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130話 「無事運んでこれたようで」

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リザートマン達に魚介類の配達を頼んだ翌日の昼下がり、食堂でリザートマン達が来るのを待つ加賀とアイネ、それにうーちゃんの姿があった。

「ちゃんとくるかなー」

「ん、きっと大丈夫よ。もし何かあれば門番さんがこちらにくる手筈になっているから」

「あ、そなんだ?」

中々来ないリザートマンだが何かあれば門番がこちらに来ると聞いて少し安心する加賀。
しゅっしゅっと素振りをするうーちゃんを撫でつつ扉が開くのをそのまま待ち続ける事にする。

「あ、きたかなー?」

「たぶん、そうね」

玄関をノックする音が食堂に届く、途端に玄関へとダッシュするうーちゃん。
加賀と行動を共にしていたアイネはともかく、うーちゃんはしばらく魚にありつけていない。なんだかんだで3人の中では一番楽しみにしていたのかも知れない。

「はいはーい、うーちゃん落ち着いて。リザートマンさんお待たせしました」

ふんすふんすと鼻息荒くリザートマンのまわりをうろうろするうーちゃん。
そんなうーちゃんを宥めつつリザートマン達へと声をかける加賀。
うーちゃんにおびえた様子を見せていたリザートマン達であるが、加賀が来たことでほっとした様子を見せる。

「これ、頼まれてたやつです。こっちの樽は魚、そっちのは魚と貝、こっちは貝とエビです。要望通り出来るだけ種類は合わせておきました」

「ありがとうございますっ、開けてみても? ……わー、随分りっぱなお魚で……わ、エビもすごい」

うー(あじみ、あじみはよっ)

「味見って……リザートマンさんもう昼食は済ませました? 時間に余裕があればこれを使って用意しようかと思うのですが」

昼食と聞いて顔を見合わせるリザートマン達。
腹がぎゅるぎゅるとなっている辺りお腹は空いているようだ。

「いえ、我々はこれを届けて買い物するのが……あ、やっぱ頂きます許してください」

「うーちゃん、だめだよ……ごめんなさいね、リザートマンさん」

目を赤く光らせ再び素振りをはじめたうーちゃんの頭にぺしっとチョップを落とす加賀。
うーちゃんが半ば脅す形で昼食を作る事となってしまったが、加賀としてもお腹を空かした彼らをそのままにするのは忍びなかったので内心丁度よかったと思ってたりする。

「それじゃーぱぱっと作っちゃいますねー。アイネさんうーちゃんお手伝いお願いー」

3人が食堂にはいるとそこにはバクスが準備万端で待ち構えていたりする。
少し前から燻製作りの準備をしていたのだ。

「ついにきたか……」

鋭い眼光を樽の中へと向けるバクス、その視線は貝類に向いている。
加賀から貝の燻製が美味しいときいて早速作るつもりなのだ。

「じゃ、燻製はバクスさんにお任せしてこっちは昼食の準備にしましょか。ボクらは魚がメインでいいとして……彼ら様に卵使ったの多めにしましょうか、魚は食べなれてるでしょうし、ラヴィ見る限り卵好きだと思うんですよねー」

「それでいいと思うよ」

うっ(はよはよ)

早速料理にとり掛かる4人。
加賀が担当するのはエビである、空を剥き背ワタを取り、尻尾の先端を落とす。
今日はしばらく食べていなかったエビフライを作るらしく、この日の為にタルタルソースの用意までしたいた様だ。

「エビほんと立派……味がどうかは食べてみないと分からないけど……あ、おいし」

エビの殻で出汁をとる鍋にこっそり一尾だけ紛れ込ませていた加賀、ぱくりとエビをつまみ食いしてしまう。
エビはぷりっとした身は歯ごたえも良く、変な臭みは無いし味も濃い。かなり美味しいエビであった。

一方アイネはお魚を担当している。
小骨をどうしようかと悩んでいた加賀に自分なら何とか出来ると提案したアイネ、その流れで魚を担当する事となった。

「え……えぇ!? ア、アイネさん、それどうやったの?」

一体小骨をどう処理するのかと気になっていた加賀はアイネの手元を除き込み、目に飛び込んできた光景に驚きを隠せないでいる。

「どうって……こうやって、こう」

「……さっぱり分からないです。でも骨取れるって事は分かりました」

加賀がどうやってと聞くのでもう一度やってみるアイネ。
手が黒いドロリとした靄の様な物に変化し魚を包み込んでいく、そしてすぐに離れたかと思うと靄が消えていき、現れたアイネの手の中に小骨が握られているのだ。
一体どうやっているのかさっぱり加賀には理解できなかった、分かったのは小骨を綺麗に取り去る事が出来ると言う事だけ。

だが料理をする分にはそれだけ分かれば十分である。
4人はさくっと仕上げた料理を持って食堂へと向かうのであった。


「おまったせー」

はいこれ、と言ってリザートマンの前に置かれたのはラヴィも大好物の巨大なオムレツである。
中身は卵だけのプレーンとこのあたり特産のチーズがたっぷり入った2種類だ。
いずれも卵をいっぱい使った巨大版、加賀なら下手すると食い切れないボリュームである。
だが、巨体で口もでかい彼らにとってはそれは食べごろサイズでしかない、並んだ料理のうちやはりと言うかまっさきに手を付けたオムレツは数口で彼らの胃に納まってしまう。

「卵うまっ、やばい俺こんな大量の卵食べたのはじめてかも」

「……滅多に手に入らないしな」

「あの、こんな大量の卵用意してもらって大丈夫ですか……?」

彼らにとって貴重な卵、それをこれだけ大量に使った料理をだされ不安を覚えたのだろう。彼らの内一人がおそるおそると言った様子で加賀に尋ねる。

「卵は鶏養殖してるんでいっぱい手に入るんですよー、なのでお気になさらずー」

「なるほど……私達がエビを養殖してるように、鶏も……」

「あ、養殖してるんだ。それなら安定して手に入りそうだし助かりますね」

驚いた事にエビは彼らの手によって養殖されたものであった、養殖であれ天然であれ安定して美味しいエビが手に入るのであればそれは加賀にとって非常に喜ばしい事だ。

「そう言う訳です。って事でお代わり用意しますね」

加賀は笑顔で彼らにそう言うとスキップしそうな足取りで厨房へと向かうのであった。
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