかくの異世界、チャンスが有るなら行きますとも!堪能させて頂きます♪」 笑いあり涙あり?シリアスあり。トラブルに巻き込まれたり⁉ 鈴霞にとって楽しい異世界ライフになるのか⁉ 趣味の域で書いておりますので、雑な部分があるかも知れませんが、楽しく読んで頂けたら嬉しいです。戦闘シーンも出来るだけ頑張って書いていきたいと思います。 こちらは《改訂版》です。現在、加筆・修正を大幅に行っています。なので、不定期投稿です。 何の予告もなく修正等行う場合が有りますので、ご容赦下さいm(__)m

女神スキル転生〜知らない間に無双します〜

悠任 蓮
ファンタジー
少女を助けて死んでしまった康太は、少女を助けて貰ったお礼に異世界転生のチャンスを手に入れる。 その時に貰ったスキルは女神が使っていた、《スキルウィンドウ》というスキルだった。 そして、スキルを駆使して異世界をさくさく攻略していく・・・ HOTランキング1位!4/24 ありがとうございます! 基本は0時に毎日投稿しますが、不定期になったりしますがよろしくお願いします!

異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う

馬宿
ファンタジー
30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない そんな俺が電車の中で疲れすぎて死んじゃった!? そしてらとある世界の守護者になる為に第2の人生を歩まなくてはいけなくなった!? 農家育ちの素人童貞の俺が世界を守る為に選ばれた!? 10個も願いがかなえられるらしい! だったら異世界でもネットサーフィンして、お買い物して、農業やって、のんびり暮らしたいものだ 異世界なら何でもありでしょ? ならのんびり生きたいな 小説家になろう!にも掲載しています 何分、書きなれていないので、ご指摘あれば是非ご意見お願いいたします

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 よろしくお願いいたします。 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

処理中です...