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大学を卒業してから三年が経った。
円とは職場が近く、卒業から三年経った今でも定期的に会っている。大学四年間、ずっと仲良くしてきたし、何より趣味の合う大切な友人だ。近くにいられてとても嬉しい。
私と諒太は腐れ縁が続いている。
入社一年目の同業種の集まりでばったり会った。 諒太もこの業界にいたのかと驚いたが、そういえば研究室が一緒なのだから、狙うところは近いものになるよなと納得する。
社会人三年目の今年、同業種の集まりで顔を合わせた諒太から、今度結婚するから結婚式に来て欲しいと招待を受け、喜んで出席すると返事をした。
実は私も来年籍を入れる予定だが、式は挙げないつもりなので、特に報告はしていない。
いつか話す機会があるだろう。
諒太の結婚式に綾も呼んだそうだ。
あの時別れて以来会っていないから、本当に久しぶりに顔を合わせることになる。
元気にしているだろうか。
気にはなったが、連絡はしなかった。
そして諒太の結婚式当日、主役の諒太よりも綾が気になってそわそわしていた。
待合室で開場を待っていると、静かに扉が開き、綾が顔だけ出して中を伺っているのが見えた。
綾にこそっと近付き、何してんの?久しぶりと声をかけた。
綾はうわっと声を出して、慌てて口を押さえた。
顔を見合せ、笑い合う。
久しぶり。
あれからどうしてた?
元気だった?
今なにしてるの?
どこに住んでるの?
たくさん聞きたいことがあったけど、今の綾の顔を見ると、綾は大丈夫だ。何も聞かなくても大丈夫。そう思った。
綾も近いうちに、職場の先輩と結婚するのだそうだ。幸せそうで良かった。
私も来年籍を入れる予定だと報告する。
お互いに、今幸せだよ、安心して。と言葉にせずに伝え合う。
そして諒太の式が終わると、綾は明日も仕事だからと帰って行った。
それから半年後、綾から『入籍しました』と短いメッセージが送られてきた。
おめでとうと、私は一言返した。
それからさらに半年後、学生の時から付き合っていた人と私は入籍した。
綾には、入籍しました。とだけメッセージを送った。
綾からは、『幸せになって』と一言返ってきた。
これで本当に綾とは終わった。
綾との思い出は、決して楽しいことばかりでは無かった。でも、私の記憶を司る部分は良く出来ているようで、苦しかった記憶程、早く薄らいでいくように出来ているらしい。そして、よく思い出すのは入学したばかりの一番多感な時期に仲良くなった私達。
いつも一緒だった私達は、いろんな話をして、笑って、きらきらしていた。
あの頃のような、心が揺さぶられる友人はもう二度と持てないのだろう。
そして今は、離れてしまったかつての友人の幸せを願っている。
《 了 》
円とは職場が近く、卒業から三年経った今でも定期的に会っている。大学四年間、ずっと仲良くしてきたし、何より趣味の合う大切な友人だ。近くにいられてとても嬉しい。
私と諒太は腐れ縁が続いている。
入社一年目の同業種の集まりでばったり会った。 諒太もこの業界にいたのかと驚いたが、そういえば研究室が一緒なのだから、狙うところは近いものになるよなと納得する。
社会人三年目の今年、同業種の集まりで顔を合わせた諒太から、今度結婚するから結婚式に来て欲しいと招待を受け、喜んで出席すると返事をした。
実は私も来年籍を入れる予定だが、式は挙げないつもりなので、特に報告はしていない。
いつか話す機会があるだろう。
諒太の結婚式に綾も呼んだそうだ。
あの時別れて以来会っていないから、本当に久しぶりに顔を合わせることになる。
元気にしているだろうか。
気にはなったが、連絡はしなかった。
そして諒太の結婚式当日、主役の諒太よりも綾が気になってそわそわしていた。
待合室で開場を待っていると、静かに扉が開き、綾が顔だけ出して中を伺っているのが見えた。
綾にこそっと近付き、何してんの?久しぶりと声をかけた。
綾はうわっと声を出して、慌てて口を押さえた。
顔を見合せ、笑い合う。
久しぶり。
あれからどうしてた?
元気だった?
今なにしてるの?
どこに住んでるの?
たくさん聞きたいことがあったけど、今の綾の顔を見ると、綾は大丈夫だ。何も聞かなくても大丈夫。そう思った。
綾も近いうちに、職場の先輩と結婚するのだそうだ。幸せそうで良かった。
私も来年籍を入れる予定だと報告する。
お互いに、今幸せだよ、安心して。と言葉にせずに伝え合う。
そして諒太の式が終わると、綾は明日も仕事だからと帰って行った。
それから半年後、綾から『入籍しました』と短いメッセージが送られてきた。
おめでとうと、私は一言返した。
それからさらに半年後、学生の時から付き合っていた人と私は入籍した。
綾には、入籍しました。とだけメッセージを送った。
綾からは、『幸せになって』と一言返ってきた。
これで本当に綾とは終わった。
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いつも一緒だった私達は、いろんな話をして、笑って、きらきらしていた。
あの頃のような、心が揺さぶられる友人はもう二度と持てないのだろう。
そして今は、離れてしまったかつての友人の幸せを願っている。
《 了 》
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