エロ絵師、江戸に飛ばされて春画描くってよ。

マンボウ

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第二幕 江戸の生活をシよう!

第三十九話 Do you know シュンガ?

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「そういえば、ミツを見かけませんでしたか?」

 ギクッ。あいつ、まだ行方不明なのかよ。

「いや、見ていませんね。どうかされたんですか?」

「先ほど屋根の上を駆け回るミツがいたので声をかけたんですが、狂気じみた薄笑いをして去っていったんです。あのミツが私の存在にも気づかないなんておかしいんです。きっとなにかあったんじゃないのかと思いまして……」

 ご名答、大ありですとも。千代姫は異様なミツがよほど不気味に感じたらしく、手首をさすっては鳥肌を沈めていた。ミツは自らこんなことがあったと千代姫に報告はしないだろう。

 しかし、一晩で縛り上げて失禁させたことは紛れもない事実。相手が記憶喪失にならない限り、記憶にはずーっと残って、関係性が崩れるにはいかなくとも、ギクシャクはしてしまうかもしれない。春画のことさえ知らない彼女だ。俺も殿様との契約内容を知られたくはないし、知られるのが怖い。

「スグル様、誰にも話さないので教えてほしいことがあります」

「お、なんですか?」

「シュンガとはどういった意味なのですか? あとそのシュンガとスグル様、そして父上は何か深い関係がありますよね?

「…………っ!?」

 息を飲み込みすぎて窒息しそうになった。

 爺やたちは必死に、なんとしても春画と千代姫を近寄らせないようにしている。。馬鹿正直に教えたら、半殺しの刑に等しいだろう。なのでこの質問にはNOと答えるべき。

 ……や、待てよ?だがもし、実は春画という意味や殿様との関係を承知した上での言葉だとしたら? いいや、漫画の読みすぎだ。純情無垢の千代姫が心理戦を持ち込むはずがないっ! そんなことをしてなんの意味がある。本当に知らないだけだ。

 ほうら見てごらん、あの子の穢れきっていない……って、あれ!?

「あなたまで、嘘をおつきになりますか?」

 一人で考え込む間に俺の胸元にぬるりと忍び寄っていた。キス――されそうなほど、顔と顔が近い。吸っては吐いた生温かい息が顎辺りにダイレクトにかかる。

 この子は、千代姫なのか……? 違う、いつもと。周りを騒がせるお転婆な面でもなければ、おしとやかさを周囲にふりまく面も一切ない。恐怖、恋の高鳴り、困惑。それぞれの心情がシャッフルしては、鼓動のリズムを狂わす。

「そんなこと、は……」

「スグル様、正直に生きてくださいね」

 なんだなんだ!? 話の腰を折ってまでそう言われちゃもう、こっちだってどう対応すりゃいいのか分かんねっての――!
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