エロ絵師、江戸に飛ばされて春画描くってよ。

マンボウ

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第一幕 江戸にイこう!

第十八話 春画はお好きですか?

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 ヒートアップしたハートが意識を取り戻したのは、発言後すぐのこと。視界も体もぼーっとして、平生の心境に戻ってもなお、どんな内容を口走ったのかさえ記憶がたどたどしい。

 そこで左右にいる野次馬たちから「おい聞いたか」「ああ聞いたぞ、春画だ」「春画だってよ」の好き勝手喋り放題からヒントを得て、初めて発言内容を思い出す。パズルのピースみたくはめ込んで完成した主張内容は江戸で春画を描く、春画宣言を申したことに血の気が下半身にサーッと下がっては、羞恥心が強まって今度は体が火照ったりと大忙し。

 興奮で暴走状態だからってなんてことを言ってしまったんだ……。江戸時代に春画があるってだけの浅い知識しかない身で偉そうに宣言までして。っていうかそもそも、江戸で堂々と春画の話をするのはいいのか? もしやタブーだったりとかしないよな!? 周りの反応からして悪くなさげだが、全ての人間が仰天しているのは確認できる。

「シュンガ、とは?」

「ふむ、春画か」

 春画がなにか知らない千代姫と妙に深く頷く殿様を除いて。裁判長の役割でもある殿様は少し吊り上げ気味の眉を平行に落としてポーカーフェイスを和らげただけでなく、顎に手を当てながらブツブツと一人口を動かす。

 そんでもって千代姫は千代姫で、近くにいたミツに春画がどういった意味なのか質問責めを開始。

「シュンガってなにかしら? ねぇミツ、あなた知ってる? なにかまた立派な物なのかしら?」

「さ、さあ!? 私にもさっぱり!」

「そうなの、残念ね。きっと素敵な物なんでしょうね」

「そ、そうかもしれませんネッ!」

「ねぇ、爺や。あなたは……あら、立ったまま気絶している」

「じっ、二郎様も分からないとおっしゃってマスッ、YO!」

 さすがは淫乱忍者、春画を知っているのは嗜みなのか。千代姫に卑猥な思考を植え付けないため全力を尽くして知らない演技をしているが、お前は馬鹿か? ってレベルでバレバレである。

 春画のおかげ? かどうかは不明だが、親子喧嘩が始まる冷え冷えだった空間は、様々な会話が遠くだったり近くだったり平気で飛び交う空間へと一変。

 そんな中で考えるポーズをやめた殿様は、俺の両目にガッチリと支店を捕らえてからこう言った。

「小僧、春画は好きか?」

「え? 好きかというか、本場の春画はまだ見たことが……」

「好きか嫌いか、聞いておる」

「えっ!? あっ、はい! 好きです好きです! そりゃ三度の飯より!」

 そうだった。気が緩んでいたのもあって、まだ生きることが確定したわけじゃない。下手なことは言えない、というより言ったら即辻斬りの崖っぷちに立たされている。今の呑気な回答に気を悪くしたり!? ヒィィ~……お助け……。
 
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