エロ絵師、江戸に飛ばされて春画描くってよ。

マンボウ

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第二幕 江戸の生活をシよう!

第三十一話 筆か、棒以外か

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 これで半分は完成。次はミツを座らせてから両手を後ろに回して、足にも拘束していく。縄の長さはまだまだ余裕がある。二重に巻き付けてもよかったのかもしれない。

「ほい、じゃあ次は正座してくれ。そこからまた縛るぞ~!」

 深夜のテンションもあるので感情が高揚しまくった挙句、調子に乗ってカウボーイみたく縄をびゅんびゅんと振り回す。

「え……?」

「座ってくれって言ったんだ」

「貴様……なに、を言っている……? 私はもう縛られているぞ……?」

「おまっ、おいおい。話をちゃんと聞いていなかったのか? 俺はお前を座ったまま緊縛するって絵でも言葉でも説明しただろ」

「もっ、もう十分だっ!」

「俺は不十分だ!」

「そんな……っ」

 性的な娯楽も快楽も無縁の生活のくノ一生活だったのだろう。内股気味にして無意味な足踏み動作の往復。そんな彼女に気丈な構えは跡形もない。目を見開いてぼんやり。いいぞ、すけべったらしい! さらに心を鬼にして、やっていこう!

「そう言われてもお前が緊縛されない限り、俺の作品は完成しない。ほら座った座った」

 夜が明けるまでどれほど時間が残っているのやら。時間を逆算してもゆとりはあまりない。早々と作業を進めるため、ミツの両肩をガッチリと掴みながらそのまま下へ座らせると乱暴とまではいかないが、半強制的そして丁寧に縛り上げていく。ネット記事のページで読んだごくわずかな記憶を辿り、相手の顔色も確認して。

 ――そしてとうとう、時は来た。

「できたっ!」

 見ているすぐ前にて、ボロボロの畳の上に亀甲縛りを纏って縛られたミツが一人の人間ではなく、ひとつの肉化と存在していた。両手を後ろに回して首から縄をかけて、二の腕から手首まで厳重に縛り上げる、小手高手と呼ばれる縛りを取り入れて。それは足も同じく、正座をして重なるふくらはぎと太ももに縄を通して拘束したのでどうあがいても立ち上がるのは不可能。そんなミツはというと、呼吸音でさえ唇から静かに出そうと赤く染めながら堪えている。こみ上げてくる快楽、それかマゾヒズムを我慢しては、心なしか近くの行灯の火がいやらしく歪む。

 やべぇ……これは……めっちゃエッッッッッッッ!

「はは、どうだミツ? 縛られてる気分は結構いいだろ?」

 ドキドキと血流が活発に流れていく。そこでサディズムっぽく問いかけをしてみた。

「どうって……別に苦しいだけ……それよりも、これはなんなのだ!?」

「これって?」

「この下にある結んである玉のことだ! なぜここにこんなものがある!?」

「どれどれ……」

 ミツが訴えるこれをやらを確認。スパッツの股近くに属する縄の結び目のことだった。話を深く聞けば結んだ目が妙なところに当たって嫌だ気持ち悪いと底抜け騒ぎ。これはこれは……まあ、女性の性感帯って意味も知らなさそうなので、アンサーはなるべく適当に返そう。

「でぇじょうぶだ! それはそこにあって正解なんだよ! じゃ、俺はお前を見て絵を描いてくから」

「待てウジ虫、さっさとこの玉状の縄を――ぎゃっ!」

 そういつものように突っかかってきても、緊縛されている身なので自由に動くことはできない。こてんと倒れたかと思えば、次はビクビクと痙攣して泣き面と泣き言を吐き出してきた。

「うぅっ、転んだせいで縄が食い込んで……ダメだウジ虫! 私を起こしてくれっ!」

 皮肉なことに例の結び目が股の一番敏感な部位に直撃。本人の意思とは関係なく起こる淫らな発作は彼女をよりパニックに追いやっていく。

「ウジ虫、どうにかしてくれ……っ!」

 快楽に溺れる女子を見たことがなければ、異性と一夜も経験したことのない藤山スグル十八歳。彼は今、春画を描くための筆を持つか、それとも己の棒を持つか真剣に悩んでいた。
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