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4章 魔女と湖畔の街と革命の鐘
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しおりを挟むしばらく船で向こう岸へ行こうとしていたけど
霧が水上にもあって何度も迂回している。
イーヴィーは不安そうに
「これ、向こう岸へ行くのは難しいかもしんない…」
と言った。
霧は追いかけてくるわけではないから避けられる。
それ自体はミネルヴァと連携していけばできるけど…
ただし霧は動かないわけでもない。
ミネルヴァに偵察に出てもらっていて感じたのはやっぱり思った通り。
この街や、向かいの湖周辺の街には霧が出ないということだった。
人が多く住んでいたところには霧は出ない?
それともゾンビには霧を出現させない何かがある?
霧が出ないエリアのルールが知りたい。
それさえ分かればもっと移動が楽になるかも。
どちらにせよ、ゾンビをどうにかするか。
それとも霧をどうにかするか…
考えながらレベルの上がったオスカーをふと見る…
オスカー
月の怪物 レベル3→4
アビリティ「不可侵の毛皮」
skill 「怪物の前腕」
「月光浴」 「怪物の呼吸」
「雑食怪物」「ルーンフィールド」new!
ルーンフィールドはオスカーの周りの重力に干渉することができる。
船には寝室と小さなリビング、トイレとシャワー室もすごい狭いけどあるし。
こういう船に乗ったことなったからちょっとわくわくした。
今日はイーヴィーの提案でみんなで釣りをした。
普通に釣れて、みんなで食べる。
捌くのに手間取ったし、イーヴィーは言い出しっぺのくせにつまんないとか不満を言ってたけど
久しぶりの魚は美味しかった!
ルーシーはこういうのに慣れてなさそうだったけど積極的に手伝ってくれた。
夜になりオスカーが月光浴を始める。
私たちはかわるがわる仮眠をとったりいろんな話をしたりして過ごしていた。
そこでイーヴィーが力の使い方が分かったかも!と言い出した。
「ほんと? どんな力だったの?」
「えーとね。なんか物質を変化させたりイメージを具現化させたりできるんだ。ちなみに素材は絶対必要だよ。なんかモノづくりとかに向いてると思うよ。」
「へー、例えば?」
「えーと、なんだろ。なんかレーザー銃とかさ。」
「作れるの?レーザー銃。」
「いや、ちょっと無理かも。」
「あたしのイメージ力とか適正、知識と素材とかも多分関係してるんだと思う!」
うーんそっか…
あ、あとレベルとかも関係もあるかもね。
ま、しばらく様子を見てみよう
翌朝、湖の南東にゾンビたちがいたのでできるだけ違う場所に降りたかったが
南西は霧の関係で難しくて結局北東の停泊所のほうへ向かった。
停泊所近くには扇動個体ゾンビがいた。
それ以外のゾンビ達は数体しかいなかった。
ミネルヴァが暗殺鳥を発動する。
スキル「暗殺鳥」は1人ターゲットを決めるとその相手に攻撃するまで気づかれにくくなるスキルだ。
あまりにも長くは発動し続けられないし、見つかった後再度かけるのも難しい。
扇動個体をミネルヴァが急降下して喉元を狙い仕留める。
やはり喉をやられると扇動できないみたいだった。
私はほうきで降り立ちゾンビを片付け始める。
オスカーは自分の体を軽くして水面を疾走しながらやってくる。
停泊所のゾンビたちは何とかできた。
ここだけじゃなくて周辺のゾンビたちも探しては狩っていく。
入念に片付けていって、ほっとできる程度には減らせた。
イーヴィーたちが船から降りてくると
ルーシーは何をしたらいいか?と尋ねてきたけど。
今のところ雑用くらいしか頼むこともないので
近くの建物に入って色々物色してきて。持ち運び出来ないものはどんなものがあったのか
後で報告して。報告した内容とどの町にどんあ物資があるかノートにまとめて記録してもらう。
あとで一応目を通してゆく。
私がウイッチクラフトでなにか作れるかもしれないから。
OK! といってルーシーは走っていった。
イーヴィーはここにある機械とか船を材料に使えば何かできるかもしれないと言い出した。
ということでうちのプリティなエンジニアは、色々な機材を見てはあちこち行ったり来たりして
何か独り言をつぶやきつつメモに書きだしたりしている。
何をやってるのかよくわかんないけど、好きにさせておく。
機械をいじっているときの彼女は楽しそうだ。
この場所はオスカーとミネルヴァに任せて私は隠密モードでこの北東の街を探索し始める。
やっぱりこの北東の街のゾンビの大部分は前に私たちがいたところにいるんだ。
あの学校があった南の町に比べてゾンビの数が少ない。
この町全体で百体くらいしかいない?
いくつの町がこいつらゾンビにやられたんだろう? と考えつつ。
この北東の町の出入り口やフェンス、障害物などを把握していく。
今は大丈夫そうだけど、いつまで船が安全かもわからない。
街に隠れなきゃいけなくなった時のために
障害物をところどころ町中に作っておく。
もうだいぶゾンビと戦ってきたから。
何となくだけど分かってきている。
どこにどのくらいのゾンビが集まりやすいかとか。
1時間ほどそんな地道な作業をしているとき街の中心にある建物が気になった。
それは見ただけで心が寒くなるような
さびれた教会だった。
この教会…
結構古い感じだけど。
なにかほの暗い陰気な気配のする建物だった・・・
ちょっと怖いな。
田舎のさびれた教会とか。
しかもゾンビの町と化してるところだし。
中には誰もいないことは見通しの魔眼で確認しとくけど。
中に入ると少し風が吹いて寒かった。
入口のすぐ近くに
ミイラのようになっている人間の死体。
老女の死体。
この死体…
自決している。
ゾンビにならないように?
いや絶望して?
死体は左手に刃物を持ち自分の胸に突き刺して教会の祭壇前の通路
に倒れこんでいる格好になっていた。
死体の近くに何かある。
なにこれ?
床にしかれていた絨毯が老女の右手によってずらされていた。
しゃがんで絨毯をもっとずらして見る…
床のタイルがある。
タイルの一部分は外せそうになっている。
床のタイルを外してみる。
意外と簡単に外れた…
石でできた階段が地下のほうへと続いている。
地下への入り口になっている穴の縁には奇妙なシンボルや文字が彫刻されていた。
恐る恐る階段を下りていく。
ひんやりとした風が肌をくすぐる。
階段は思いのほか長い2階分ほど降りたんじゃないだろうか。
普通じゃない…
こんな田舎町の教会の地下に何でこんなところが?
長すぎる地下への階段が終わり、ようやく下の階に着く。
真っ暗でよく見えないが。
目の前に扉のようなものがある。
開けようとするとずっしりとした手ごたえはあったがすんなりと開いた。
部屋の中心は真っ暗だった。
入口すぐ近くの壁にランプがあることに気が付く。
何となくそれを手に取った。
ランプを手にして
どう火をつけるのかと思って触ってみるといきなりランプの灯がついた。
一瞬びっくりして目を見開く。
そして目の前部屋の中心に目をやると
巨人がいた。
3,4メーターはあるんじゃないかという体は大きな椅子に座っていて服はほとんど来ていない。
腰布だけが申し訳程度に腰にかぶせてある。
それは暗めのクリーム色の肌に髪の毛はない、目にまつげもない。
大きな目をしていた。
顔の大きさに不釣り合いなほど大きな目。
微動だにせず目も動かさず。
ただ静かに呼吸をしていることから
それが生きていることは伝わってきた。
え?生きてる?こいつ生きてる!
巨人の口が動いた。
空からの声で少し、何かを発生してその後
! ! !!! !!!!!!
とても形容できないような声を上げた。
それの顔面に魔女のモロトフを投げつける!
巨人が叫ぶ。
炎に焼かれながらもこちらに向かって咆哮を放ってくる。
そのまま階段を駆け上り逃げ出す。
階段から出る前にもう3つ魔女のモロトフを投げ込む。
何も聞こえてこないけど、距離をとりたい。
建物から離れながら隠密モードになる。
建物から飛び出て振り返ると
教会が一瞬で崩壊した!
アレが出てくる。
何を考えているのか全くわからない顔。
いきなり私とは全然違う方向の建物に
凄い瞬発力で突っ込んでいく。
めちゃくちゃに外壁を拳で破壊した。
そのあともヤツは手当たり次第にいきなり建物に突っ込んだり、
大きな瓦礫をあてずっぽうに投げたりしている。
私はできるだけ奴と距離をとっていく。大丈夫。
アイツ私のこと察知できてない…
少なくとも今は…
幻視が発動する。
領土戦争 開始 領土の所有 戦いの正当性
革命 ゾンビの主 子爵ネフィリム 挑戦しますか?
ゾンビたちの主?
ネフィリム? 気持ち悪い!
領土の所有って何?
革命?
何が何だかわかんないよ。
あの巨人がいくつかの建物を壊したあと周りをゆっくり見渡している。
不気味な目をしている。
無表情で大きな目を見開きながら。
アイツのまとっているマナとさっきの動きから一対一で勝てる見込みは低いと感じた。
停泊所にいるミネルヴァと視界共有しネフィリムのことを見せておく…
ミネルヴァはオスカーに二人を任せてこちらに飛び立った。
ミネルヴァがこっちに来るまで数分以上かかるだろう。
停泊所からここは多少の距離がある。
見通しの魔眼で周りを観察していく。
ゾンビが少しづつ増えてきてる。
さっきまで10体くらいしかいなかったのにもう三倍以上いる。
この街の近くにもゾンビがたむろしているところがあったのかもしれない…
ヒト型エイリアンゾンビや鳥のゾンビも集まってきた。
ヒト型エイリアンゾンビは人間のそれとは比べ物にならないくらい強い。
あの巨人を相手にしながら対応するのはかなり難しい…
めんどくさいゾンビ扇動個体も現れてる。
見つかったら、いけない。
意識が希薄なゾンビの群れよりずっと統制が取れてる。
2体のゾンビが近づいてきていたので倒した
が異変に気付いてすぐにヒト型エイリアンゾンビが来る。
隙をついてそれも仕留めたが扇動個体に怪しまれた。
その瞬間
周りの障害物やブロック塀がふっとんだ
スローモーションのように瓦礫が宙を舞っていく中
ネフィリムがこちらに突っ込んできていたのを理解する。
大きな真っ黒な目がこちらを見ている。
白めの部分が大きな目に不釣り合いなほど少ない。
もうモロトフも一個しかない。
モップにまたがり一瞬で浮遊しつつスペルブックを出しネフィリムの目の前に魔力を込めた
魔女の燃える水の水球を出す。
巨人の顔面にウォーターカッターのように燃える水が噴出し顔の表面を切り裂く。
最後の魔女のモロトフを使う。
巨人の顔を切り裂いて顔面及び頭部にいきわたったガソリンに魔女のモロトフが引火して爆発を起こす。
ヤツの顔がヘルファイアに包まれて見えなくなる瞬間まで
あの生き物はまったく表情を変えず、瞬きもせずに変わらぬ表情でこちらを見ていた。
この生き物に恐怖した。
ヤツがここに突っ込んできてここまで僅か1、2秒ほどの出来事だった。
奴は自分の顔の日を消そうとこの場を飛びのきながら
己の手で顔を何度か強くはたいた。
そのまま隠密モードをまた発動してできる限り遠くへ逃げる。
奴がやみくもに追いかけてくる。
息が切れそうになるくらい全力で疾走し、一瞬だけ飛行したり障害物を器用に使っては逃げる。
どこに逃げるのかも考えてさえられない。
まったく余裕がない。
再度ヤツが私の近くに突っ込んできたが何とか回避できた。
その後ヤツはこちらではなくてあらぬ方向へ突っ込んでいく。
感知能力はそんなに高くないようだった。
肩になにか変な感触がした。
なにか触った?
ヒト型エイリアンゾンビの弾丸。
当たっちゃった。
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