俺は、新(異)世界の神となる! ~そのタイトル、死亡フラグにしか見えないんで止めてくれませんか~

獅東 諒

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初めての降臨。

スキルはあっても、レベルがね……(前)

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 ああ……俺はいったい何をやっているんだ。
 あっ、いや確かに確認は必要だったんだけどさ、村まで三時間かけて降りて、いま、それを六時間かけて登ってます。
 確かにね、『事件は崖の下で起きていたんだ!!』って、『崖の上じゃないのかよ!!』ってツッコミは無しの方向でお願いします。
 あそこに戻らないと解決しないとは思うんだけど――俺は肉体派じゃないんだよ!!
 俺の前ではペルカがまるで疲れを感じさせないような足取りで山を登っていた。
 所々にある都市の残骸ざんがいの岩なども、軽く飛び越えたりしている。
 昨日、俺たちが見付けたときは餓死寸前だったのに、どこにそんなエネルギーがあったのキミ!? 超回復とかそんなスキル持ってなかったと思うんだけど。

「ペっ、ペルカ、待ってくれ……」

 俺は、息も絶え絶えに訴えた。
 くだったときは、クロス・アーマーにマントだけだったけど、いまは、レザー・アーマーを着込んでいてその上にマントを羽織って剣を吊している。 この装備は長老が準備してくれた物なんだが、これが意外に重いんだからさ。

「ヤマトさん、大丈夫なのですか?」

 ペルカがヒョコヒョコと軽い足取りで戻ってきて俺の顔を覗き込む。俺が実は神だと知っているのに、彼女の表情に蔑みの色はない。やっぱ良いええ子や、この子。思わずエセ大阪弁が出てしまう。

「いや、……無理かも……」

 俺の惨状を尻目しりめに、サテラさんは相も変わらず俺の斜め後ろを黙々と付いてくる。――まあ、彼女は戦女神だから肉体派だよね。

「情けない奴だ! この程度の山を登るのに何をグズグズしている!」

 ペルカの進むさらに先から、ドゥランが俺を見下ろしている。
 あぁ、そうだ、コイツも付いてきたんだった。コイツはどう見ても筋肉馬鹿だから割愛させていただきたい。
 何というか小学生のときに、親に連れられて富士山に登ったのを思い出すよ。ただ、体力は今の方が無いけどね。
 森林限界はとっくに超えて、高山植物もだんだん少なくなっていた。その分気温が下がって空気が澄んでいくのが判る。そういえば、高山病の兆候を全く感じないけど、大丈夫だろうか? 神様補正か?
 子供の時は高山病になりかけて、予定より登頂に時間が掛かったんだよな。おかげでご来光を9合目で迎えてしまった。親には悪い事をしたよな。結局家族での富士山登山はあれが最後だった訳だしな……いや、両親健在だよ地球で。

 昨夜、長老の勧めに甘えて家に泊めてもらい、今朝早くロンダン村を出発したわけだが、村の出口に待っていた者たちがいた。ペルカの父親で族長のフォルム。あとドゥランと仲間たちである。
 フォルムはペルカを生け贄として差し出す決断をしたからか、昨日合ったときから肉親ではなく、族長として接しようとしているようだった。
 結局そこで話し合ったのは、彼らが神としてあがめているモノが本当に神なのか、それとも、俺たちが言うように神では無い偽物なのか、それを判断する者を部族の中から連れて行けということだった。つまり、俺とサテラさん、あと、当事者いけにえでも有るペルカ(は初めから付いて来る気満々だ)だけでは、生け贄の祭壇拘束場所に現われるであろうモノが何であれ。ロンダン村の人々に証明できないだろうというわけだ。

 俺としては、余計な者を連れて行きたくなかったのだが、最終的にドゥランだけは連れて行くことになってしまった。
 他の奴らは、「もしかしたら生け贄が居なくなったことに気が付いた偽神?が、村を襲うかもしれない。俺達はサテラがいれば何とかなるから、後の戦士達は村で警戒に当たって欲しい」と説得したのだ。まあ、ドゥランだけは強行に同行を主張して付いてきたわけだが。

 俺が、へー、ゼーしながら上を見ると、ドゥランの野郎、ペルカ以上にひょいひょい上に登っていく。尻尾が左右にヒョコヒョコ振られてるよ。
 なに上機嫌になっちゃってんの? 何とかとバカは高いところが好きって言うけどそれか? アッ、何とかってバカのところに使うんだっけ。
 その後ろに続くペルカの尻尾もビュンビュンと振られているが……違うと思いたい。

 ペルカが拘束されていた崖下まではもう少しだ。いや~頂上まででなくて良かった。
 あそこまで昇ると後、数百メートル昇らなければ成らなくなってしまう。

「ちょっ、チョット休憩。ねっ」

 情けないのは分かっているさ。だけど、人間頑張るだけでは駄目なところも有ると思うんだ。
 なんでかって、頑張るってのは頑張ればいいわけで結果を求めていないんだから。ある意味良い言葉だよね。頑張る。

「そんなことで、目的が達成できますか? ヤマト」
「ヤマトさん、頑張るのですぅ、もう少しなのですぅ」
「ええぃ、ぜんぜん進まねぇじゃねえか!」

 あぁ、上下から挟まれるように口撃が……ペルカだけが癒やしだよ。

「えっ、うぉ。チョット何を――」
「うるせえっ、こうしなけりゃ進まねぇじゃねえか!!」

 突然ドゥランが上から降りてきて俺を脇に抱え、言葉と共に走り出した。

「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~」

 怖い、怖い! 地面が近い。うゎッ、そこ岩が飛び出てる!! 削れる。削られちゃう!
 俺の目の前を、昔の都市の残骸がビュンビュンと通り過ぎていく。ドゥランの野郎、野生の勘で俺のさっきの思考を読んだのか?
 前を見ていると精神がガリガリと削られていくので、後ろに続くペルカとサテラさんを見た。
 …………アンタら凄いよ…… ペルカとサテラさんはドゥランのスピードに苦もなく着いてきている。いや、サテラさんに至っては、スキップでもしているような身軽さでまだまだ余裕が感じられる。
 ……俺、もし天界へ帰れたら――身体鍛えるよ。次回があったらきっと死ぬ。
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