27 / 51
第二幕 江戸の生活をシよう!
第二十六話 真夜中の訪問者
しおりを挟む
――それから三十分後。
混浴といっても、お風呂に罪はない。隣に裸体の女性がいようとも、全戸左右に囲まれても湯舟の中で座禅をして煩悩を抹殺。股間に血液が集中するのを必死に止める努力の甲斐あって、今回は初めてムラムラせず混浴を乗り切ることに成功したのだ。
「いい湯だったぁ~!」
折りたたまれたタオルを頭上に乗せ、ほっかほかの湯気が上がったのをキープして我が家へと無事に帰還。しかし癒しの空間からのオンボロ長屋は、天国から地獄へ突き落された気分だ。カビというのか、畳の腐りかけのなんともいえない臭いで充満している。
「さてと、どうするかな」
いつもならこれから夕飯を済ませて助六と喋りに行くか、地面にエロイラストを描くか、夜の散歩の三択。携帯やパソコンがなくても一応生きていけるのは意外だったが、今日はそうもいかない。今夜何かあるはず。そうミツに告げられた。だからどこにも行かず、ずっと家にいなければならない。
「仕方ない。暇だけどここは大人しく待ってやるか」
助六からもらった芋を夕食代わりに食べてから、狭い部屋にゴロンと寝そべって気長に待つことにした。最初は部屋を綺麗にしておこうと掃除をしたり、整理整頓をしたり律儀におもてなしをしようかと思いついたりと、ソワソワとまだかまだかと落ち着かず。しかも誰が来るかとも知らされていない。千代姫が来たらどうしようなんて恋する女子中学生みたく身なりを整えて座ったり、立ったりしては一時間、二時間、そして三時間が経っただろうか。時刻は不明。でも深夜なのは確かだ。
「だ・れ・も・こ・ね・ぇ!」
外は虫の音も聞こえてこないほど静かで、すっかり暗闇に覆われており、部屋にロウソクを立てても、そんなものはわずかな明かり。手先に何があるのかやっと。長屋の住民も全員が床に就いて、目を覚ましているのは自分だけのような気がした。
「なにやってんだよ城の奴らはよ! いつどこに誰が来るかの報連相をしっかりしろっての! まさかドタキャンか? あーもークソ! 時間の無駄じゃねぇか! あー、こんなことになるなら、外に出てエロ絵でも思う存分描いときゃよかった」
地団駄を踏んでは力尽きたように、そのまま真後ろへと倒れこんでいく。畳が軋む衝撃音が散らばり、天井からパラパラと待ってくる謎の木くずたちを顔面でキャッチしながら。それでも掃うことはしなかった。そんなことよりも描きたい、エロを描きたい気持ちでいっぱいになっていると思っていたときには、自然と右の人差し指を腕ごと上へ伸ばして空中にラフ画を描いていた。
「はは、どうするかな。腰回りを今日は描きたいから上に乗馬するような体勢にして、表情は苦しんでるよりも喜んでいるような感じで……」
そうだ。俺は想像だとしても、道具を持って描いてなくとも、どんな時代で生きようとも、エロを描くのがたまらなく好きだ。大好きだ。
つい先ほどまでの腹立たしい感情はひとかけらもなくなり、体中に笑いが溢れんばかりの楽しさに満ちていた。
「待たせたな」
そんなところへ突然ミツが澄ました話し声と共に、降って湧いたように現れたのである。忍びらしく戸も開かずのご登場。それと寝転んでいる俺を跨って見下しの前斜めポーズになって現れるのはもうお約束。
だからこそ、ここで事件が発生した。ミツが来るなんて当然知らぬ俺は真上へ向かって指を突き出していたら、ちょうどその人差し指が現れたミツの右胸の中心部にぶっ刺さったのである。感触的にすぐに理解した。俺の指とミツの乳首がピンポイントで、ETのトモダチさながら繋がったことに。
混浴といっても、お風呂に罪はない。隣に裸体の女性がいようとも、全戸左右に囲まれても湯舟の中で座禅をして煩悩を抹殺。股間に血液が集中するのを必死に止める努力の甲斐あって、今回は初めてムラムラせず混浴を乗り切ることに成功したのだ。
「いい湯だったぁ~!」
折りたたまれたタオルを頭上に乗せ、ほっかほかの湯気が上がったのをキープして我が家へと無事に帰還。しかし癒しの空間からのオンボロ長屋は、天国から地獄へ突き落された気分だ。カビというのか、畳の腐りかけのなんともいえない臭いで充満している。
「さてと、どうするかな」
いつもならこれから夕飯を済ませて助六と喋りに行くか、地面にエロイラストを描くか、夜の散歩の三択。携帯やパソコンがなくても一応生きていけるのは意外だったが、今日はそうもいかない。今夜何かあるはず。そうミツに告げられた。だからどこにも行かず、ずっと家にいなければならない。
「仕方ない。暇だけどここは大人しく待ってやるか」
助六からもらった芋を夕食代わりに食べてから、狭い部屋にゴロンと寝そべって気長に待つことにした。最初は部屋を綺麗にしておこうと掃除をしたり、整理整頓をしたり律儀におもてなしをしようかと思いついたりと、ソワソワとまだかまだかと落ち着かず。しかも誰が来るかとも知らされていない。千代姫が来たらどうしようなんて恋する女子中学生みたく身なりを整えて座ったり、立ったりしては一時間、二時間、そして三時間が経っただろうか。時刻は不明。でも深夜なのは確かだ。
「だ・れ・も・こ・ね・ぇ!」
外は虫の音も聞こえてこないほど静かで、すっかり暗闇に覆われており、部屋にロウソクを立てても、そんなものはわずかな明かり。手先に何があるのかやっと。長屋の住民も全員が床に就いて、目を覚ましているのは自分だけのような気がした。
「なにやってんだよ城の奴らはよ! いつどこに誰が来るかの報連相をしっかりしろっての! まさかドタキャンか? あーもークソ! 時間の無駄じゃねぇか! あー、こんなことになるなら、外に出てエロ絵でも思う存分描いときゃよかった」
地団駄を踏んでは力尽きたように、そのまま真後ろへと倒れこんでいく。畳が軋む衝撃音が散らばり、天井からパラパラと待ってくる謎の木くずたちを顔面でキャッチしながら。それでも掃うことはしなかった。そんなことよりも描きたい、エロを描きたい気持ちでいっぱいになっていると思っていたときには、自然と右の人差し指を腕ごと上へ伸ばして空中にラフ画を描いていた。
「はは、どうするかな。腰回りを今日は描きたいから上に乗馬するような体勢にして、表情は苦しんでるよりも喜んでいるような感じで……」
そうだ。俺は想像だとしても、道具を持って描いてなくとも、どんな時代で生きようとも、エロを描くのがたまらなく好きだ。大好きだ。
つい先ほどまでの腹立たしい感情はひとかけらもなくなり、体中に笑いが溢れんばかりの楽しさに満ちていた。
「待たせたな」
そんなところへ突然ミツが澄ました話し声と共に、降って湧いたように現れたのである。忍びらしく戸も開かずのご登場。それと寝転んでいる俺を跨って見下しの前斜めポーズになって現れるのはもうお約束。
だからこそ、ここで事件が発生した。ミツが来るなんて当然知らぬ俺は真上へ向かって指を突き出していたら、ちょうどその人差し指が現れたミツの右胸の中心部にぶっ刺さったのである。感触的にすぐに理解した。俺の指とミツの乳首がピンポイントで、ETのトモダチさながら繋がったことに。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

夢の中でもう一人のオレに丸投げされたがそこは宇宙生物の撃退に刀が重宝されている平行世界だった
竹井ゴールド
キャラ文芸
オレこと柊(ひいらぎ)誠(まこと)は夢の中でもう一人のオレに泣き付かれて、余りの泣き言にうんざりして同意するとーー
平行世界のオレと入れ替わってしまった。
平行世界は宇宙より外敵宇宙生物、通称、コスモアネモニー(宇宙イソギンチャク)が跋扈する世界で、その対策として日本刀が重宝されており、剣道の実力、今(いま)総司のオレにとってはかなり楽しい世界だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる