俺は、新(異)世界の神となる! ~そのタイトル、死亡フラグにしか見えないんで止めてくれませんか~

獅東 諒

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神様の家出。

ダンジョン攻略、トンネル(ぱいぷ)を抜けたら……

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「どわーぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「きゃうーーーーーーーーーー」
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「ヒャハァァァァァァァァァァァァァァァァ」
「クッ…………」
「…………」

 カナリーが罠の解除に失敗して、俺たちは六人六様の声を上げて落下した。
 それでも助かったことに、この部屋のトラップはシュータートラップだった。
 穴の底が槍衾やりぶすまになっていたり、毒蛇や毒蜘蛛で埋め尽くされてもなかった。
 落下した先は、漏斗じょうごのように先がすぼまっていて、体感では二メートルほどの円形になったパイプ状の空間だった。
 その空間は暗かったので、どういう状態で落下したのかはまったく分からなかった。だが思ったよりも長い時間落下していたように感じた。
 そして目が光を捕らえ、視界が開けて、俺の眼下にあったのは……。

「なんでジャングルーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 四層の部屋から落下したその先は、雪国でもボーナスステージでも無く――ジャングルだった。
 眼下には緑の空間が広がっていて、この高さからでも巨大なシダ類の葉っぱがあちこちに広がっているのが確認できた。
 目前に急激にその葉が迫ってくる。いや正確には俺が迫ってるんだけどね。
 俺は頭を守るように腕をあげて、背中から落ちるように身体を丸めた。
 直後、バサバサという葉擦れの音を響かせて盛大に葉っぱの上に着地した。
 ……結論を言うと。落下の衝撃はたいしたことはなかった。
 というのも巨大なシダ類の葉が、大量に折り重なるように茂っていて、落下の衝撃を和らげてくれたからだ。
 この感じならば、ペルカたちも大丈夫だろう、上から見た限り葉っぱは、かなりびっしりとした密度で生い茂っていたから。
 しかし、ムワッとした熱気が肌にまとわりついて蒸し暑い。
 上空からは判らなかったが、どこかから蒸気でも噴き出しているのだろう。
 霧深くて、辺りを見まわしても数メートル先までしか見えない。生えている植物の巨大さもあいまって、なんだか小人にでもなったような気分だ。
 俺があたりを観察していると、ガサリという葉擦れの音が背後から響いた。

「ダイさんなのですか?」

 振り向くと、生い茂る草をかき分けてペルカが顔を出した。

「よかった、無事だったんだね。女将さんたちは?」
「わからないのです。霧のせいで匂いもあまり感じられないのですよ」

 鼻をクンクンとする仕草が可愛いが、今はその姿を愛でている場合じゃないよね。
 第四層にまさかあのような落下トラップがあるとは、あれは避けようがないだろ。カナリーもまさか部屋の床すべてが抜けるようなトラップは想像しなかっただろうし。

「でも、床の下の穴がいくつかに別れていたのです。もしかしたら全然違う場所にいるかもなのです」

 さすがは狼人族というべきだろうか、俺は自分の目の前しか見ていなかったが、ペルカは落下の瞬間に床下の状態を確認していたらしい。

「だとしたら厄介だな。上空から見た感じだとかなりの広さがあったし」

 第五層(おそらくだが)に入った瞬間に目に入った風景は、遠方が霞んでいて壁面など確認できなかった。上空から見てそんな状態だったのだ。
 確か、地球だと地平線までの距離は、4.5~5キロ位のはずだから、この層の広さは間違いなく数十キロはあるだろう。
 これは薄々感じていたんだが、このダンジョンというのは、神の創界と同じようにその一層一層が異空間なのではないだろうか? そう考えれば、ダンジョンが育つというのがなんとなく納得できる。

「これからどうするべきか……ペルカはどうしたらいいと思う? この状況だとはぐれたときの決め事は当てはまらなくなっちゃったし」
「あの……向こうが霧の中心みたいなのですが、落ちるときに水辺が見えたのです。私たち狼人族は山や森ではぐれたら水辺を目指すように教えられているのですよ」
「なるほど、確かにこういう状況になったら水の確保は大事だよな。冒険者だった女将さんなら同じように考えそうだし、クリフだって狩人だ。森ではぐれたら同じように考えるかもしれない。ただエスナとカナリーが心配だ」
「あの――あの、エスナちゃんは女将さんと、カナリーちゃんはクリフさんと同じ穴に落ちたのです。だからきっと大丈夫なのですよ」

 皆の心配をしている俺に対してペルカは柔らかく微笑んだ。その子どもを見守る母親のような、彼女の大人びた表情に、俺の心臓がドキリと跳ねる。
  
「……わかった。ならその水辺を目指そう」

 俺は、訳の分からない動揺を覚えてペルカから視線を外した。
 彼女が示した水辺に向かって足を踏み出したが、俺の意識は背後を歩くペルカへと向けられたままだった。
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