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神様の家出。
101匹のワンちゃんも、それはそれで怖いです。
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「…………あれ? おまえ、クリサフさんのとこの……」
キロに押さえつけられた男は、ぬかるんだ地面の上で暴れてる。
顔までドロで汚れてるけど、この特徴的な栗色の巻き毛……。
俺の記憶が確かなら――いや、間違えたらなんだし一応確かめてみるか。
【探査】
あーっ、なんか久し振りに使った気がする。
ここのところ使ったら気づかれそうな人ばっかりだったもんな。
〈クリフ 16歳〉人族 男
クラス:狩人レベル3
…………
……
やっぱり。間違ってないな。
狩人レベル3か、年齢から考えるとけっこう優秀なのかな?
「キミ……クリサフさんの所のクリフだよな? なら、キロのことも知ってるだろ。なんでキロに矢を射ったんだ?」
「うるさい! 化け物使い!! 森を荒らしてどうするつもりだ!! グェッ!」
俺を睨み付けるクリフは、まだ幼さの残る顔に、恨みを込めた表情を浮かべている。
最後の呻きは、キロが彼を押さえる前足に力を込めたからだ。
キロは目を細めて不機嫌そうな雰囲気を発している。
これは……けっこう怒ってるね。
だけど、森を荒らすって?
…………心当たりはございませんが。
クリフの真剣な表情に思わず真面目に考えてしまった。
いや、それ以前に俺たちが森に入ったのだって、この村にやっかいになってから数回だ。
どうやって荒らすんだよ。
「キロ。放してやって。そのままじゃ誤解も解けそうにないし」
「キロ~、キロキロッ」
キロの鳴き声は思いっきり不満そうだ。
でも、足の力は弱めてくれたけどね。
「……君もなにか勘違いしていないか? だいたい俺とキロがこの森に入ったのは半月ぶりくらいだぞ。俺が信用ならないなら、女将さんに訊いてもらってもいい」
俺はクリフの腕をとって起き上がらせる。
「放せ!!」
バッ! と彼は俺の手を振り払おうとする……が。
「うわぁっ!」
クリフは手が離れるものと思ったのだろうが、俺は彼の腕をガッチリと掴んでいる。
結果、俺の手を振り払おうとした自分の勢いで、身体がおよいで前方につんのめりそうになっていた。
「……ほら、立って」
俺はクリフを強引に立たせると、直前の醜態をなかったかのようにやさしく笑いかけた。
「なっ、何だよ! ニヤ付きやがって! このッ――!? クソッ、放せ!」
あれ? 逆効果だった?
腰に吊した短剣を抜き放とうとしたクリフの腕を、俺は素早く押さえ込む。
「やめとけ! お前も――自分の思い込みだけで判断するんじゃなくて、冷静になってもう一度状況を考えなおしてみろ!」
と、柄にも無く説教じみた言葉を掛けた。
「キロ! キロキロキロ!!」
「……ああ分ってる。クリフ――どうやらこの森を荒らしてる犯人が向こうからやって来たようだぞ――」
キロが俺たちの周りを囲む気配に気付いて鳴き声を上げた。
俺もほぼ同時に気が付いたが、この気配……けっこうな数だ。
まだ一〇〇メートルほど離れている。だがこちらを押し包むように近づいてきている。
狙いは間違いなく俺たちだろう。
「どういうことだ!? おまえ! 仲間を呼んだな!!」
この子は…………ホント、人の話を聞かない子だな。
「そうじゃなくて! キロ、クリフ――村の方向に走れ! 包みこまれたら厄介だ。ほら、クリフいまだけでもいいから言うことを聞いてくれ!」
「キロ~~~~~~」
あっ、だめだ……。
遅かった。
状況を飲み込めず、一向に動く気配の無いクリフ。
彼を置き去りにするわけにもいかず、結局取り囲まれてしまった。
ガサガサッ!
と、森の茂みから現れたのは、暗い緑の肌をした、醜い禿猿のような生物だ。背は俺の腰より少し高い程度。
茂みからワラワラと現れる奴らは、少なくとも五〇匹はいるだろうか。
「クリフ、あれが何か分かるか?」
俺は問いかけながら【探査】を発動させた。
「えっ!? いやっ、あんなの――見たこと……でも、昔話のゴブリンが……、いや、でも――」
狩人のクリフも見たことがない生物なのだろうか、戸惑いながらも記憶を探っている。
クリフの口からも出たが、目の前の生物はゴブリンで間違いないようだ。
しかし、なるほどこの世界ではゴブリンは妖魔に区分されるのか。
ゲームなんかだと妖精とか幽霊とか魔物とか色々な区別があるんだよね。
俺はゴブリンたちの頭上に表示されている文字を読みとった。
RPG(ロールプレイングゲーム)では、スライムやコボルドなどと同じで、プレイしはじめの弱者でも比較的簡単に排除可能なモンスターだ。
だがそれはゲームという人間が作り上げた創作の中での話であって、甲高い耳障りな叫び声を上げながら眼前に迫るこの醜い生物には、実際に目にしなければ理解できない威圧感がある。
まあ、わらわらと押し寄せてくる状況というのは、それが愛らしい小動物だとしても恐ろしさを感じるものだ。
ほとんどのゴブリンはレベル1~2だが中には3、4といった数字も見受けられ、さらにハイやらホブなんてのが前に付いてる奴もいる。
彼らの手には木の棒や石斧、どこから手に入れたのか、錆び付いたナイフやショートソードを持っているものもいた。
「キロ!」
状況を飲み込めず固まっているクリフと探査に気を取られていた俺を尻目に、キロがひと鳴きするとゴブリンの一団に飛び込んだ。
「ギッ!」
「ギギィィ」
「ギャン!!」
キロの巨体で数匹のゴブリンが押し潰された。さらにその近場にいたゴブリンを長い舌で巻きとるとその大きな口にバクリとくわえ込んでゴリゴリとかみ砕いている。
仲間の惨状に、近くにいたゴブリンたちがパニックを起こして我先にと逃げ出す。
「ああッ! お腹壊すからやめなさい!!」
でも……、やっぱり肉食だったんだ……
俺たちを押し包むように進んできたゴブリンたちも、一角で起きたパニックに気を取られて前進を止めた。
「クリフ! キロのあとに続くぞ!!」
「あっ! ゆっ、弓を――うわぁっ!!」
強引にクリフの手を取って進もうとしたが、彼は枝から落ちたときに取り落とした弓を拾おうと手を伸ばす。そんな彼を、なんとか引っ張ってキロが突っ込んだ一角に駆け出した。
だがいち早くパニックから立ち直ったゴブリンたちが、俺たちを包み込むように迫ってきた。
クリフがいなければもう少し対処のしようもあるんだが……少々強引だけどしかたがない。
「キロっ! クリフを頼む!」
言うなり、クリフをキロの方に放り投げた。その高さは3メートルほど、このくらいの高さなら周りにいるゴブリンたちも手を出せないだろう。
「うわっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
状況が飲み込めないまま空中に放り出されたクリフを、キロが長く伸ばした舌で巻き付ける。そして素早く口元に引き寄せるとバクリッとくわえ込んだ。
キロは俺の意図を察したのか、クリフを横くわえしたまま村の方向へと飛び跳ね、ゴブリンたちの輪の中から抜け出した。
「あぁぁぁぁ~ぁぁぁぁ~ぁぁぁぁ~ぁぁぁぁ~ぁぁぁぁ~」
うっわ~~~~、あれはトラウマになりそうだな。
さっきまでゴブリンをかみ砕いていたキロの口からは不気味な濃い緑色の血液らしきものが滴っている。
しかもキロが飛び跳ねるたびに、口からはみ出ているクリフの胸から上と膝から下が大きく揺れている。
ジェットコースターなんてもんじゃないよね、あれ。
でも、飛び跳ねる距離が短いことを見るとキロも一応は加減しているみたいだ。
「……さて、これで見てる人もいない。言葉がわかるかは知らないけど、おまえら、逃げるなら今のうちだぞ!」
……と格好つけてみたものの、ちょっとこの数はどうなんだろう……
考えて見ると、俺のこれまでの戦いって一対一ばかりだった。
ゴブリンどももこの場に残った俺を獲物と定めたらしい。村へと向かったキロたちを追おうとするものはいなかった。
俺がここで彼らを撃退できれば、村への脅威が減るだろう。
それにしても、これだけの数のゴブリンがいて、よくこれまで村が襲撃されなかったものだ。
クリフのあの様子から考えると、クリサフさんは結構前から森の異変に気づいてたんじゃないだろうか?
これはゲームやライトノベルの知識だが、ゴブリンって、もの凄く繁殖率が高かったはず。
こいつらがどこからやってきたのかは疑問だが、この森にやってきてから増えたゴブリンが大半のように感じられる。ほとんどのゴブリンがレベル1~2ってのがね。
神気降臨すれば楽勝なんだが、そうすれば間違いなくサテラたちに見つかるよね……でもまだそこまで気持の整理がついてないんだよなぁ。
などと考えている間にも、じりじりとゴブリンたちは俺を押し包もうとにじり寄ってくる。
「ギッ、ギガッラー!」
リーダーらしきゴブリンが叫ぶと、それを合図にゴブリンたちが一斉に動き、わらわらと飛びかかってきた。
「「「ガッギャーー!」」」
と言う呻き声を上げて、俺に飛びかかったゴブリンたちがはじき飛ばされた。
それを見ていたゴブリンたちには、俺の周りに見えない壁でもあるように見えたんじゃないだろうか。
押し寄せようとしていたゴブリンたちの足が止また。
これはバルバロイとの訓練で身につけた掌打に闘気を乗せた攻撃で、軸足を起点にしてぐるりと一回転、掌打にのせた闘気で防壁をつくったのだ。
タイミングを合わせるのが難しいんだが、襲いかかってきた奴らの武器を弾き飛ばすこともできたんで、上出来だろう。
だが、ゴブリンたちはしばらくするとまた、ジリ、ジリ、とにじり寄ってくる。
いまので力の差を感じて引いてくれればとも思ったんだが――やっぱりだめか。
「まったく、兵隊アリじゃあるまいに」
こういう場合。やっぱり叩くとしたら頭だよな。
さっき号令を掛けてたゴブリンはどれだったっけ?
たしか、ハイゴブリンだったはずだ。
「……表示が重なっててわからないよこれ。さっきのどこ行った?」
探査が効いているので、名前やレベルが彼らの頭上に表示されている。
だが、いかんせんゴブリン数が多過ぎた。
キロに押さえつけられた男は、ぬかるんだ地面の上で暴れてる。
顔までドロで汚れてるけど、この特徴的な栗色の巻き毛……。
俺の記憶が確かなら――いや、間違えたらなんだし一応確かめてみるか。
【探査】
あーっ、なんか久し振りに使った気がする。
ここのところ使ったら気づかれそうな人ばっかりだったもんな。
〈クリフ 16歳〉人族 男
クラス:狩人レベル3
…………
……
やっぱり。間違ってないな。
狩人レベル3か、年齢から考えるとけっこう優秀なのかな?
「キミ……クリサフさんの所のクリフだよな? なら、キロのことも知ってるだろ。なんでキロに矢を射ったんだ?」
「うるさい! 化け物使い!! 森を荒らしてどうするつもりだ!! グェッ!」
俺を睨み付けるクリフは、まだ幼さの残る顔に、恨みを込めた表情を浮かべている。
最後の呻きは、キロが彼を押さえる前足に力を込めたからだ。
キロは目を細めて不機嫌そうな雰囲気を発している。
これは……けっこう怒ってるね。
だけど、森を荒らすって?
…………心当たりはございませんが。
クリフの真剣な表情に思わず真面目に考えてしまった。
いや、それ以前に俺たちが森に入ったのだって、この村にやっかいになってから数回だ。
どうやって荒らすんだよ。
「キロ。放してやって。そのままじゃ誤解も解けそうにないし」
「キロ~、キロキロッ」
キロの鳴き声は思いっきり不満そうだ。
でも、足の力は弱めてくれたけどね。
「……君もなにか勘違いしていないか? だいたい俺とキロがこの森に入ったのは半月ぶりくらいだぞ。俺が信用ならないなら、女将さんに訊いてもらってもいい」
俺はクリフの腕をとって起き上がらせる。
「放せ!!」
バッ! と彼は俺の手を振り払おうとする……が。
「うわぁっ!」
クリフは手が離れるものと思ったのだろうが、俺は彼の腕をガッチリと掴んでいる。
結果、俺の手を振り払おうとした自分の勢いで、身体がおよいで前方につんのめりそうになっていた。
「……ほら、立って」
俺はクリフを強引に立たせると、直前の醜態をなかったかのようにやさしく笑いかけた。
「なっ、何だよ! ニヤ付きやがって! このッ――!? クソッ、放せ!」
あれ? 逆効果だった?
腰に吊した短剣を抜き放とうとしたクリフの腕を、俺は素早く押さえ込む。
「やめとけ! お前も――自分の思い込みだけで判断するんじゃなくて、冷静になってもう一度状況を考えなおしてみろ!」
と、柄にも無く説教じみた言葉を掛けた。
「キロ! キロキロキロ!!」
「……ああ分ってる。クリフ――どうやらこの森を荒らしてる犯人が向こうからやって来たようだぞ――」
キロが俺たちの周りを囲む気配に気付いて鳴き声を上げた。
俺もほぼ同時に気が付いたが、この気配……けっこうな数だ。
まだ一〇〇メートルほど離れている。だがこちらを押し包むように近づいてきている。
狙いは間違いなく俺たちだろう。
「どういうことだ!? おまえ! 仲間を呼んだな!!」
この子は…………ホント、人の話を聞かない子だな。
「そうじゃなくて! キロ、クリフ――村の方向に走れ! 包みこまれたら厄介だ。ほら、クリフいまだけでもいいから言うことを聞いてくれ!」
「キロ~~~~~~」
あっ、だめだ……。
遅かった。
状況を飲み込めず、一向に動く気配の無いクリフ。
彼を置き去りにするわけにもいかず、結局取り囲まれてしまった。
ガサガサッ!
と、森の茂みから現れたのは、暗い緑の肌をした、醜い禿猿のような生物だ。背は俺の腰より少し高い程度。
茂みからワラワラと現れる奴らは、少なくとも五〇匹はいるだろうか。
「クリフ、あれが何か分かるか?」
俺は問いかけながら【探査】を発動させた。
「えっ!? いやっ、あんなの――見たこと……でも、昔話のゴブリンが……、いや、でも――」
狩人のクリフも見たことがない生物なのだろうか、戸惑いながらも記憶を探っている。
クリフの口からも出たが、目の前の生物はゴブリンで間違いないようだ。
しかし、なるほどこの世界ではゴブリンは妖魔に区分されるのか。
ゲームなんかだと妖精とか幽霊とか魔物とか色々な区別があるんだよね。
俺はゴブリンたちの頭上に表示されている文字を読みとった。
RPG(ロールプレイングゲーム)では、スライムやコボルドなどと同じで、プレイしはじめの弱者でも比較的簡単に排除可能なモンスターだ。
だがそれはゲームという人間が作り上げた創作の中での話であって、甲高い耳障りな叫び声を上げながら眼前に迫るこの醜い生物には、実際に目にしなければ理解できない威圧感がある。
まあ、わらわらと押し寄せてくる状況というのは、それが愛らしい小動物だとしても恐ろしさを感じるものだ。
ほとんどのゴブリンはレベル1~2だが中には3、4といった数字も見受けられ、さらにハイやらホブなんてのが前に付いてる奴もいる。
彼らの手には木の棒や石斧、どこから手に入れたのか、錆び付いたナイフやショートソードを持っているものもいた。
「キロ!」
状況を飲み込めず固まっているクリフと探査に気を取られていた俺を尻目に、キロがひと鳴きするとゴブリンの一団に飛び込んだ。
「ギッ!」
「ギギィィ」
「ギャン!!」
キロの巨体で数匹のゴブリンが押し潰された。さらにその近場にいたゴブリンを長い舌で巻きとるとその大きな口にバクリとくわえ込んでゴリゴリとかみ砕いている。
仲間の惨状に、近くにいたゴブリンたちがパニックを起こして我先にと逃げ出す。
「ああッ! お腹壊すからやめなさい!!」
でも……、やっぱり肉食だったんだ……
俺たちを押し包むように進んできたゴブリンたちも、一角で起きたパニックに気を取られて前進を止めた。
「クリフ! キロのあとに続くぞ!!」
「あっ! ゆっ、弓を――うわぁっ!!」
強引にクリフの手を取って進もうとしたが、彼は枝から落ちたときに取り落とした弓を拾おうと手を伸ばす。そんな彼を、なんとか引っ張ってキロが突っ込んだ一角に駆け出した。
だがいち早くパニックから立ち直ったゴブリンたちが、俺たちを包み込むように迫ってきた。
クリフがいなければもう少し対処のしようもあるんだが……少々強引だけどしかたがない。
「キロっ! クリフを頼む!」
言うなり、クリフをキロの方に放り投げた。その高さは3メートルほど、このくらいの高さなら周りにいるゴブリンたちも手を出せないだろう。
「うわっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
状況が飲み込めないまま空中に放り出されたクリフを、キロが長く伸ばした舌で巻き付ける。そして素早く口元に引き寄せるとバクリッとくわえ込んだ。
キロは俺の意図を察したのか、クリフを横くわえしたまま村の方向へと飛び跳ね、ゴブリンたちの輪の中から抜け出した。
「あぁぁぁぁ~ぁぁぁぁ~ぁぁぁぁ~ぁぁぁぁ~ぁぁぁぁ~」
うっわ~~~~、あれはトラウマになりそうだな。
さっきまでゴブリンをかみ砕いていたキロの口からは不気味な濃い緑色の血液らしきものが滴っている。
しかもキロが飛び跳ねるたびに、口からはみ出ているクリフの胸から上と膝から下が大きく揺れている。
ジェットコースターなんてもんじゃないよね、あれ。
でも、飛び跳ねる距離が短いことを見るとキロも一応は加減しているみたいだ。
「……さて、これで見てる人もいない。言葉がわかるかは知らないけど、おまえら、逃げるなら今のうちだぞ!」
……と格好つけてみたものの、ちょっとこの数はどうなんだろう……
考えて見ると、俺のこれまでの戦いって一対一ばかりだった。
ゴブリンどももこの場に残った俺を獲物と定めたらしい。村へと向かったキロたちを追おうとするものはいなかった。
俺がここで彼らを撃退できれば、村への脅威が減るだろう。
それにしても、これだけの数のゴブリンがいて、よくこれまで村が襲撃されなかったものだ。
クリフのあの様子から考えると、クリサフさんは結構前から森の異変に気づいてたんじゃないだろうか?
これはゲームやライトノベルの知識だが、ゴブリンって、もの凄く繁殖率が高かったはず。
こいつらがどこからやってきたのかは疑問だが、この森にやってきてから増えたゴブリンが大半のように感じられる。ほとんどのゴブリンがレベル1~2ってのがね。
神気降臨すれば楽勝なんだが、そうすれば間違いなくサテラたちに見つかるよね……でもまだそこまで気持の整理がついてないんだよなぁ。
などと考えている間にも、じりじりとゴブリンたちは俺を押し包もうとにじり寄ってくる。
「ギッ、ギガッラー!」
リーダーらしきゴブリンが叫ぶと、それを合図にゴブリンたちが一斉に動き、わらわらと飛びかかってきた。
「「「ガッギャーー!」」」
と言う呻き声を上げて、俺に飛びかかったゴブリンたちがはじき飛ばされた。
それを見ていたゴブリンたちには、俺の周りに見えない壁でもあるように見えたんじゃないだろうか。
押し寄せようとしていたゴブリンたちの足が止また。
これはバルバロイとの訓練で身につけた掌打に闘気を乗せた攻撃で、軸足を起点にしてぐるりと一回転、掌打にのせた闘気で防壁をつくったのだ。
タイミングを合わせるのが難しいんだが、襲いかかってきた奴らの武器を弾き飛ばすこともできたんで、上出来だろう。
だが、ゴブリンたちはしばらくするとまた、ジリ、ジリ、とにじり寄ってくる。
いまので力の差を感じて引いてくれればとも思ったんだが――やっぱりだめか。
「まったく、兵隊アリじゃあるまいに」
こういう場合。やっぱり叩くとしたら頭だよな。
さっき号令を掛けてたゴブリンはどれだったっけ?
たしか、ハイゴブリンだったはずだ。
「……表示が重なっててわからないよこれ。さっきのどこ行った?」
探査が効いているので、名前やレベルが彼らの頭上に表示されている。
だが、いかんせんゴブリン数が多過ぎた。
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