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第一幕 江戸にイこう!
第十六話 公判へ続く
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「いいか千代。お前は神通城の姫であり地位が高いから、そんな強気な意見が言える。江戸ではない違う場所にでも同じようなことをぬかしてみろ。即、命はない。そして女子どもというだけで問答無用で斬りつける輩もいる」
「ですが……」
「とにかく、お前に小僧の今後を決める権利はない」
これが城の頂点に立つ、殿の貫禄。見た目は四十代でも現代の四十代とは全く違う人間的重みが深く感じる。殿様のような圧倒的主導者だからこそ。半人前が発言したところで心に響くこともない。特殊な生い立ち、命懸けの厳しい戦といった多々ある苦行を乗り越えては、さらに先を目指し、運も人望も全て兼ね備えた結果があるからこそ、彼は存在している。……完敗だ。城の平和と娘を思う気持ちは、嘘偽りない本物だった。
もう、ここまでだ。終わりにしようの合図を送ろうと、千代姫の方に顔を向けた。すると歯を食いしばって悔しそうに瞳を潤ませては、涙をこぼさないようにフーッと荒い鼻息を立てては、
「父上ぇ……お願いします……そこをなんとか……」
最後の頼みとばかりに殿様の胸元まで、たたたと近寄っては恋人同士レベルの距離感の密着度に加え、殿様の方へ涙のウルウル光線。しかも背は届かないので頑張って背伸び&江戸時代には名前の存在すらない萌え袖で殿様の羽織りに引っ付き。後ろ姿だけでも、殺人級の愛らしさ。そんなものを見せられたら、己が被告人であることも忘れて、可愛さのあまり身をくねらせて悶絶。
かっ、かわええ……っ! 父親だからとはいえ羨ましすぎる、殿様! あのアングルからの千代姫はかなりの殺傷力に違いない! ああっと、こうしている間にも頑張って背伸びをしてもプルプルの不安定で……あんよがじょ~ず、あんよがじょ~ずっ!
鼻下を伸ばしてはニヤニヤとすれば、さすがに打ち首という恐ろしい文字はかすれていった。今の心境をハッキリするとしたら処刑どうこうより、千代姫が可愛すぎて考えるものも考えられない領域に到達している。
それでも殿様は、まあ~喜怒哀楽がないこと。無のまんまで縋りつく娘をじいっと見ては両肩を無言で掴んで、つま先立っていた両足の踵を地にしっかりと落としていく。
さすがに答えは「NO」か。そこまでされちゃ、為す術もない。けれども十分だ。千代姫には感謝してもしきれない。これから死にゆく未来だとしても、最期に俺を信じてくれる最高の女の子に出会えたのだから。冥途の土産話にはもってこいだ。……あの世で待ってる身内はまだ一人もいないけど。
軽いジョークを交えて一人で微笑みながら、最終的な判決が下るのを待った。今までで一番激しい風が吹いて間もない頃、ついにそのときがやってきた。
「しかし、神通城の殿である私が、どこぞの輩と同じようなことをするべきではない。よって耳を傾ける最後の質問だ。――小僧、お前はこの江戸で何ができる?」
まさかの第二ラウンドの開幕だと――!?
公判へ続く(キートン山田)
「ですが……」
「とにかく、お前に小僧の今後を決める権利はない」
これが城の頂点に立つ、殿の貫禄。見た目は四十代でも現代の四十代とは全く違う人間的重みが深く感じる。殿様のような圧倒的主導者だからこそ。半人前が発言したところで心に響くこともない。特殊な生い立ち、命懸けの厳しい戦といった多々ある苦行を乗り越えては、さらに先を目指し、運も人望も全て兼ね備えた結果があるからこそ、彼は存在している。……完敗だ。城の平和と娘を思う気持ちは、嘘偽りない本物だった。
もう、ここまでだ。終わりにしようの合図を送ろうと、千代姫の方に顔を向けた。すると歯を食いしばって悔しそうに瞳を潤ませては、涙をこぼさないようにフーッと荒い鼻息を立てては、
「父上ぇ……お願いします……そこをなんとか……」
最後の頼みとばかりに殿様の胸元まで、たたたと近寄っては恋人同士レベルの距離感の密着度に加え、殿様の方へ涙のウルウル光線。しかも背は届かないので頑張って背伸び&江戸時代には名前の存在すらない萌え袖で殿様の羽織りに引っ付き。後ろ姿だけでも、殺人級の愛らしさ。そんなものを見せられたら、己が被告人であることも忘れて、可愛さのあまり身をくねらせて悶絶。
かっ、かわええ……っ! 父親だからとはいえ羨ましすぎる、殿様! あのアングルからの千代姫はかなりの殺傷力に違いない! ああっと、こうしている間にも頑張って背伸びをしてもプルプルの不安定で……あんよがじょ~ず、あんよがじょ~ずっ!
鼻下を伸ばしてはニヤニヤとすれば、さすがに打ち首という恐ろしい文字はかすれていった。今の心境をハッキリするとしたら処刑どうこうより、千代姫が可愛すぎて考えるものも考えられない領域に到達している。
それでも殿様は、まあ~喜怒哀楽がないこと。無のまんまで縋りつく娘をじいっと見ては両肩を無言で掴んで、つま先立っていた両足の踵を地にしっかりと落としていく。
さすがに答えは「NO」か。そこまでされちゃ、為す術もない。けれども十分だ。千代姫には感謝してもしきれない。これから死にゆく未来だとしても、最期に俺を信じてくれる最高の女の子に出会えたのだから。冥途の土産話にはもってこいだ。……あの世で待ってる身内はまだ一人もいないけど。
軽いジョークを交えて一人で微笑みながら、最終的な判決が下るのを待った。今までで一番激しい風が吹いて間もない頃、ついにそのときがやってきた。
「しかし、神通城の殿である私が、どこぞの輩と同じようなことをするべきではない。よって耳を傾ける最後の質問だ。――小僧、お前はこの江戸で何ができる?」
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