エロ絵師、江戸に飛ばされて春画描くってよ。

マンボウ

文字の大きさ
上 下
11 / 51
第一幕 江戸にイこう!

第十話 液体と体液

しおりを挟む
 ミツは騒動の内容を事細かく爺やに伝えれば、それを耳にした家来たちが見る見るうちに殺気立ったかと思えば、俺の身体に「よくも姫様を汚したな!」等と怒号を上げながら次々と足蹴りをしていったのだ。当然手足は縛られているため、庇うこともできず、痛みがダイレクト。顔面こそ蹴られなかったが、サッカーボールのように転がされてしまったので、全身は砂埃まみれ。

「あなたたち、おやめなさい!」

「おお、おいたわしや千代姫様。もう安心ですぞ。さあ、こちらへ」

「爺や! みんなを止めて 私はなにも酷いことされていないわ!」

「いいや。あの小僧はとんでもない罪人ですぞ」

 なんとしてでも俺を助けようとする千代姫の言葉は爺やにも家来たちにも交わされ、誰ひとり聞く者はいなかった。今も「違うのに」と涙をためて立ち尽くす姿を見て、なんだか可哀想に感じてしまう。

 今度しっかり自分の意見を話せば分かってくれますよ。……って、俺はなんてことを言ってしまったんだ。彼女がこうして正直に生きていくと決めた矢先に、こんなことがあってはたまったもんじゃない。もしかして今回が初めてではなく、過去に何回もこんなことがあったのでは? ボコボコにされている立場なのに千代姫の心配ばかりしてしまう。

 よっしゃ、ここは俺がビシッと決めてやる!

「あのー、千代姫の意見を聞いてもらってもよろしいでしょうか? 何か言いたげですよ?」

「どの口がほざく!!」

「ヒェッ……! しゅみましぇん……っ」

 勇気をもって意見をしたが、爺やの迫力のある喝で見事撃沈。ごめん、千代姫姫。俺はあまりにもチキンすぎた……。

「あああああーっ!?」

 がっくりとしている横で、突如ミツの悲鳴が夜空に残響音が広がった。びっくりして、この場にいる全員がミツを見ればコンビニ袋を持って腰を抜かしていた。

「どうしたのじゃミツ!」

「大変です、二郎様……。この巾着の中に白い液体が……っ! それも粘り気のある……っ」

 泣きそうな声でそう話すミツ。

 現代っ子である俺は瞬時にそれがバニラアイスと分かった。だが! アイス、すなわち評価がない江戸時代。それが食べ物であると一目で理解するのは難しく、この状況での白い液体は、またも大きな誤解を生む種となる! 

 まずいまずい! 打ち首ルート待ったなしだぞ!?違うんですよ! すぐに弁解を述べたかったが、

「白の、液体だと……?」

「液体、液体……」

「たい、えき……」

 連想ゲームみたく、家来たちは先に答えに辿りついてしまった。体液と聞いた爺やは真っ青になると「あばばば!」とバグりながら泡をふいて気絶。終わりだ。誤解の収集を追いかけるのは無理だ。どうすることもできずに固まっていれば、すぐさまミツがTシャツの襟をを掴んでくる。

「貴様ぁ! これで姫にナニしようとした!?」

「な、なにもしてねーよ! それに誤解だ! あれは食べ物だぞ!」

「食べ物だと?」

「そうだ。江戸にはまだ売ってない美味しい食べ物だ。ほうら、お前も舐めてみろ。頬がとろけるくらいうまいゾ~」

「ヒィッ!」

 しまった。アイスを美味しそうに紹介するつもりが変態チックに伝えてしまった。

「誰がウジ虫のブツを咥えねばならんのだ!」

 なんかこいつもズレてんな。

「もう死ね!」

「へ?」

 軽く瞬きをした次にはもう、ミツの鉄拳が顔の前に来ていた。こりゃ死ぬわと心で思ったのと、千代姫の裂けるような叫びを最後に深い眠りへ落ちていく—―。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

如月さんは なびかない。~クラスで一番の美少女に、何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

処理中です...