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第二幕 江戸の生活をシよう!
第四十一話 真夜中の訪問者その弐
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「それよりも次の春画、どうすっかな。殿様の機嫌損ねるようなこと言っちまったからな、そこそこいいやつを描かねぇとやばいかも」
あぐらをかいて、思いつく限りのエロジャンルを絞っていく。男一人に大人数の女が群がるハーレムもの……って、普通すぎるか。えぐい触手プレイ……って実は江戸時代には葛飾北斎が春画で描いているんだよな。俺が描いたところで、触手の春画が実在していたら真新しさがない。
「ダメだ! 頭がぐちゃぐちゃしてきた! もう寝る!」
こんな状態でいい春画ネタが浮かぶはずもない。ペラペラの布団を敷けば、あっという間に就寝スタイル。横になれば、身体に疲労のどっと負荷がかかる。手足が鉛のように重い。どうりでネタが思い浮かばないはず。こうして俺は一呼吸も置かずに泥のように眠ってしまった。
――人も明かりもない、静けさしか残らない江戸の夜。ひどく疲れたので朝まで爆睡できるだろうと思っていたが、この日は胸の辺りがやけに重苦しく不愉快な目覚めをしてしまった。といっても、瞼は閉じたまま。きっとすぐに眠くなるに決まっている。高を括っても息苦しさは増すばかり。呼吸するのさえ危うい。
これ、結構まずいやつじゃね? とうとう江戸の食べ物で胃腸をやらかしてしまったのか。悪い病気だったらどうすれば……。いいや、ここは一旦落ち着くべきだ。胃液が逆流しただけの場合もある。寝返りすれば治ったりして。
「スグル様」
ん? 今、千代姫の声が……なわけないよな! なんせここはオンボロ長屋の一番端にある家だ。千代姫みたいな立派なお方がこんな家に来るわけがない。体調不良の幻聴にしても好きな人の呼ぶ声が聞けるなんて幸せなことだ。さてさて、もっかい寝るか。
「スグル様」
……また聞こえた。もう空耳なんかではない。絶対にいる。それも俺の体の上に。息苦しさの原因はこれか? しかしなぜここにいる? どうしてこんな夜更けに? というかお一人で!? いろいろ疑問があるけれど、もぞもぞと動く千代姫らしき物体は胸からお腹へ、お腹から下腹部へ。そして下腹部から股間へ――
「ハッ!」
「こんばんは、スグル様」
目ん玉が飛び出さんばかりにかっぴらけば、キャピッと意地悪そうにはにかむ千代姫が布団にまたがっていた。夢ではない。実在している。
「ふふ、やっと起きました。本当はもう少しくすぐろうと思っていたんです」
「あ~っ、このぉ、やりましたね~……じゃない! なんでいるんです!? 今バリバリ深夜帯ですけどまさか一人で来ました!?」
「はい、一人でこっそりと来ました。城の者は誰も知りません」
「はああ!!?」
こんなことが知られたら春画師取り消しになって今までの努力が全部水の泡。俺はゾッとしながら慌てふためいているのに、千代姫は自分のした行いがどれほど大きいか分かっておらず、呑気に部屋の中を探索。
あぐらをかいて、思いつく限りのエロジャンルを絞っていく。男一人に大人数の女が群がるハーレムもの……って、普通すぎるか。えぐい触手プレイ……って実は江戸時代には葛飾北斎が春画で描いているんだよな。俺が描いたところで、触手の春画が実在していたら真新しさがない。
「ダメだ! 頭がぐちゃぐちゃしてきた! もう寝る!」
こんな状態でいい春画ネタが浮かぶはずもない。ペラペラの布団を敷けば、あっという間に就寝スタイル。横になれば、身体に疲労のどっと負荷がかかる。手足が鉛のように重い。どうりでネタが思い浮かばないはず。こうして俺は一呼吸も置かずに泥のように眠ってしまった。
――人も明かりもない、静けさしか残らない江戸の夜。ひどく疲れたので朝まで爆睡できるだろうと思っていたが、この日は胸の辺りがやけに重苦しく不愉快な目覚めをしてしまった。といっても、瞼は閉じたまま。きっとすぐに眠くなるに決まっている。高を括っても息苦しさは増すばかり。呼吸するのさえ危うい。
これ、結構まずいやつじゃね? とうとう江戸の食べ物で胃腸をやらかしてしまったのか。悪い病気だったらどうすれば……。いいや、ここは一旦落ち着くべきだ。胃液が逆流しただけの場合もある。寝返りすれば治ったりして。
「スグル様」
ん? 今、千代姫の声が……なわけないよな! なんせここはオンボロ長屋の一番端にある家だ。千代姫みたいな立派なお方がこんな家に来るわけがない。体調不良の幻聴にしても好きな人の呼ぶ声が聞けるなんて幸せなことだ。さてさて、もっかい寝るか。
「スグル様」
……また聞こえた。もう空耳なんかではない。絶対にいる。それも俺の体の上に。息苦しさの原因はこれか? しかしなぜここにいる? どうしてこんな夜更けに? というかお一人で!? いろいろ疑問があるけれど、もぞもぞと動く千代姫らしき物体は胸からお腹へ、お腹から下腹部へ。そして下腹部から股間へ――
「ハッ!」
「こんばんは、スグル様」
目ん玉が飛び出さんばかりにかっぴらけば、キャピッと意地悪そうにはにかむ千代姫が布団にまたがっていた。夢ではない。実在している。
「ふふ、やっと起きました。本当はもう少しくすぐろうと思っていたんです」
「あ~っ、このぉ、やりましたね~……じゃない! なんでいるんです!? 今バリバリ深夜帯ですけどまさか一人で来ました!?」
「はい、一人でこっそりと来ました。城の者は誰も知りません」
「はああ!!?」
こんなことが知られたら春画師取り消しになって今までの努力が全部水の泡。俺はゾッとしながら慌てふためいているのに、千代姫は自分のした行いがどれほど大きいか分かっておらず、呑気に部屋の中を探索。
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