俺は、新(異)世界の神となる! ~そのタイトル、死亡フラグにしか見えないんで止めてくれませんか~

獅東 諒

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神様Help!

露出狂は冤罪です!!(前)

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「まあ30点ってえところか、一応合格だけどよぅ。……オメエ、何でこんな状態になってんだ?」

 バルバロイが俺の右手ムッキムキ状態に、ニヤついた笑みを貼り付けて疑問を投げる。
 サテラさんにいたっては、目を軽く伏せ、眉間に指先を添えて、ゆっくり小さく首を振っている。……呆れてますね。そのリアクション。
 いやあ、やっちゃった感は確かにあったんだけどね。

「えーっと、神は精神体に近いってのと、ここにいる戦士達の状態?」
「ふぅー」

 あら、サテラさんがさらに呆れた感じに。

「まあ、間違っちゃいねぇが、間違ってんな」

 えっ! どっちなの? 間違ってるの、間違ってないの!?

「よっし、これからは俺が相手してやるぜヤマト」

 マジですか!? サテラから一本取っただけだよ。まだ早くない? ……早いと言ってほしい。
 うち捨てられた子犬のような雰囲気をまとってサテラさんにうるうるとした目をやるが……彼女の母性は刺激出来ませんでした。
 むさいオッサンですいません。

「ナニッ! バルバロイさまが直接相手をするだと!?」
「アイツ、何者だ?」
「オレなど700年も修行しているが、いまだに手合わせが叶わぬのだぞ!」
「おのれ、サテラさまが相手をしていただけでも過分だというのに!」
「ほらアレよ、そこの壁が無い部屋で生活してる……」
「なになに、あの露出狂の人?」

 近くにいた戦士達がザワザワと騒いでいる。
 チョット待て!
 最後のは冤罪えんざいだと主張したい!!
 最近はバルバロイもサテラさんも、さらにシュアルさんだって俺の部屋に入りびたってるだろ!
 って、みんな一心不乱に訓練しているように見えたけど、しっかり俺の部屋見てたんかい!!
 ……まあ、そうだよな。オープンセットだもんな。
 俺の中に突っ込みと諦めが吹き荒れる。
 しかし、地味に自分の知名度の無さに引くわ!
 一応主神ですよ。代理だけど……ウソじゃないよ。

「まあ、この体格差だと訓練になんねぇから、ちょっと待ってな。……体格変えるのなんざ数千年ぶりなんで、おっ、こんな感じか?」

 そう言うとバルバロイの身体がグングンと縮んで行く。

「あっ……、そういうことか」

 大体180センチというところで止まったバルバロイの変化を見て、彼らが言おうとしていたことがわかった。
 俺が気付いたイメージで身体を変化させることが出来るということは間違っていない。だが先ほどの、間違っていないが間違っているというのは、筋肉を付けるとかそういう表面的なものではなくて、俺自身の存在のイメージをどう持つかという根本的なことなんだろう。
 そう考えて、この神殿域に居る戦士達を見回すと、ほとんどの戦士達が、肉体のピークではないかと思われる二〇歳前後の年齢だ。
 ここに居る戦士達は、サテラさんを含む戦女神が、地上で英雄ともてはやされた戦士達を死後に天界へと迎え入れた人達なのだそうだ。彼らは厳密にいうと神ではないらしいが、死後天界へと招かれているということで、やはり神に近い存在なんだろう。英霊とでも言うべきか?
 考えてみれば、死後にここにやって来たはずなのに、みんな若いんだからそのあたりをもっと考えるべきだった。といっても正直なところこの三ヶ月間そんな事に頭を使う余裕もなかったんだけどね。
 だがバルバロイさん? アンタのやってることのほうがサテラさんのヒントより分りやすいんですけどね。
 はじめて会ったときから思っていたけど、アンタ考えなさすぎるよ。そのうち長靴を履いた猫あたりに食われないか心配になってきたぞ。

「おっ、判ったみてぇだな」

 バルバロイもいまの俺の反応で、サテラさんの謎掛けに気付いたと分ったようだ。
 うーん、俺がどうするべきかは分ったけど、どうやればいいのかな。俺は、ムッキムキ状態から元に戻った右手を見る。
 ……実際に目に見えているものを真似するのとはわけが違うからなあ。

「剣術はこれまでのサテラとの訓練で形になったから、俺は、格闘中心で鍛えてやる――覚悟しな」

 まだ考え中の俺を無視してバルバロイは平常運転だ。
 それよりも覚悟しなって、――それ訓練で言うセリフじゃないだろ!

「じゃ、行くぜ」

 言うなりバルバロイは素早いダッシュで間合いに入ると拳を突き立ててくる。
 回避は間に合わないので、とりあえず腕を筋肉で固め、両手をクロスして拳を受けた。

「ガッ! ってぇー!!」

 初めの殴打おうだはなんとか防いだが、痛い痛い。
 でも筋肉を固めることを強くイメージしたせいか骨折はしなかったみたいだ。
 腕がジーンと痺れて脳髄に響いてきた。首筋の辺りに氷を当てられたような嫌な感じだ。

「いまやらなきゃならねぇことは理解したんだろ! 早く、出来ねぇとボロボロになるぞ!!」

 やらなきゃいけない事が分かるのと、それが実行出来るってことは、根本的に違うからね! 俺は感覚派じゃないんだよ!! ゲームだってマニュアル読み込むタイプなんだからな!

「おらおら、次行くぞ!」

 バルバロイは完全に身体で覚えろモードだ。
 言葉とともにまた突っ込んできた。

「くっ、こうなったら……」

 俺は彼の攻撃を避けるようにバックステップした。

「なッ!?」

 次の俺の行動に、バルバロイが絶句した。
 なぜなら……、クルリと振り返って全力で逃げ出したからだ。
 まじめな話、もう少し考える時間が欲しい。だから時間稼ぎに逃げ出したんだけどね。

「うぉっ、なんだコイツ!」
「キャァ!」

 この広場にいる戦士達のあいだをうように避けて逃げているが、たまにぶつかりそうになる。

「よーし、良いぞ! 不利だと思ったら、有利な状態を作るのに逃げるのも有りだ。だが、逃げるならもっと意表を突け」
「へっ?」

 げっ、バルバロイの声が耳元で聞こえた。

「ガッ!」

 声の方向に振り向くまもなく、腹部に衝撃が走る。
 体が宙を飛び、神殿前に蹴り戻された。
 土の上をゴロゴロと転がる。
 土埃が舞い上がり土の匂いがむせるように鼻に刺さる。まあ、蹴り飛ばされた威力を弱めるためにわざと転がってるんだけどね。
 脇腹がじんじんと痺れるが、これまでの訓練の成果か、それともさっき気付いた事を意識しているせいか、初めてバルバロイに会ったとき、デコピンで弾き飛ばされたのにくらべればだいぶ余裕がある。
 勢いが弱まり転がりついた場所は、サテラさんの足下だった。ふとサテラと目が合う。

『ヤマト、バルバロイさまは武芸全般に通じていますが、格闘術をもっとも得意としています』

 先ほどバルバロイに過保護と言われたからか? 直接俺の頭に声をかけてきた。
 何か、良いアドバイスでもくれるんだろうか?

『……いまの実力差ではどうにもなりません。バルバロイさまの気が済むまで、防御するか避けるかして耐えなさい』

 え゛ッ!! それがアドバイス? それしか無いの――ねえ!?

「おらっ、次いくぞ!」

 声と共に発せられた殺気に間一髪で飛び起きて振り向くと、頭のあった場所に小さなクレーターが――殺す気か!!
 たぶんバルバロイなりに手加減はしてるのだろうが、一つ誤ればそのまま別の天にされそうだ。
 でも三ヶ月の訓練は無駄じゃなかったな、それなりに身体が動く。
 サテラさんに剣の打ち合わせから入る組み伏せや投げ倒しなどの技も掛けられていたので、その辺りの攻撃は受けないように注意を払いながら拳や蹴りを避けていく。

 サテラさんのアドバイス? に従って次々と繰り出されるバルバロイの攻撃を避けて受けて十数分、すでに身体中アザだらけだ。
 いたずらに上がってしまった体力が恨めしい。
 あっ、あそこの木の陰からこちらを心配そうに覗いているのはシュアルさん?
 確かに最近はシュアルさんも俺の部屋の本を読んでいた覚えがあるけど、あれ? 俺の部屋にスポ根野球マンガはなかったと思うんだが、そのネタどこから仕込んだんですか!?
 いや、それよりも、助けて下さいシュアルさん! この暴走肉弾頭バルバロイを何とかして下さい!!
 しかし女神に助けを求める主神って有りですか?

「グッ、ガハッ!」

 木陰のシュアルさんに気を取られた瞬間、バルバロイの拳が俺の胸を打った。
 口からブバッ! と血がほとばしる。
 グァァァ、息が!
 ……どうも肺をやられたみたいだ。格闘マンガなんかで出てくる寸勁すんけいってヤツか?

「やべぇ、あまり綺麗に避けるからつい力が入っちまった」
「ヤマト!!」

 屈み込んでしまったので周りの状況は見えないが、サテラさんが叫んでこちらに走り出したのは分った。
 ヒューヒューとか細い息が血と一緒に口から漏れる。
 息が出来ずに意識が遠くなってきた。あ、この感覚、アースドラゴンにられたときにも感じたような……。
 チョッとは成長した気がしたんだけどなぁ……。
 俺は意識を手放した。
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