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始まりの悲劇
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鳥の鳴き声が響き、のどかな雰囲気に溢れた村。ここはかつて、賢者が訪れ、あるものを封印するために大きな結界を張ったこと以外はなんらそこらの村と変わらない平和な村だった。
結界に守られた村人達は畑を耕し、汗水流してたくましく生きていた。
今まで大きな飢饉も無く、この平和がいつまでも続くと信じて疑わない村人達は今日も笑顔で溢れ、労働に励んでいた。
「ふぅ……風が心地いいな…………」
村から少し離れた丘の上、その丘の上にある大きな木の下で寝転がり、くつろぐ少年もまたこの平和が崩れようなど一切考えていなかった。
少年がくつろいでいると遠くから二つの影がこちらに来るのが見えた。
「やっぱりここにいた~!お兄ちゃん、またサボってる!グラ兄やルル姉、お父さん達に怒られるよ!」
丘を駆け上がってきて、息を切らしながらもぷりぷりと怒っているのは少年の妹、名をユーリという。
「ユーリの言う通りだわ、サボってるとこわーいルル姉に叱られるわよ。」
ニコニコ笑って、のんびりした口調でユーリと同じようなことを言うのは少年の姉、名をミラと言う。
「ん?あー、いいのいいの。俺は剣の修行をしてたんだからさ。」
木の下で寝転がってた少年~名をシオンという~は自分の脇に置いていたロングソードをユーリとミラに見せる。
「もう!それがサボっていい理由になると思うの?」
「いやいや、グラン兄さんだって俺くらいの時は仕事をサボって剣の修行に明け暮れてたんだ。俺はダメだなんて言わせねぇぜ。」
「それでも!せめて剣の修行するなら私に言ってよ!」
「いやぁ、剣の修行見たってつまらないだろ?それに俺についてきたら怒られちまうぞ?」
「…………別にお兄ちゃんと一緒にいられるならいいもん。」
「はっはっはっ!ユーリは可愛いなぁ!」
がしがしと乱雑に、しかし痛くは無いようにシオンはユーリの頭を撫でる。
「お兄ちゃん!恥ずかしいってば!」
ユーリは顔を赤くしてすっとシオンから離れる。
「はぁーい、二人だけでいちゃつかないで私も混ぜなさいよ~!」
突然、シオン後ろから抱きつき首元をぺろりと舐めたミラに今度はシオンが顔を赤くして慌てて離れる。
「ちょ、ミラ姉!その癖直しせよ!くすぐったいんだけど!」
「あら?ごめんね、ふふふ。」
全く反省も直す気も感じられない姉の返事にはぁとため息をつくシオン。
「じゃ、私は先に戻っておくわね~。ユーリの事頼んだわよ~。」
「あ、俺も戻るわ!」
「えー、せっかくだから遊んで行こうよ~!お父さん達には一緒に怒られてあげるから!ねっ?」
「はいはい、りょーかいっと。」
可愛い妹の頼みを断れるわけもなく、シオンはユーリと遊ぶ約束をする。
それからしばらくユーリと遊び、日が暮れて来た時、シオンはロングソード腰に下げ、ユーリと手を繋いで村へ戻ろうとした。すると、ふと村の方が騒がしい事に気がついた。
「あっれ?どうしたんだろう?ユーリ、ちょっと急ぐぞ。」
「わ、わかった!」
「賊だ!女子供を早く避難させろ!」
村に着くと、皆が武器を持ち、慌ただしく動いていた。
シオンは大剣を背負った父、魔法を使うための補助として使われる杖を持った母、ロングソードを持った兄と母と同じく杖を持った姉の姿を見つける。
「父さん!賊だって?!」
「シオン!ユーリ!良かった。無事だったか!いいか、お前達は早く避難しろ。」
「お、俺だって戦えるよ!」
シオンは腰に下げたロングソードを指差して言う。
「いや、まだだめだ。お前を戦わせるのは危険だ。」
「父さんなんで?!俺だって村のために……」
「お前はユーリを守れ!いいな?お前には守るべきものがあるだろう!」
「お、お兄ちゃん……」
「ユーリ……」
「安心しろ、父さんや母さん。グランにルル、ミラだっているんだ。お前だって父さん達の強さ、特にミラの強さは知ってるだろう?」
「……わかった。」
シオンがユーリを連れて避難しようとしたその時。
「ひゃっはー!殺せぇ!」
盗賊達がついに柵を突破し、村に殴り込んできた。その目は狂気を宿しており、理性なんてものは存在していなかった。
「ッッ!シオン!ユーリ!逃げろ!」
シオンの父親は大剣を抜き放ち盗賊に立ち向かっていった。
一一一一一一一一
盗賊の頭領は焦っていた。
「おいおい、あいつら何やってんだ……まだ村のやつらを潰せてねぇのか。」
全ての盗賊が瞳に狂気を宿し、狂ったように突撃するなか頭領だけはその目に理性を宿していた。しかし、その瞳も多くは恐怖、焦りといった感情に支配され、冷や汗を垂れ流していた。
「ねぇねぇ、とーりょーさん!まだ終わんないの?」
頭領の後ろから急に話しかけてきた楽しげな少年の声。頭領が振り向くとそこにはぷかぷかと宙に浮かび、無邪気な表情を浮かべる少年がいた。
「へ、へい。クラウン様。まだ終わっておりません……村のやつらの抵抗が激しく…………」
盗賊の頭領は声が震えるのを必死で抑えながら答えた。
「ふぅーん。そっかぁ。ならさ!ジャック!もういいよね?あいつらで蹂躙しちゃおうよ!」
少年が振り向きながら話しかけるとそこには耳の尖った大男がいた。その男は到底人間では持てないような大剣を背負い、残虐な笑みを浮かべながら歩いてきた。
耳の尖った男といってもエルフのような存在ではない。よく見ると頭には2本の角があり、その角がエルフで無いという事を主張していた。
「ああ、この人間の部下は使えねぇみたいだからな。奴らを投入しろ。」
「おっけー!早速行っちゃえ!」
その掛け声と共に姿を表した異形。
それは、ゴブリンと呼ばれる魔物であった。しかし、その風貌はただのゴブリンではない。まるで、一匹一匹が巨大な鬼のように立派な身体を持ち、禍々しい雰囲気を醸し出していたのだった。
グルァァァァ
ゴブリン達は村に向かい駆け出す。その様子をクラウンと呼ばれた少年とジャックと呼ばれた大男は満足げに、盗賊の頭領は恐ろしさに震えながら眺めるのだった。
一一一一一一一
当初は賊を押し返せていた村は異形のゴブリン達が姿を表した瞬間、地獄絵図と化した。
「いや、やめて……こないで!いやぁぁぁぁ!」
「ひゃっはー!殺せ!殺せぇ!女は犯せぇ!俺らの天下だ!ハッハッー!」
ある者は盗賊に追われ、捕まり慰みものになり……
グルァァァァ!!
「うわ、離せ!おらはまだ死にたくっ……」
グシャ
またある者は異形のゴブリンに頭を潰された。
あちこちで怒号と悲鳴が響く。
やめろ!俺は女じゃな……むぐ?!
あ、あの怪物、男でも慰みものにするのか……?あ、あれはなんだ?!ゴブリンなのか?!あんなゴブリンみたこと……うぎゃ!
ああ、この血だ俺達ゃこの血を求めてた!殺せぇ!
ぬわぁぁぁぁ!!
グルルルル……
やめろ!娘だけは……娘だけは……
へへ、上玉じゃねーか!てめぇら捕まえろぉ!
グルァァァァ!ウギャギャ!
もうやめて……私はもう……
まだたんねぇよぉ!しゃぶれやおらァァ!
へへ、後ろは俺が貰うぜぇ!
ぎゃはは!あのおっさんゴブリンに掘られてらぁ!ぎゃはははは!
おいおい、あの女はゴブリンにやられて壊れちまったぜ。俺らの分はなくなっちまうかぁ?ひゃははは!
そして、その地獄絵図を前に一人の神父はただ、混乱していた。
「盗賊ならまだしもなぜ、ゴブリンがこの地に?!結界はどうしたのだ?」
次々と増える異形のゴブリンをなんとかしようと神父は盗賊やゴブリンをメイスで殴り倒しながら結界を張っていた祠がある村の端を目指す。
「やはり、やはり祠が壊されている……。」
神父は結界の再設置が出来ないかと試みるが祠の損傷がひどく、神父の力だけでは結界を張り直す事は出来なかった。
「いったい何者が……?盗賊か?いや、盗賊程度ではこの祠自体に張ってある結界を突破は出来ないはずだ…………。」
「ふふふ、誰がやったかを知る必要なんてないわ。神父さん、さようなら。」
「?!何者……ガハッ……。」
神父は振り返りその言葉を最後まで言う事は無く、槍に貫かれ絶命した。
倒れゆく神父が最後に見たのは、槍を持つ、黒いドレスに身を包んだ女性だった。
一一一一一一
「くそっ、くそっなんだよこれ……」
「お兄ちゃん……怖いよ……」
「大丈夫だ、ここにいたら……父さん達が……きっと……大丈夫だ……」
シオン達は家の地下に隠れてやり過ごしていた。
グギャ!グギャ!
すると、シオン達の耳にゴブリンの鳴き声迫ってくる。
「へへへ、このゴブリン……こっちに反応してるぜぇ?まだ獲物がいるかもなぁ!」
「だなぁ!行くぜ!相棒!」
「こ、こうなったら……。ユーリ、ここで待ってろ!」
覚悟を決めたシオンは階段を駆け上がり、ロングソードを抜き放ち、今まさに家に入ろうとしていた盗賊に切りかかる。
「あぁん?」
ゴブリンと盗賊達ははお互いに狂気を孕んだ目を交わしあい、同時にシオンに襲いかかる。
ゴブリンと盗賊達は初めて組むにも関わらず三位一体となり苛烈な攻撃を繰り出す。
しかし、シオンはその攻撃すら掻い潜り、まず、異形のゴブリンの首を飛ばす。
「このガキ!おもしれぇ!うひゃひゃ!」
二人の盗賊は怯むことなく剣を構え、狂った笑いを上げながら突撃する。
シオンはすぐに後ろに下がり、傍にあった椅子を持ち上げ、投げつける。
「うぉ?」
椅子が当たった盗賊は立ち止まる。その後ろから来ていた盗賊はその立ち止まった盗賊を剣で切り捨て更にシオンとの距離を詰めようとする……が既に目の前にシオンの姿は無かった。
「あぁん?」
盗賊が首を傾げた瞬間、その首は胴と離れ、落ちていく。
「ハァハァハァ……」
シオンは息を荒らげながら座り込む。
「お兄ちゃん!大丈夫?」
シオンの隣にはいつのまにかユーリがいた。
「こら、ユーリ。待ってろと言っただろ。」
まあ、来てしまったものはしょうがないと考え、ユーリに早くここから逃げるぞと言って立ち上がろうとした瞬間。
目の前に大男が立ちはだかる。
「逃げる必要はないぞ。我が息子よ。」
「……なんだお前は…………」
「クハハッ!父の顔を忘れるなんて寂しいじゃあないか!まあ、いい。お前も見るといい。この景色を。素晴らしいだろう?人の醜さ、人の弱さ、人の残酷さ、いろんなものが見れる。面白い、面白いなぁ人間とは!なぁ?お前も思うだろう?」
シオンは妹とともに大男に外に放り出された。そして、目に入った光景に思わず目を覆い、ユーリは恐ろしさのあまり気を失ってしまった。
既に抵抗する者は無く、ただ、悲鳴を、ただ、泣き声を上げながら盗賊や異形のゴブリンになされるがままになっている村人達。
辺りには赤と白の液体が混じり合い、言葉に出来ない臭いが立ちこめていた。
「息子よ、素晴らしいだ「俺はお前の息子なんかじゃない……」……ほう?」
「俺はお前みたいな非道の怪物の息子じゃない……俺の父さんは立派で……強くて……お前なんかとは比べ物にならな「お前の言う父とはアレの事か?」」
大男が指さした方向にはこの空間には似合わないほど無邪気に笑う宙に浮く少年がいた。
その少年の指先から黒い糸が伸び、その糸はシオンの父へと繋がり父は少年の思うがままに動かされていた。
「アハハっ!ねぇ?どんな気持ち?ねぇ?どんな気持ちなのさぁ?自分の娘に汚ったないモノを咥えさせてさぁ!自分は気持ちよくなってさぁ!どんな気持ちなのぉ?答えてよぉ!ねぇ?!アハハっ!面白いねぇ!人間ってほんっと面白い!!」
「むぐっ、んんー!!!んっ!」
「すまない……すまない……くそぉ、誰か……誰か俺を止めてくれ……誰か俺を俺を止めてくれぇ!すまない……すまない……この黒い糸を誰か……くそぉぉ!」
「んんんんっっっー!!」
「はぁ……はぁ……ルル……すまない……父さんは…………」
シオンは無様に父が姉に対して事に及ばされてるのを見ることしか出来なかった。
「クハハッ!アレのどこが立派な父だろうなァ?そう思わないかぁ?」
「嘘だ……父さんが…………嘘だ………………母さんは?!母さんはどこに?!」
「アレだよ。クヒヒッ……」
シオンはそちらに目を向けた瞬間、目をそらした。
そこには生気のない、死んだ目をした母とそれを盗賊と異形のゴブリンが回していた光景。
シオンの心はズタズタだった。
何もかもが信じられない光景。
シオンの中を絶望、そして、それ以上に憎しみの感情が支配し始めていた。
「おお、いいぞ息子よ。絶望しろ!恨め!憎め!負の感情が高まれば高まるほどお前の血は目覚める!俺と同じ、血がな!」
「ふざけるな……ふざけるなよ…………」
「クハハッ!その目、いいぞ……正しく化物だ……俺と同じ、いやそれ以上かも知れんなぁ!」
「俺は……俺は…………」
「シオン?!ユーリ?!無事なのか?!」
突如響くシオンの兄、グランの声、グランは血だらけの身体を引きずりながらロングソードを構え、近づいてくる。
「シオン、ユーリ……今助けるぞ…………お前達だけでも……このデカブツを倒してお前達だけでも……」
「ッッァァァァァァ?!!!?!」
シオンから人間のものとは思えない異様な叫び声が上がる。
「……シオン?」
「クハハッ!きたぞ!よくやったぁ!息子よ!覚醒だ!血の覚醒ダァ!」
シオンの叫び声に押され、呆然とするグラン。興奮し、目を輝かせる大男。
叫び終えたシオンはすっと立ち上がる。
シオンの本来黒かった瞳が赤く染まり、周りの盗賊達と同様、狂気に彩られていた。
「くひゃひゃ……あひゃひゃひゃ!うひゃひゃひゃ!」
シオンは笑いながら手に持つロングソードを気を失っているユーリに振り下ろす。
「……!!やめろっ!シオン!!」
間一髪、グランのロングソードが間に合い、シオンのロングソードを止める。
「ジャマァ……スルナヨ。」
「どうしたんだよシオン!正気を取り戻せよ!なぁ!」
嵐のようにグランに襲いかかるシオン。
その様子を大男はただ、笑いながら見ていた……。
一一一一一一
「…………俺は何を……。」
「いいものを見せて貰ったぜ、息子よ。」
「……?!」
「お……にいちゃ…………ん」
「あ、あぁ……」
正気を取り戻したシオンが最初に見たのは服を引き裂かれ、赤い血と、白い液体にまみれ、恐怖と絶望の表情を浮かべて死に絶えたユーリ。
「だ……誰が…………ユーリを……。」
「お前だぜ?」
大男はニタニタ笑いながらシオンに残酷な事実を述べる。
「お……れが……?ユーリ…………を?」
「あぁ、素晴らしかったよ……てめぇが妹を「やめろ!!」……ククッ。」
「俺はやってない……俺はユーリをこんな目に……クソっクソっ……てめぇか!てめぇらかぁ?!」
「じゃあよぉ……てめぇの兄貴に聞きなよ。誰がやったかをなぁ……クハハッ!」
「…………けも……の。」
「ば……け…………の。」
「化物め……」
声の聞こえてきた方を見ると、血だらけで、地面に倒れ込み、憎悪の感情を向けているグランがいた。
「兄さん……?何を言ってるんだ?俺は……化物じゃ……「化物がぁぁぁぁぁ!!!」ひぃ……」
「違う……違う……俺は人間だ……俺は「諦めろよ。てめぇは俺と同じ、血が、化物の血が流れてるんだよ。クハハッ!最高だぜぇ、息子よ。憎悪に、絶望に染まったてめぇは実に最高だったよ。」ちがぁぁう!!!」
違う違う違う違う違うちがうちがうちがうチガウチガウチガウチガウ!!!
俺は人間だ!人間だ!にんげんだ!にんげんだ!ニンゲンダ!ニンゲンダ!!
バケモノジャナイ!バケモノジャナイ!バケモノジャナイィィィ!!!!
シオンは半狂乱になってグランに剣を刺す。ただひたすらに切りつけ、刺し、ついに、グランは息絶えた。
「ハァハァ……」
「まさしく化物の姿じゃないか。サイコウダナ。息子よ。」
「もっと絶望に染まれ、憎しみに染まれ、俺を楽しませろ!クハハッ!」
「………………。」
「おいおい、もう終わりかぁ?ならよぉ今日はもう帰るからよぉ、次に会う時は楽しみにしてるぜぇ?息子よ、次はどんな化物の姿を見せてくれるかな?クハハッ!」
「あー、楽しかった♪ほんっと、人間って脆くて面白いね!とーりょーさーん!帰るよ~♪」
「は、はいぃ……クラウン様、ジョーカー様!……あ、あのぉ?あっしの部下やゴブリンはどうなさいますか?」
「ん~?そんなのほっときなよ。とーりょーさんだけついてくればいいよっ!それ以外は処分でもなんでもてきとーにしといて~。」
「は、はぃぃ!」
村を立ち去る大男と宙に浮く少年と盗賊の頭領。
「ッッッァァァァァァ!!!!!」
家族を失い、化物の血を目覚めさせた少年の悲痛な叫びは異形のゴブリンの鳴き声、盗賊達の狂った笑い声、不幸にもまだ死ぬことの出来なかった村人達の悲鳴や嬌声に飲み込まれ消えていった……。
結界に守られた村人達は畑を耕し、汗水流してたくましく生きていた。
今まで大きな飢饉も無く、この平和がいつまでも続くと信じて疑わない村人達は今日も笑顔で溢れ、労働に励んでいた。
「ふぅ……風が心地いいな…………」
村から少し離れた丘の上、その丘の上にある大きな木の下で寝転がり、くつろぐ少年もまたこの平和が崩れようなど一切考えていなかった。
少年がくつろいでいると遠くから二つの影がこちらに来るのが見えた。
「やっぱりここにいた~!お兄ちゃん、またサボってる!グラ兄やルル姉、お父さん達に怒られるよ!」
丘を駆け上がってきて、息を切らしながらもぷりぷりと怒っているのは少年の妹、名をユーリという。
「ユーリの言う通りだわ、サボってるとこわーいルル姉に叱られるわよ。」
ニコニコ笑って、のんびりした口調でユーリと同じようなことを言うのは少年の姉、名をミラと言う。
「ん?あー、いいのいいの。俺は剣の修行をしてたんだからさ。」
木の下で寝転がってた少年~名をシオンという~は自分の脇に置いていたロングソードをユーリとミラに見せる。
「もう!それがサボっていい理由になると思うの?」
「いやいや、グラン兄さんだって俺くらいの時は仕事をサボって剣の修行に明け暮れてたんだ。俺はダメだなんて言わせねぇぜ。」
「それでも!せめて剣の修行するなら私に言ってよ!」
「いやぁ、剣の修行見たってつまらないだろ?それに俺についてきたら怒られちまうぞ?」
「…………別にお兄ちゃんと一緒にいられるならいいもん。」
「はっはっはっ!ユーリは可愛いなぁ!」
がしがしと乱雑に、しかし痛くは無いようにシオンはユーリの頭を撫でる。
「お兄ちゃん!恥ずかしいってば!」
ユーリは顔を赤くしてすっとシオンから離れる。
「はぁーい、二人だけでいちゃつかないで私も混ぜなさいよ~!」
突然、シオン後ろから抱きつき首元をぺろりと舐めたミラに今度はシオンが顔を赤くして慌てて離れる。
「ちょ、ミラ姉!その癖直しせよ!くすぐったいんだけど!」
「あら?ごめんね、ふふふ。」
全く反省も直す気も感じられない姉の返事にはぁとため息をつくシオン。
「じゃ、私は先に戻っておくわね~。ユーリの事頼んだわよ~。」
「あ、俺も戻るわ!」
「えー、せっかくだから遊んで行こうよ~!お父さん達には一緒に怒られてあげるから!ねっ?」
「はいはい、りょーかいっと。」
可愛い妹の頼みを断れるわけもなく、シオンはユーリと遊ぶ約束をする。
それからしばらくユーリと遊び、日が暮れて来た時、シオンはロングソード腰に下げ、ユーリと手を繋いで村へ戻ろうとした。すると、ふと村の方が騒がしい事に気がついた。
「あっれ?どうしたんだろう?ユーリ、ちょっと急ぐぞ。」
「わ、わかった!」
「賊だ!女子供を早く避難させろ!」
村に着くと、皆が武器を持ち、慌ただしく動いていた。
シオンは大剣を背負った父、魔法を使うための補助として使われる杖を持った母、ロングソードを持った兄と母と同じく杖を持った姉の姿を見つける。
「父さん!賊だって?!」
「シオン!ユーリ!良かった。無事だったか!いいか、お前達は早く避難しろ。」
「お、俺だって戦えるよ!」
シオンは腰に下げたロングソードを指差して言う。
「いや、まだだめだ。お前を戦わせるのは危険だ。」
「父さんなんで?!俺だって村のために……」
「お前はユーリを守れ!いいな?お前には守るべきものがあるだろう!」
「お、お兄ちゃん……」
「ユーリ……」
「安心しろ、父さんや母さん。グランにルル、ミラだっているんだ。お前だって父さん達の強さ、特にミラの強さは知ってるだろう?」
「……わかった。」
シオンがユーリを連れて避難しようとしたその時。
「ひゃっはー!殺せぇ!」
盗賊達がついに柵を突破し、村に殴り込んできた。その目は狂気を宿しており、理性なんてものは存在していなかった。
「ッッ!シオン!ユーリ!逃げろ!」
シオンの父親は大剣を抜き放ち盗賊に立ち向かっていった。
一一一一一一一一
盗賊の頭領は焦っていた。
「おいおい、あいつら何やってんだ……まだ村のやつらを潰せてねぇのか。」
全ての盗賊が瞳に狂気を宿し、狂ったように突撃するなか頭領だけはその目に理性を宿していた。しかし、その瞳も多くは恐怖、焦りといった感情に支配され、冷や汗を垂れ流していた。
「ねぇねぇ、とーりょーさん!まだ終わんないの?」
頭領の後ろから急に話しかけてきた楽しげな少年の声。頭領が振り向くとそこにはぷかぷかと宙に浮かび、無邪気な表情を浮かべる少年がいた。
「へ、へい。クラウン様。まだ終わっておりません……村のやつらの抵抗が激しく…………」
盗賊の頭領は声が震えるのを必死で抑えながら答えた。
「ふぅーん。そっかぁ。ならさ!ジャック!もういいよね?あいつらで蹂躙しちゃおうよ!」
少年が振り向きながら話しかけるとそこには耳の尖った大男がいた。その男は到底人間では持てないような大剣を背負い、残虐な笑みを浮かべながら歩いてきた。
耳の尖った男といってもエルフのような存在ではない。よく見ると頭には2本の角があり、その角がエルフで無いという事を主張していた。
「ああ、この人間の部下は使えねぇみたいだからな。奴らを投入しろ。」
「おっけー!早速行っちゃえ!」
その掛け声と共に姿を表した異形。
それは、ゴブリンと呼ばれる魔物であった。しかし、その風貌はただのゴブリンではない。まるで、一匹一匹が巨大な鬼のように立派な身体を持ち、禍々しい雰囲気を醸し出していたのだった。
グルァァァァ
ゴブリン達は村に向かい駆け出す。その様子をクラウンと呼ばれた少年とジャックと呼ばれた大男は満足げに、盗賊の頭領は恐ろしさに震えながら眺めるのだった。
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当初は賊を押し返せていた村は異形のゴブリン達が姿を表した瞬間、地獄絵図と化した。
「いや、やめて……こないで!いやぁぁぁぁ!」
「ひゃっはー!殺せ!殺せぇ!女は犯せぇ!俺らの天下だ!ハッハッー!」
ある者は盗賊に追われ、捕まり慰みものになり……
グルァァァァ!!
「うわ、離せ!おらはまだ死にたくっ……」
グシャ
またある者は異形のゴブリンに頭を潰された。
あちこちで怒号と悲鳴が響く。
やめろ!俺は女じゃな……むぐ?!
あ、あの怪物、男でも慰みものにするのか……?あ、あれはなんだ?!ゴブリンなのか?!あんなゴブリンみたこと……うぎゃ!
ああ、この血だ俺達ゃこの血を求めてた!殺せぇ!
ぬわぁぁぁぁ!!
グルルルル……
やめろ!娘だけは……娘だけは……
へへ、上玉じゃねーか!てめぇら捕まえろぉ!
グルァァァァ!ウギャギャ!
もうやめて……私はもう……
まだたんねぇよぉ!しゃぶれやおらァァ!
へへ、後ろは俺が貰うぜぇ!
ぎゃはは!あのおっさんゴブリンに掘られてらぁ!ぎゃはははは!
おいおい、あの女はゴブリンにやられて壊れちまったぜ。俺らの分はなくなっちまうかぁ?ひゃははは!
そして、その地獄絵図を前に一人の神父はただ、混乱していた。
「盗賊ならまだしもなぜ、ゴブリンがこの地に?!結界はどうしたのだ?」
次々と増える異形のゴブリンをなんとかしようと神父は盗賊やゴブリンをメイスで殴り倒しながら結界を張っていた祠がある村の端を目指す。
「やはり、やはり祠が壊されている……。」
神父は結界の再設置が出来ないかと試みるが祠の損傷がひどく、神父の力だけでは結界を張り直す事は出来なかった。
「いったい何者が……?盗賊か?いや、盗賊程度ではこの祠自体に張ってある結界を突破は出来ないはずだ…………。」
「ふふふ、誰がやったかを知る必要なんてないわ。神父さん、さようなら。」
「?!何者……ガハッ……。」
神父は振り返りその言葉を最後まで言う事は無く、槍に貫かれ絶命した。
倒れゆく神父が最後に見たのは、槍を持つ、黒いドレスに身を包んだ女性だった。
一一一一一一
「くそっ、くそっなんだよこれ……」
「お兄ちゃん……怖いよ……」
「大丈夫だ、ここにいたら……父さん達が……きっと……大丈夫だ……」
シオン達は家の地下に隠れてやり過ごしていた。
グギャ!グギャ!
すると、シオン達の耳にゴブリンの鳴き声迫ってくる。
「へへへ、このゴブリン……こっちに反応してるぜぇ?まだ獲物がいるかもなぁ!」
「だなぁ!行くぜ!相棒!」
「こ、こうなったら……。ユーリ、ここで待ってろ!」
覚悟を決めたシオンは階段を駆け上がり、ロングソードを抜き放ち、今まさに家に入ろうとしていた盗賊に切りかかる。
「あぁん?」
ゴブリンと盗賊達ははお互いに狂気を孕んだ目を交わしあい、同時にシオンに襲いかかる。
ゴブリンと盗賊達は初めて組むにも関わらず三位一体となり苛烈な攻撃を繰り出す。
しかし、シオンはその攻撃すら掻い潜り、まず、異形のゴブリンの首を飛ばす。
「このガキ!おもしれぇ!うひゃひゃ!」
二人の盗賊は怯むことなく剣を構え、狂った笑いを上げながら突撃する。
シオンはすぐに後ろに下がり、傍にあった椅子を持ち上げ、投げつける。
「うぉ?」
椅子が当たった盗賊は立ち止まる。その後ろから来ていた盗賊はその立ち止まった盗賊を剣で切り捨て更にシオンとの距離を詰めようとする……が既に目の前にシオンの姿は無かった。
「あぁん?」
盗賊が首を傾げた瞬間、その首は胴と離れ、落ちていく。
「ハァハァハァ……」
シオンは息を荒らげながら座り込む。
「お兄ちゃん!大丈夫?」
シオンの隣にはいつのまにかユーリがいた。
「こら、ユーリ。待ってろと言っただろ。」
まあ、来てしまったものはしょうがないと考え、ユーリに早くここから逃げるぞと言って立ち上がろうとした瞬間。
目の前に大男が立ちはだかる。
「逃げる必要はないぞ。我が息子よ。」
「……なんだお前は…………」
「クハハッ!父の顔を忘れるなんて寂しいじゃあないか!まあ、いい。お前も見るといい。この景色を。素晴らしいだろう?人の醜さ、人の弱さ、人の残酷さ、いろんなものが見れる。面白い、面白いなぁ人間とは!なぁ?お前も思うだろう?」
シオンは妹とともに大男に外に放り出された。そして、目に入った光景に思わず目を覆い、ユーリは恐ろしさのあまり気を失ってしまった。
既に抵抗する者は無く、ただ、悲鳴を、ただ、泣き声を上げながら盗賊や異形のゴブリンになされるがままになっている村人達。
辺りには赤と白の液体が混じり合い、言葉に出来ない臭いが立ちこめていた。
「息子よ、素晴らしいだ「俺はお前の息子なんかじゃない……」……ほう?」
「俺はお前みたいな非道の怪物の息子じゃない……俺の父さんは立派で……強くて……お前なんかとは比べ物にならな「お前の言う父とはアレの事か?」」
大男が指さした方向にはこの空間には似合わないほど無邪気に笑う宙に浮く少年がいた。
その少年の指先から黒い糸が伸び、その糸はシオンの父へと繋がり父は少年の思うがままに動かされていた。
「アハハっ!ねぇ?どんな気持ち?ねぇ?どんな気持ちなのさぁ?自分の娘に汚ったないモノを咥えさせてさぁ!自分は気持ちよくなってさぁ!どんな気持ちなのぉ?答えてよぉ!ねぇ?!アハハっ!面白いねぇ!人間ってほんっと面白い!!」
「むぐっ、んんー!!!んっ!」
「すまない……すまない……くそぉ、誰か……誰か俺を止めてくれ……誰か俺を俺を止めてくれぇ!すまない……すまない……この黒い糸を誰か……くそぉぉ!」
「んんんんっっっー!!」
「はぁ……はぁ……ルル……すまない……父さんは…………」
シオンは無様に父が姉に対して事に及ばされてるのを見ることしか出来なかった。
「クハハッ!アレのどこが立派な父だろうなァ?そう思わないかぁ?」
「嘘だ……父さんが…………嘘だ………………母さんは?!母さんはどこに?!」
「アレだよ。クヒヒッ……」
シオンはそちらに目を向けた瞬間、目をそらした。
そこには生気のない、死んだ目をした母とそれを盗賊と異形のゴブリンが回していた光景。
シオンの心はズタズタだった。
何もかもが信じられない光景。
シオンの中を絶望、そして、それ以上に憎しみの感情が支配し始めていた。
「おお、いいぞ息子よ。絶望しろ!恨め!憎め!負の感情が高まれば高まるほどお前の血は目覚める!俺と同じ、血がな!」
「ふざけるな……ふざけるなよ…………」
「クハハッ!その目、いいぞ……正しく化物だ……俺と同じ、いやそれ以上かも知れんなぁ!」
「俺は……俺は…………」
「シオン?!ユーリ?!無事なのか?!」
突如響くシオンの兄、グランの声、グランは血だらけの身体を引きずりながらロングソードを構え、近づいてくる。
「シオン、ユーリ……今助けるぞ…………お前達だけでも……このデカブツを倒してお前達だけでも……」
「ッッァァァァァァ?!!!?!」
シオンから人間のものとは思えない異様な叫び声が上がる。
「……シオン?」
「クハハッ!きたぞ!よくやったぁ!息子よ!覚醒だ!血の覚醒ダァ!」
シオンの叫び声に押され、呆然とするグラン。興奮し、目を輝かせる大男。
叫び終えたシオンはすっと立ち上がる。
シオンの本来黒かった瞳が赤く染まり、周りの盗賊達と同様、狂気に彩られていた。
「くひゃひゃ……あひゃひゃひゃ!うひゃひゃひゃ!」
シオンは笑いながら手に持つロングソードを気を失っているユーリに振り下ろす。
「……!!やめろっ!シオン!!」
間一髪、グランのロングソードが間に合い、シオンのロングソードを止める。
「ジャマァ……スルナヨ。」
「どうしたんだよシオン!正気を取り戻せよ!なぁ!」
嵐のようにグランに襲いかかるシオン。
その様子を大男はただ、笑いながら見ていた……。
一一一一一一
「…………俺は何を……。」
「いいものを見せて貰ったぜ、息子よ。」
「……?!」
「お……にいちゃ…………ん」
「あ、あぁ……」
正気を取り戻したシオンが最初に見たのは服を引き裂かれ、赤い血と、白い液体にまみれ、恐怖と絶望の表情を浮かべて死に絶えたユーリ。
「だ……誰が…………ユーリを……。」
「お前だぜ?」
大男はニタニタ笑いながらシオンに残酷な事実を述べる。
「お……れが……?ユーリ…………を?」
「あぁ、素晴らしかったよ……てめぇが妹を「やめろ!!」……ククッ。」
「俺はやってない……俺はユーリをこんな目に……クソっクソっ……てめぇか!てめぇらかぁ?!」
「じゃあよぉ……てめぇの兄貴に聞きなよ。誰がやったかをなぁ……クハハッ!」
「…………けも……の。」
「ば……け…………の。」
「化物め……」
声の聞こえてきた方を見ると、血だらけで、地面に倒れ込み、憎悪の感情を向けているグランがいた。
「兄さん……?何を言ってるんだ?俺は……化物じゃ……「化物がぁぁぁぁぁ!!!」ひぃ……」
「違う……違う……俺は人間だ……俺は「諦めろよ。てめぇは俺と同じ、血が、化物の血が流れてるんだよ。クハハッ!最高だぜぇ、息子よ。憎悪に、絶望に染まったてめぇは実に最高だったよ。」ちがぁぁう!!!」
違う違う違う違う違うちがうちがうちがうチガウチガウチガウチガウ!!!
俺は人間だ!人間だ!にんげんだ!にんげんだ!ニンゲンダ!ニンゲンダ!!
バケモノジャナイ!バケモノジャナイ!バケモノジャナイィィィ!!!!
シオンは半狂乱になってグランに剣を刺す。ただひたすらに切りつけ、刺し、ついに、グランは息絶えた。
「ハァハァ……」
「まさしく化物の姿じゃないか。サイコウダナ。息子よ。」
「もっと絶望に染まれ、憎しみに染まれ、俺を楽しませろ!クハハッ!」
「………………。」
「おいおい、もう終わりかぁ?ならよぉ今日はもう帰るからよぉ、次に会う時は楽しみにしてるぜぇ?息子よ、次はどんな化物の姿を見せてくれるかな?クハハッ!」
「あー、楽しかった♪ほんっと、人間って脆くて面白いね!とーりょーさーん!帰るよ~♪」
「は、はいぃ……クラウン様、ジョーカー様!……あ、あのぉ?あっしの部下やゴブリンはどうなさいますか?」
「ん~?そんなのほっときなよ。とーりょーさんだけついてくればいいよっ!それ以外は処分でもなんでもてきとーにしといて~。」
「は、はぃぃ!」
村を立ち去る大男と宙に浮く少年と盗賊の頭領。
「ッッッァァァァァァ!!!!!」
家族を失い、化物の血を目覚めさせた少年の悲痛な叫びは異形のゴブリンの鳴き声、盗賊達の狂った笑い声、不幸にもまだ死ぬことの出来なかった村人達の悲鳴や嬌声に飲み込まれ消えていった……。
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