俺は、新(異)世界の神となる! ~そのタイトル、死亡フラグにしか見えないんで止めてくれませんか~

獅東 諒

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神様Help!

降臨したら、コロッセオ!?(前)

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 何故こうなった!!

 バルバロイと出会ってからこんな展開ばかりじゃないか!! 
 俺は絶叫したい気持ちを抑えながら、目の前でグラディウスを構える魚兜闘士ムルミッロを油断無く見る。
 魚兜闘士の名のとおり魚をひれを模したかぶとを被った剣闘士だ。
 しかしこの世界、どっちが影響を与えてるかは分からないけど、俺のいた世界とまったく同じようなものが結構あるようだ。
 ローマ時代の剣闘士に目の前の魚兜闘士ムルミッロと同じ装いのものを見た覚えがある。
 対する俺も相手と大差ない格好で、トラキア剣闘士トラークスといいわれる装いだ。いちばんの特徴はグリュプス兜と呼ばれるグリフォンを模した飾り付きの兜だろうか。

「ほら戦え! 止まるな!」
「バドック、殺れー!」
「「「殺ーれ! 殺ーれ! 殺ーれ!」」」

 どんだけ血に飢えてんだよお前ら!!
 観客の物騒な声が四方八方から響く。
 いま俺がいるのは円形の壁に囲まれた闘技場、コロッセオってやつだ。
 ただ、俺の世界の人間がコロッセオと言われて想像するだろう、ローマのコロッセオよりはだいぶ規模が小さい。
 しかし前文明の大崩壊から300年でよくこれだけの物が造れたよな。規模が小さいとはいえ立派な装飾が施された石造りですよ。
 サテラから聞いた話だと、主神に弓引いた文明国家があった場所は徹底的に天変地異を起こし、さらにトドメの星堕としメテオフォール。このときある程度の技術や知識を持った者たちも抹殺されたそうなのだ。
 ……やっぱり邪神じゃない、あの主神かみ
 コロッセオの建築技術は問題なしだったんだろうか? それとも残っていた技術からこの300年でここまで発展させたんだろうか? まあ俺はそのあたりプロではないんで分らないけど。

 ところで既に気が付いていると思うが、俺はいま地上にいる。
 何をしているかというと、なぜか筆頭剣闘士を決めるトーナメントに出場しているのだ。
 原因はそう、バルバロイだ。
 実はバルバロイから訓練を付けてもらうようになって、既に三年の月日つきひが流れていた。
 ……別に訓練を引き延ばしたわけじゃないよ。
 それこそ毎日死ぬ思いだったんだからね!
 バルバロイから訓練終了のお墨付きが出たのが今朝だったのだ。
 ……そう、今朝だったのだ。
 大事なことなので二度言ってみました。
 で、この状況ですよ。
 冒頭ぼうとうの俺の心の叫びは間違ってないよね。ね!?

「おらおら、なに逃げてやがる。とっとと倒しちまえ!!」

 この声は、俺に取り憑いた疫病神バルバロイのものだ(闘神だという事実はこのさい無視したい)。
 彼も地上に教練士マギステルバルトスとして降臨していた。
 いや、地上での立場を利用して、俺をこのトーナメントに押し込むためにやって来たのだ。この疫病神は。
 うーん、実は先程からずっと魚兜闘士に攻撃されていたのだが、視える! 時が視える。いえいえいえ、冗談は置いておいて。
 何でコイツこんなに動きが遅いの?
 攻撃がスローモーすぎて思わず考え事してましたよ。
 バルバロイから受けた3年に及んだ訓練しごき
 レベルが違いすぎてどれくらい成長したのか分からなかったが、ちゃんと成果があったようだ……相手に申し訳ないレベルで。
 正直なところ、あまりにも相手の動きが遅いので、考え事しながらも、どのくらいギリギリで避けられるかとか色々と試してました。
 この戦いを視ている観衆には、まるで神業のように見えているだろう――いや、神なんですけどね。

「おいっ、あの新人は何者だ。動きが並じゃないぞ!?」
「でも、避けるばかりでなにもしないじゃないか」
「いつまで、同じことやってやがる!」
「バドック! 意地がねえのか、新人野郎に良いようにもてあそばれやがって!」

 同じことを長くやると飽きられるって言うけど、早すぎないキミ達。……それにしても、俺そんなに長く考え事してたか?
 いつまでも現実逃避してても仕方がないか。
 俺は、手に持ったシーカ刀の柄で相手の攻撃を避けざまに兜から覗く首筋を撫でるように打った。
 魚兜闘士は意識を失い糸の切れた操り人形のように足下から崩れおちる。

「やりやがったぞ、あの新人!」
「バドックって第三剣闘士だろ?」
「バカ! バドックは第五剣闘士にまでランク落ちしたはずだ」
「ヤツも歳だからな」
「どっちにしても、行くぞ!」
「「「殺れー! 殺ーれ! 殺ーれ! 殺ーれ!」」」

 だからどれだけ血に飢えてんだよお前ら!!
 俺は、変に燃え上がっている観客を無視して審議員を見る。
 審議員は握り込んだ拳を突き出すと親指を立て、その指を下に向けた。
 『生かせ』の合図だ。
 この辺りのルールと言うか常識は三年の訓練の合間にバルバロイに仕込まれたので間違いない。
 俺の世界では映画などのイメージで、親指を上にあげた場合に『生かせ』の感覚があるが、俺の部屋の本棚に収められている雑学本によれば、近年の解釈ではこちらの世界と同じく下向きが『生かせ』だったはずだ。
 ブー、ブーとブーイングが聞こえるが、実際のところよほど無様な戦いをしたり、うっかり刃が滑りでもしない限り死人が出ることはまれらしい。
 魔法が存在するので、即死でもない限り治癒できるからだ。
 また、こちらの世界では剣闘士の立場が微妙に違っている。
 バルバロイの説明だと、確かに犯罪者や敗戦によって「剣奴」という剣闘士にされた者もいる。しかし死の確率が低くまた治癒魔法によって後遺症が残るほどの怪我を負うことも少ないことから、この国の兵士が平時の鍛錬や収入源として戦っている場合が多いのだそうだ。
 彼らの多くは、興行師と契約をしていて公務などに支障が無い限り剣闘士として活動している。
 そう考えると、先程からうるさいほどはやし立てているのはなのだろうか?

「おい、ヤンマーなに遊んでやがった。今のお前だったら一瞬でケリが付いたろ」

 試合場アレーナから控え通路に戻った俺にバルバロイの声が掛かる。
 彼はなにやら不満げだ。いや、それ以前にヤンマーって何だよ!?
 どこの耕耘機こううんきだ!!
 バルバロイの野郎、俺の名前をヤンマーで登録しやがったな。
 神名はまずいだろということだろうが、他に付けようが無かったの?
 ヤマトがダメだったらダイチでも良いじゃないか。
 ………………
 …………
 ……ああっ! 良く考えたらバルバロイに名前教えてなかったよ。

「あと6回は闘わなきゃなんねぇーんだ。今回の相手は魔法や特殊スキルを持ってなかったから良いが、油断してると足下すくわれるぞ」
「いやぁ、自分のいまの力がどんな感じなのか試してみたかったんだよ」
「そんなもん、能力値ステータスを見れば一目瞭然じゃねぇか」
「いや、分んないって!」

 能力値ってほとんど数字の羅列だからね。はじめから神として産まれたキミ達とは違うんだよ。
 ちなみにいまの俺のステータスは、

〈大和大地 22歳〉人族 男
創造神 (?ゃ?吟???)
守護神 (サテラ)(シュアル)
クラス:剣士レベル4 → 21(メイン)、闘士レベル1 → 17
生命力 49/49 → 150/150
魔力  66/66 → 158/158
力   25 → 62
耐久力 24 → 42 + 7(装備修正)
耐魔力 36 → 64
知力  25 → 48
精神力 40 → 63
俊敏性 23 → 54 + 5(加護修正)
器用度 28 → 54
スキル:剣術Lv8 → 28、〔新〕格闘術Lv21、体術Lv6 → 24、憑獣の術(消費MP30)、探査サーチ、武の才、戦の才、菓匠の才
種族スキル:考案
装備:シーカ刀、小型スクトゥーム盾、グリュプス兜、すね当てグレアウェー腕甲マニカ
所持品:界蜃の袋

 といった感じだ。
 俺が初めて地上に人化降臨したときのサテラのステータスを超えていたりする。
 まあ俺の鍛錬に付き合っていたのでサテラのレベルはさらに上がっているんだけどね。
 ただし、神レベルはこの三年で上がらなかったのだ。それ以前の神レベルの上がり方から考えると、レベル3から4に上がるのに必要な経験値量が跳ね上がったか。それとも何か経験値以外に必要な条件があるのかもしれない。
 ちなみに今回は肉体年齢二二歳の状態で人化降臨していた。
 外見的には鍛えているぶん引き締まった身体付きになっている。ただ、シュアルさんに魂の姿と言われた中性的な外見ではなく普通に俺が二二歳の頃のイメージそのままだ。
 ついでに言っておくとバルバロイの戦闘訓練は終了したが、俺はあの後、あの姿になれたことは一度も無いのだ。でも肉体的年齢はかなり自在に操作できるようになった。

「よーし、今日の対戦はこれで終わりだ。取りあえず地上こっちの俺の住処すみかに移動するぞ」

 そう言うと、バルバロイはコロッセオの外に向かって歩き出した。
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