俺は、新(異)世界の神となる! ~そのタイトル、死亡フラグにしか見えないんで止めてくれませんか~

獅東 諒

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神様の家出。

異議申し立てはどこですか?

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「……表示が重なってて判らないよコレ。さっきのどこ行った?」

 探査サーチが効いているので、名前やレベルが彼らの頭上に表示されている。
 だが、いかんせんゴブリン数が多過ぎる。
 表示が重なって見づらい事この上ない。

「ギャヒン、ゴ~~~~ブ」

 俺が、この群を統率しているハイ・ゴブリンを探していると、一際大きな叫び声が、森の奥から響いてきた。
 バリバリバリッ! と、音を立てて、ゴブリンたちの背後で木々が傾き……そして、倒れた。
 俺の周りにいるゴブリンたちが、ビクリと縮み上がる。

「何……あれ!?」

 あらわれたのは、巨大な……ゴブリン?
 ………………あれ反則じゃない。
 俺はゴシゴシと探査サーチの効いている目を擦る。

「あれって、トロールじゃないの!?」

 身長のほどは二メートルを超えて三メートル近い、筋肉がムキムキした肉体は深緑――というよりは黒鉄色に近い。
〔ギガンテス・ジェネラル・ゴブリン〕
 ちょっとゴブリン!? あんた超進化しすぎだろ!!
 あの体格、三メートル超えのバルバロイには負ける。
 がっ、がだ。
 モンスターの持つ威圧感だろうか、ヤツから受ける恐怖感は、本気になったバルバロイと遜色ない。
 ギガンテス・ジェネラル・ゴブリン……面倒くさいからGジェネ・ゴブリンと呼ぼう。

(ステータス)
 ギガンテス・ジェネラル・ゴブリン:妖魔族
 創造神 (????)
 レベル1
 生命力 325/325 
 魔力  42/42
 力   122 + 54 (装備修正)
 耐久力 113
 耐魔力 27
 知力  22
 精神力 18
 俊敏性 31
 器用度 12
 スキル:ウォークライ、眷属統治
 種族スキル:怪力
 装備:ジャイアントクラブ

 どうやらこいつがゴブリンたちの本当のリーダーらしい。
 でも、これでレベル1なの?
 これ以上レベル上がったらどうなるんだこいつ。
 おそらくモンスターはレベルがある程度上がることによって、上位種族に進化できるんじゃないだろうか?
 そうすればハイやらホブやらがいたのも理解できる。
 つまりヤツは、Gジェネ・ゴブリンに進化したばかりと考えられるわけだ。
 まあ中間らしき奴らがいないんで、Gジェネは超進化としか考えられない。
 でもまずい。
 敏捷度なんかは俺のほうが上だが、生命力や耐久力、力なんかが圧倒的にあっちが上だ。
 Gジェネ・ゴブリンは手にしたジャイアントクラブを振り上げる。

「ギッ、ギガッラーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 ビリビリと地を揺らすような怒号が響く。
(これって、さっきの――)
 Gジェネ・ゴブリンの号令一下、ゴブリンたちが一斉に俺に飛びかかってきた。

「クッ!」 

 俺はさっきのように、ゴブリンたちを弾き飛ばそうとした――が。
(なッ、身体が動かない!? まさか、スキルウォークライか。くそっ、まずい)

「グッ、うぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「ガッ、ジャアー」
「ギッ、ジャガッ」
「ジャヴィーラ、ガヤ」
「ギャガ、ジェガラ」

 直前まで俺がいた場所には、ゴブリンたちの山ができていた。
 ゴブリンたちは、手にした武器で俺を叩き、引っ掻き、刺そうとしたのだろう……。
 俺の眼下で、彼らは盛大に自爆していた。
 自爆で出来上がったゴブ山――悲惨なことに、山の下に埋もれてしまったゴブリンたちは、圧死してしまったようで、その下の地面にはジワリジワリと深緑の血が広がっている。
 うわー、他人ゴブリン事ながら、あれは悲惨かも。
 でも、回避が間に合わなかったら、あれは俺の未来だった可能性も……。

 俺は彼らに飛びつかれる瞬間。
 とっさに雄叫びを上げて、ウォークライの効果を振り切った。
 これはスキルでもなんでもない。
 俺の世界地球のテレビ番組で見た金縛りの解き方だ。
 金縛りなどは、声が出ると解けるらしいんだが、ウォークライにも効果があってよかった。ビバ情報番組!
 つまり、ウォークライの効果を振り切った俺は「憑獣の術」を使って敏捷度を上げ、素早く頭上へとジャンプしたのだ。

「グワッ!!」

 脇腹に強烈な衝撃が走り、バキバキという破壊音が響く。続いて背中に強いショックを受けた。
 ……グフッ! 
 しまった……ゴブ山に意識が行きすぎた。
 上空へと飛び上がった俺を、Gジェネ・ゴブリンがジャイアントクラブで打ち据えたのだ。
 俺はシートノックされた玉のごとく宙を舞い、巨木へと打ち付けられたのだった。

「ゴフッ!」

 鉄臭い匂いが鼻に抜け、口からは血が吹き出る。
 身体は力が入らず巨木の枝にズルズルと滑るように座り込んだ。

「ゴハッ、マズった……」

 血を吐き出し、グッタリと木の幹に身体をあずけた俺を見て、Gジェネ・ゴブリンは致命傷をあたえたことを確信したようだ。
 余裕を見せるようにノシノシと歩み寄ってくる。
 俺の目の前までやって来た奴は、手にしたジャイアントクラブを大きく振り上げた。
 その顔に、弱った獲物を仕留める享楽を湛えた笑みが浮かぶ。
 そして……ジャイアントクラブが振り下ろされた。

「ギャガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

 攻撃は俺の身体を僅かに逸れて、座り込んでいた枝の先をバキリとへし折った。
 Gジェネ・ゴブリンは、振り切ったジャイアントクラブをそのまま取り落として、顔を押さえて苦しんでいる。
 苦悶の雄叫びが、森を揺らすようだ。
 奴の右目には錆びたショートソードが生えていた。
 それは俺が投げ付けたものだった。
 ゴブリンたちが始めに襲いかかってきたとき、俺が弾き飛ばしたゴブリンたちの持ち物だろう。
 枝の根元に突き刺さっていたのだ。

「ただでやられるとおもうな……」

 がらにもなく勝ち誇ろうとしたら、突然視界がぐらり――と揺れた。
 あれ?

「うっプ――」

 急激な吐き気が、胃から喉元へと駆け上がってくる。

「あっ? うっ――ゲェェェェッ、グブッ、ゲェェェェェェェェェッ」

 なんで……なんでこんなときに……。
 いつのまにか俺は吐瀉物の海の上で藻掻き苦しんでいた。
 胃の内容物が絶え間なく昇ってくるため呼吸が苦しい。
 Gジェネ・ゴブリンから受けた打撃とあいまって意識が朧気だ。そのためか枝から落ちたことにも気付かなかった。

 まさか、こんな……
 いつまにか、Gジェネ・ゴブリンは右目を潰された衝撃から立ち直っていた。
 その残った左の目で、無様にのたうつ俺の姿を、怒りに震えるえて捉えていた。
 奴は取り落としたジャイアントクラブを拾い上げると、今度こそ、俺に止めを刺さんとばかりにゆっくりと大きく振りかぶった。
 そして、狙いを定めて振り下ろす。

 ああ……意地をはらなければ良かった。
 神気封印を解く機会は何回もあった。
 なのに……これは俺の驕りが招いた結果だ。
 俺の頭に走馬燈が浮かぶ。
 最近は柔らかい顔を見せてくれるようになったサテラの冷たい顔。
 成長が楽しみな俺の巫女。ペルカのほわほわした柔らかい笑顔。
 つり目なのに、癒やし系なシュアルさんの母性的な微笑み。
 暑苦しいバルバロイの……彼が最後の記憶は嫌だな。
 可愛い俺の相棒、キロの……表情はわかりづらいんだが……
 ……まあ、面白かったかな。
 こんな経験普通できるもんじゃない。
 ごめんなみんな。俺、浅はかで。
 天界復活を使っていないんだ。
 ここでの死はおそらく本当に死になるんだろう。
 俺が、生を諦めたその瞬間。

爪牙咆哮撃そうがほうこうげき!! なのです!」

 という叫びと共に――振り下ろされたジャイアントクラブを、灰銀の弾丸が砕いた。
 そしてそのままGジェネ・ゴブリンの顔面が殴打された。

「ギャヒーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ」

 Gジェネ・ゴブリンが、一際お大きな叫びを上げる。
 奴は、暗緑色の鼻血を噴き上げながらゆっくりと後方へと倒れた。
 顔面にぶち当たった灰銀の弾丸は、その反動で上方へと弾かれて、クルクルと回転して俺の目前に着地した。
 その先では、打ち倒された大木のようなGジェネ・ゴブリンがピクピクと手足を痙攣させている。
 どうやら、完全に気絶しているようだ。
 配下のゴブリンたちは、その状況にボスの敵を討つわけでもなく、我先にと、散り散りになって逃げていった。

「大丈夫なのですか!!」

 俺にかけられた声は、どことなく懐かしい。意識も絶え絶えな俺の目の前にいたのは。
 えっ、なんで? ペルカ……
 何でこんなところにいるの? ペルカ。
 俺は、彼女に答えようとしたが、気力はそこまで続かなかった。
 まるで暗幕がおりるように、瞼はゆっくりと閉ざされた。
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