35 / 51
決戦! 地区別運動会
戦い終わって日が暮れて(4)
しおりを挟む「何々?」
織田が何やら察知してて、小声で聞いてくる。
「もしかして、約束があった?」
「……あー……ていうか、聞いてたけど、日時とか入れといてって言ったきり、忘れてたっていう話」
「そうなんだ。今日だったの?」
「ん」
「そっか……じゃあ高瀬、そっちに行っても、いいよ?」
「え?」
織田はクスッと笑って、電話には聞こえないように。
「オレは、明日ゆっくり高瀬と美味しいもの食べにいければ、全然。先に帰ってるよ?」
織田は、ほんとに良いよと思ってそうだが。
そんな訳にはいかない。
「いいよ、別にまたすぐ会うだろうし」
「いつぶりなの?」
「二、三か月位……?」
そう言うと、織田は、んーと考えた後。
「いいよ、ほんとに。家で待ってるから」
何だか本当に先に帰ってしまいそうな。
全然嫌そうでないのが織田のすごいとこだと思うんだけれど。
「織田、一緒に行く? 嫌じゃなければ」
「え?」
「一緒に来れば? って言ってるんだけど」
「ん? オレが一緒に行くの? 高瀬の友達のところに?」
「……ちょっと待って」
さすがに織田もちょっと不思議そうなので、オレは、もう一度スマホを耳に当てた。
「誠ー、ほんとに一緒で良い訳?」
『ん? ああ、良いって言ってんじゃん。前に佐藤の彼女とかもついてきたことあったろ』
「……ああ。そういや、そんなこともあったけど……」
ちら、と織田を見つめると。ん? にっこり笑う織田。
「……来て良いって言ってんだけど……どうする?」
「えーと……良いなら行くけど」
けろっとしてそう言って笑う織田に、ああ、そういうタイプだっけな、と苦笑い。
一瞬、大丈夫か聞こうと思ったけれど、これは大丈夫だなと、判断した。
「……じゃあ連れてく。店は?」
『地図とかも入れてある。待ってるからー』
「了解」
電話を切って、場所を確認する。
「近い?」
「ん、電車乗って十五分位」
「そっか。行こ行こ」
織田がオレを見上げてにっこり笑う。
「ほんとにいいのか?」
「え? いいよ。だって、オレも高瀬の学生時代のこと知りたいし」
「……いい話じゃないかもよ?」
「そう? でも別に。だって、なんとなく知ってるような気がするし」
歩き始めながら、そんな話をしていると、織田がそう言って笑った。
「クールな感じでモテモテだったんでしょ?」
「――――……」
「なんとなく分かるから、平気。どんだけカッコよかったか、聞きたいだけだから。聞けると思うし」
絶対本気なんだろうなと思う表情で、そんなことを言って笑うから。
オレまで、笑ってしまう。
「高瀬がモテるのなんか知ってるし、学生時代とかに、誰とどれだけ付き合ってたって平気。……ていうか、オレも結構モテたし」
悪戯っぽく笑う織田に、そうだろうな、と返すと。
「……そこ、つっこんでくれないと、恥ずかしい」
「え、何で? 織田は、モテたと思うけど?」
「オレより百倍モテてそうな高瀬に言われると、余計恥ずいです……」
困った顔をしているのが可笑しくて、くしゃ、と髪をなでると。
ますます照れてるし。
どうしてこんなに可愛く生きてこれるのか、謎。
なんて。また思ってしまった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる