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114話 「護衛はきっちりと」

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港は大まかに地元の漁師の船が停泊する所と、他国との貿易を行っている船が停泊する所で別れているようだ。
加賀達はまず地元の漁師達の船が停泊する側にある市場へ向かう事にしたようである。
漁をしているだけあって市場も魚介類の取り扱いが多く、いずれも新鮮だとなると加賀の財布の紐も緩くなるというものだ。

「買い過ぎたー」

「本当にねえ……確かここかな、城の兵士に聞いたのだけど。買ったものを調理してくれるそうよ」

市場から少し離れたにテーブルや椅子が並ぶ一角がある。
そこでは屋台で様々な食材が調理されており、市場で買った食材と手間賃を渡せばそれも調理してくれるというサービスを行っている。もちろん持ち込み以外の食材も調理して売っているのでそれを買って食べても良い。

「じゃー、これとこれとーこれも」

「私もこれを。あとは……これ焼いてもらおうかな」

加賀が調理をお願いしたのはサンマぽいお魚とホタテらしき貝が2枚。
アイネも同じくサンマぽいお魚とエビを選んだようである。

「わー……めっちゃおいしそう」

程なくして渡した食材の調理が完了する。
ほかほかと湯気を立て、おいしそうな匂いをあたりに放つそれを見て思わずつばを飲む。

「へー……こんな味だったのね、おいしい」

「あっふいっ……」

少しだけ加賀が手を加えた料理を口に運び始めて食べる味に目を白黒させるアイネ。
加賀はホタテに一気にかぶりついたせいではふはふ口を動かし熱そうに悶えている。

「ぷはー……どうしようもうお腹いっぱい」

「ん、私はもう少し食べようかな……そのホタテ? も食べてみたい」

そういって買った荷物の中からホタテを取り出すアイネ。

「それじゃ頼んでくるね。ついでだから飲み物買ってこようか?」

「ん、お願いしまーす。さっぱりしたのがいいですっ」

「了解。ちょっと待っててね」

少しウキウキした足取りで店へと向かうアイネ。
加賀はそんなアイネに笑顔で手を振り姿が見えなくなったところで手持無沙汰になったのかあたりをぼーっと見渡す。
周りでは加賀とアイネの二人と同じように店で買ったか調理してもらった料理を食べている人がそれなりにいた。中にはまだ昼間にも関わらず酒を飲んで騒いでいる輩もいるようだ。
そして中には質の悪い連中もいるわけで、一人になった加賀をみて酒瓶片手にふらふらとした足取りで近づく連中がいた。

「よー、嬢ちゃん、暇そうだなあ?」

「さっきの良い体したねーちゃんはどっか行っちまったみてーだな……ま、ちと貧相な体だがお前さんで──」

貧相な体の男相手に何をしようと言うのか、きっとろくでもない事なのは確かだか男は最後まで言い切ることは出来ないでいた。
男の言葉を聞いて眉をひそめる加賀の前には黒い靄とそこから現れるアイネの姿があったからだ。

「私の連れに何しようとしてるのかしら……なあ、おい。死ぬか?」

どろどろとした濃厚な靄を漂わせ、輪郭のはっきりしない体からはいくつもの赤い燐光が溢れ、骨の腕が伸び、男たちを拘束しミチミチと音を立て締め上げていく。

「……もう気絶してるみたいですよ。アイネさん」

ぴくりとも動かない男たちを見てそっとアイネに伝える加賀。
アイネはあら、とつぶやくと男たちの拘束を解除する。

「……やりすぎたかも?」

崩れ落ちた男たちを見てこてんと首をかしげるのであった。




「お勤めご苦労様ですー」

「いえ、では失礼します」

ホタテをもしゃもしゃと食べるアイネの前で先ほどの男たちが引っ立てられて行く。
口の中がいっぱいで喋れないアイネに代わり加賀が警備の人に礼を言う。

「アイネさん、さっきはありがとう」

「……ん、無事でなにより。私が側にいる限りはそうそう危険な目には合わせないよ」

「ははは……」

実際男どもが何かしかける前に守ってくれたわけでありアイネの言葉は頼もしい限りである。がちょっと過剰防衛のような気がしなくもない。
だがアイネが守ってくれなければ面倒ごとに巻き込まれていたのは自分である。なのでとりあえず笑って誤魔化す加賀。

「でも、よくトラブルに起きたのわかりましたねー」

アイネは加賀の視界から消え、店のほうへと行っていたはずである。
大した大きな声を出した訳でもないのにアイネの反応は迅速であった。

「デーモンをね、姿消して待機させてるの。何かあればすぐ私に伝えるのと加賀を守るように命令してある」

「へーっ」

アイネに何度も魔方陣から出し入れされていたデーモンであるが、きっちり仕事はしていたらしい。
あの哀愁漂う姿を思い出し、加賀はデーモンに感謝と同情をするのであった。

「デーモンにもごはん上げたほう良いんです……?」

「私の魔力があれば……加護があるから食べるとは思うよ。あとで上げてみたら?」

「ん、アイネさんの部屋に戻ったらそうしてみるー」

これからこの国で過ごす間はずっと守ってもらう事になるわけで、それなら多少労っても良いだろうと思った加賀。
とりあえず買い物を終え、アイネの部屋に帰ったらご飯をあげて見ることにしたのであった。
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