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第一幕 江戸にイこう!
第十一話 夢ならばどれほどよかったでしょう
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鳥のさえずりが聞こえる。異常に眠くて瞳を閉じたままでいるが、朝が来たことは分かる。掛け布団は寝相ではだけてしまったのか、やや肌寒い。いや、床に寝てしまったのか? 背中がものすっごく痛い。ズキズキというよりズッキーン! ってちょっと動けば矢が刺さる感じ。ソロ活動をした記憶はないんだがなあ……。
しかし今日も朝からバイトを連続で入れている。早いとこ準備をしなくては。あ~、でもあと五分。五分でいい。昨夜は変な夢を見たんだっけ。たしか、江戸に飛ばされて千代姫とかいう千年に一度の超絶可愛い女子と出会ってそれからエロい忍者娘にも出会って――。
「いい加減起きろ!」
「ぶべっ!?」
意図せず後頭部を何者かに思いっきり叩かれてしまい、自動的に大量のよだれを垂らしたまま目を開ける。とすれば、昨日夢で見た忍者娘のミツという女がものすごい鬼の形相で見下しては、またまた大股を開いて立っていた。
くノ一の企画モノ? 俺、こんなエキストラのバイトに応募した記憶あったっけな~? ……ふざけた現実逃避も束の間、俺が寝そべっていたのはペラペラに薄い御座の上。場所は千代姫と出会った広い縁側があり、冒頭の後にも述べた打ち首といった処刑がされそうな場所に粗末に寝転ばされていた。
また離れたところには、爺やと家来が見物客として集まり、今すぐ殺したろかオーラがビンビン。逃げようにも両手足が後ろでギッチギチに縛り上げられているので逃走は絶望的。……夢ならばどれほどよかったでしょう。受け入れることのできない現実がそこには広がって、直視すれば吐き気を催すぐらいだった。
俺、これからどうなるんだ……?
帰る場所もなければ頼る人もない江戸時代。生き残る術はどう考えたって見つからなかった。なんせ江戸には刀があり、戦も普通にある時代。怪しい奴はバッサリと斬る残虐なイメージしかない。恐怖のゲージが溜まるばかりで奥歯がカチカチと鳴り続ける。
「我が娘、千代に手を出そうとしたのは――お前か?」
先の見えない絶望に歯止めが効かない中で野太い声色の主は、俺が仰向けで倒れている頭上から一メートルも離れていない距離からした。
我が娘……って、千代姫のお父様でお殿様っ!?
慌てて視線を上にすれば、完璧にセットされたちょんまげ頭に、人気江戸コントバラエティ番組でお馴染みの某殿様が着ていたような家紋が胸元に刺繍されている橙一色の羽織りを見事装いこらしている、ずばり殿様といった威圧感バリバリの男がいたのだ。
ぬうっとこちらを威嚇することなく見つめているが、顔のパーツひとつひとつがめちゃくちゃ怖い。太く吊り上がった眉と、気にくわぬ者がいたらすぐ斬りつけそうな冷酷な目元。しかも右まぶたにザックリとある三本の古傷は戦の証なのか、痛々しさを物語っている。見方によっちゃ、最初にヤのつくお仕事の方ですか……?
この場は今から俺を生かすかどうか裁判のような話が繰り広げられるに違いない。要は生死の別れ道。
下手なことを言えば打ち首ルートで下手なことを言わなくても酷な拷問をされるかもしれん。話を聞いてくれる最後のチャンスとも捉えられるが、生憎そこまでポジティブではない。なんせ殿様の腰には長い日本刀がぶらさがっている。そんな物騒な物を一目したらもうタマヒュンよ……。
しかし今日も朝からバイトを連続で入れている。早いとこ準備をしなくては。あ~、でもあと五分。五分でいい。昨夜は変な夢を見たんだっけ。たしか、江戸に飛ばされて千代姫とかいう千年に一度の超絶可愛い女子と出会ってそれからエロい忍者娘にも出会って――。
「いい加減起きろ!」
「ぶべっ!?」
意図せず後頭部を何者かに思いっきり叩かれてしまい、自動的に大量のよだれを垂らしたまま目を開ける。とすれば、昨日夢で見た忍者娘のミツという女がものすごい鬼の形相で見下しては、またまた大股を開いて立っていた。
くノ一の企画モノ? 俺、こんなエキストラのバイトに応募した記憶あったっけな~? ……ふざけた現実逃避も束の間、俺が寝そべっていたのはペラペラに薄い御座の上。場所は千代姫と出会った広い縁側があり、冒頭の後にも述べた打ち首といった処刑がされそうな場所に粗末に寝転ばされていた。
また離れたところには、爺やと家来が見物客として集まり、今すぐ殺したろかオーラがビンビン。逃げようにも両手足が後ろでギッチギチに縛り上げられているので逃走は絶望的。……夢ならばどれほどよかったでしょう。受け入れることのできない現実がそこには広がって、直視すれば吐き気を催すぐらいだった。
俺、これからどうなるんだ……?
帰る場所もなければ頼る人もない江戸時代。生き残る術はどう考えたって見つからなかった。なんせ江戸には刀があり、戦も普通にある時代。怪しい奴はバッサリと斬る残虐なイメージしかない。恐怖のゲージが溜まるばかりで奥歯がカチカチと鳴り続ける。
「我が娘、千代に手を出そうとしたのは――お前か?」
先の見えない絶望に歯止めが効かない中で野太い声色の主は、俺が仰向けで倒れている頭上から一メートルも離れていない距離からした。
我が娘……って、千代姫のお父様でお殿様っ!?
慌てて視線を上にすれば、完璧にセットされたちょんまげ頭に、人気江戸コントバラエティ番組でお馴染みの某殿様が着ていたような家紋が胸元に刺繍されている橙一色の羽織りを見事装いこらしている、ずばり殿様といった威圧感バリバリの男がいたのだ。
ぬうっとこちらを威嚇することなく見つめているが、顔のパーツひとつひとつがめちゃくちゃ怖い。太く吊り上がった眉と、気にくわぬ者がいたらすぐ斬りつけそうな冷酷な目元。しかも右まぶたにザックリとある三本の古傷は戦の証なのか、痛々しさを物語っている。見方によっちゃ、最初にヤのつくお仕事の方ですか……?
この場は今から俺を生かすかどうか裁判のような話が繰り広げられるに違いない。要は生死の別れ道。
下手なことを言えば打ち首ルートで下手なことを言わなくても酷な拷問をされるかもしれん。話を聞いてくれる最後のチャンスとも捉えられるが、生憎そこまでポジティブではない。なんせ殿様の腰には長い日本刀がぶらさがっている。そんな物騒な物を一目したらもうタマヒュンよ……。
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