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第9話

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 ーー小鳥の鳴き声が聞こえる。部屋には太陽の光がかすかに差し込み部屋を照らす。
 ふぁ~。もう朝か。まだ眠い。後5分。っとつい二度寝したくなる。……まあでもここは我慢して起きるか。えーと。今日の探索地はまた森だったか……。昨日は西側と中央の境め辺りを探索したから、今日は湖より西側へ行ってみるか。

 昨日のようにスキル隠密を使い、虎猫にバレないようにして……森へと駆け込む。ふぅー。やっぱり少し緊張するな……。バレて戦闘になったら勝てないからな。虎猫には。ーーさて。それじゃ、探索開始しますか。

 ーー探索開始から約30分後

 んー。流石に場所を変えたからって、そんなに早くは出て来てくれないか。一週間くらい前は白ネズミやスネークなら結構出会ったんだけどな。……まあ、まだ日が落ちるまではまだまだ時間があるし根気よく探すか。
 周りの木や左右にも警戒して進むーー。そうだ。一度聞き耳スキルを使ってみるか。
 聞き耳スキルを使用すると、ムシャムシャと何かを食べる音が聞こえた。ん? これって……猪の奴か? 取り敢えず行けば分かるか。もう一度聞き耳スキルを使用して方角を正確に探る。ーーここより少し南か。……って、なんか前も同じ事した気がするな。……まあそんな事は気にしないで早速行きますか。
 少し傾いた斜面を大木を避けながら出来るだけのスピードで進む。
 数分が経ったのにようやくたどり着き音の正体が姿を現した。
 前遭遇した猪の魔獣ボアーと同じでリンゴを食べていた。茶色の毛並み、鋭く湾曲した牙。ここまでは同じ。前と違う所といえば……デカイのだ。前みた猪よりふた回り、嫌それ以上大きい。
 何だありゃ? 前みた猪はあんなに大きくなかったな。って、ことは前の奴の進化形かな。まあ、取り敢えず鑑定しますか。
 スキル『鑑定』。

「名称 ビッグボアー  危険度 C  LV15
 解説
 魔獣のボアー種の一種。ボアーの進化形。とても巨大な体を持つ。もともと、ボアーの突進は凄かったが、進化し巨体に成ったためもっと突進の威力がハンパなくなった。その突進は岩をも砕くと言われるほどに」

 へー。やっぱり進化形だったか。てか、進化したらあんなに大きくなるって凄いな。俺もいつか進化して凄く成ってやる。そのためにまずは、あいつを狩らないとな。相手はcランク攻撃するならーー。相手の頭上の木の上からにするか。それじゃ、まずは移動だ。ーーよし。着いた。あいつは……相変わらずリンゴ食ってるな。それじゃ、降下開始!
 体に凄い空気抵抗を感じる。これが落下する感覚。およそ1秒ほどの短い時間が長く感じられ、奴の背中にものすごいスピードで近づいていくのが分かった。

 あと少しだ。奴の背中への着地と同時に行う攻撃に備え、体を一直線にする。

 ーー今だ! 
 体に走る激痛を耐え、牙を尖らせ猪の体に毒を流す。

 落下の衝撃で俺の存在に気付き、体を大きく振ってくる。
 やばい! 必死に体へしがみつく。くそ! 早く毒回れ……! そんな願いも聞き届けられることはなく、猪は近くにある岩へ突進を始めた。

 やばい! やばい! やばい!

 ぶつかられたら体が持たない。降りるか? でも、そのあと突進されたら……。いや、その時はその時だ! 牙を抜いて急いで体から離れる……!

 岩が砕ける音と、体の激しい痛みが響いた。
 痛い。でも意識がある。間に合ったのか……? 目を開け周りを確認すると、岩に猪が突っ込んでいた。あいつ生きてるのか?
 痛みに耐えながらあいつを眺め生死を確認すると……かすかに奴の体が動いた。
 まだ、生きてるのかよ!
 激痛が走る中、近くの草むらへ急ぐ。進みながら振り替えって奴を見ると、こちらを向き突進してくる奴が見えた。

 くそ! 転生した人生ももうこれで終わりかよ……!
 死の恐怖に思わず目をつむる。
 ……ん? あれ?
 死んだと思ったのに全くの衝撃がない。思わず閉じた目を開けると……一瞬猪が立ったまま硬直し、ばったりと倒れた。
 へ? 目の前の状況が理解できない。何で倒れた? 不思議に思っていると、次は体にレベルアップの衝撃が走った。
 は? レベルアップ……? ってことは、俺が勝った? でもどうして……もしかして、あんなギリギリの状況で毒が体に回ったのか……? それ以外考えられない。……よし。もうこの事は考えないようにしよう。俺はあいつに勝った。それだけだ。それに、レベルアップもしたし。さっさとステータス確認しよう。
 スキル『鑑定』自身。

「名称 スネーク  LV20  "進化可能"
 HP8/400 MP110 攻撃力300 防御150 素早さ276 魔力値50 回避120
 スキル
 熱感知 音感知 毒牙……聞き耳 高速水泳 危機察知
 称号 転生者」

 ……おい、ちょっとまて"進化可能"……! よっしやー! 嫌まて落ち着け今はHPがホントにやばい。喜ぶのは後だ。さっさとあいつを食べて、どっかに隠れてHPが回復するのをまたないと。
 ーーふぅー。やっと飲み込めた。よし、それじゃどっかに隠れるか。
 隠れる場所を探して辺りを見回す。……んー。木の上は鳥系の魔獣に見つかった時今の状況じゃダメだし、草に隠れるのは長時間だと危ないし……そうだ。土に穴掘って隠れるか。虫が怖いけどこの際しかたない。土に頭を突っ込んで……中に入ってこのまま少し寝てHP回復させるか……。


 ーーその頃アストルの森入り口付近では

 一本の巨木の周りに一人の重装備の大男、全体的に軽量装備の数名が集まっていた。

「全員集まったな……。それではこれから、集まってもらった偵察隊の仕事について話す」

「偵察隊は、この先の魔獣の対処を出来る範囲で行い隊の進行方向安全を確保。そして報告しろ。もし対処出来ない魔獣が現れた場合は極力戦闘を避けこちらに報告。以上だ」

「それでは、偵察隊行動を開始」

 大男の掛け声とともに、集められた数名は一斉に森の奥へと入っていった。
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