10 / 51
第一幕 江戸にイこう!
第九話 膨らむ誤解
しおりを挟む
Oh……。
あの物しか連想せざるを得ない卑猥単語のオンパレード。凍りつく俺と忍者娘のミツ。千代姫の力説を耳にすればするほど、わなわなと肩が震えていき、こちらも身震いが止まらない。千代姫、もういいです! と、目で必死に訴えかけるもそれらは届くはずもない。
「本当に素晴らしかったのよ。こう手の中で上にそそり立ってるだけじゃなくって、触り心地もカッチカチに硬いの!」
こーんなにすごいのよ! トトロに出会ったサツキとメイのごとく大はしゃぎで語りまくる千代姫は、こんなときでも胸がパチパチとはじけるような可愛さだった。こんなに愛おしいと怒る気にもなれない。ここまでくれば可愛いは正義なのだ。
「あのー、千代姫が言っている物は俺が持っているスマホ……えっと、日用品のことなんですよ? 誤解しないでくださいね?」
ずっと震えているミツにおずおずと話しかけても返事どころか顔を合わすこともあしない。聞こえていないのか再度伝えようとしたところ、上の立場である千代姫が全て話終えるのを待っているのだと感じたので、すぐさま話しかけるのをやめた。
それから五分ほど千代姫の長い長い語りはようやく終わりを迎え、
「ね? 私も見たことがない素晴らしいお品を持つくらいだもの。危険なお方じゃないでしょう?」
言いたいことを全て言えたといった感じでスッキリと爽やかな笑顔でそういえば、間を置かずにミツは暗く「そうですね」とだけ。
ああ、こりゃ納得してねぇ。嫌な未来が見えるぞ……。
口元を引き気味にしていれば、予感は的中。いきなりミツは目尻を最高潮に吊り上がり。そんな怒りの色を見せては後頭部を鷲掴みにすれば、湿った地面に押し付ける。そこから流れるように股の間から縄を引っ張りだしては、両手両足を光の速さで縛られてしまった。
早すぎて分からなかった。俺は一体何をされたんだ!? 突っ込む時間も余裕は一ミリもなかった。あるのは股に長時間隠し持っていたからか、人肌っぽい微かな暖かさと反応した邪な気持ちのみ。
「ひどいっ、なにをするの! 縄を解きなさい!」
「いいえ。千代姫の命令でもそれだけはできません。こいつは完全に黒です。神通城に盗みと姫に危害を加える曲者だと私は見なしました。まだ何にも知らない千代姫を一体どこまで汚した!? 吐けウジ虫!!」
髪を掴まれて、耳の中に罵声が次々と入り込む。
いてて、キーンと頭痛がしそうだ。たしかに向こう側からしたら、俺は不審人物に見えてもおかしくはない。それと携帯のこともあり、これは誤解をされても文句は言えない。――ので、こっちも負けずに強気で言い返すことにした。
「あのなあ、女の子に俺がそんなことするわけないだろ! ただ迷いこんだだけなんだ! やましい感情は一切ないんだって!」
「ふんっ、口ではなんとでも言える。そんな証拠どこにある? 顔も声も身に纏う衣も存在も全部が疑わしい。どうせ江戸の外でも女を狙う悪人で通っていたのであろう?」
「んなわけあるか! ハッキリ言うけど俺はな、未来から江戸時代に飛ばされた童貞なんだよ! 頭おかしいと思われてるかもしれないが、これだけは本当なんだ! 信じてくれ!」
「ど、どど、童貞っ!? ……じゃなく、よくもまあアホくさい嘘を並べられる。こんな外道は見たことがない。もう島流しですら生ぬるい。覚悟しろ、殿様に突き出してやる」
「やめろ! 逆に俺は被害者だー!!」
ギャーギャーと喚く俺に千代姫も助け船を出そうとする。
「そうよミツ! この方の物は立派なのよ!」
が、無意味。むしろ油に火を注ぐ。
「千代姫、今は黙っててくだされ……っ!」
「む!? 姫になんという口の利き方っ、死ね!」
「待て待てタンマタンマ!」
「た、たた……玉だと!? 貴様……っ、私まで辱めるか!?」
「もうやだこの忍者娘!」
カオスな空間と化するとこに、縁側の奥からドタドタとこちらに大慌てで向かう数人の足音がした。言い争いはここで一旦ストップ。
揃って三人が目線を暗闇にあてれば、袴姿の男たちと初老にさしかかった白い髭を生やした男。ざっくり例えるなら家来と爺や的な。
「千代姫様、ミツ! 一体なにごとじゃあ!」
白い髭をなびかせた男が息を切らして問う。
「あっ、爺やだわ」
本当に爺やだった。
あの物しか連想せざるを得ない卑猥単語のオンパレード。凍りつく俺と忍者娘のミツ。千代姫の力説を耳にすればするほど、わなわなと肩が震えていき、こちらも身震いが止まらない。千代姫、もういいです! と、目で必死に訴えかけるもそれらは届くはずもない。
「本当に素晴らしかったのよ。こう手の中で上にそそり立ってるだけじゃなくって、触り心地もカッチカチに硬いの!」
こーんなにすごいのよ! トトロに出会ったサツキとメイのごとく大はしゃぎで語りまくる千代姫は、こんなときでも胸がパチパチとはじけるような可愛さだった。こんなに愛おしいと怒る気にもなれない。ここまでくれば可愛いは正義なのだ。
「あのー、千代姫が言っている物は俺が持っているスマホ……えっと、日用品のことなんですよ? 誤解しないでくださいね?」
ずっと震えているミツにおずおずと話しかけても返事どころか顔を合わすこともあしない。聞こえていないのか再度伝えようとしたところ、上の立場である千代姫が全て話終えるのを待っているのだと感じたので、すぐさま話しかけるのをやめた。
それから五分ほど千代姫の長い長い語りはようやく終わりを迎え、
「ね? 私も見たことがない素晴らしいお品を持つくらいだもの。危険なお方じゃないでしょう?」
言いたいことを全て言えたといった感じでスッキリと爽やかな笑顔でそういえば、間を置かずにミツは暗く「そうですね」とだけ。
ああ、こりゃ納得してねぇ。嫌な未来が見えるぞ……。
口元を引き気味にしていれば、予感は的中。いきなりミツは目尻を最高潮に吊り上がり。そんな怒りの色を見せては後頭部を鷲掴みにすれば、湿った地面に押し付ける。そこから流れるように股の間から縄を引っ張りだしては、両手両足を光の速さで縛られてしまった。
早すぎて分からなかった。俺は一体何をされたんだ!? 突っ込む時間も余裕は一ミリもなかった。あるのは股に長時間隠し持っていたからか、人肌っぽい微かな暖かさと反応した邪な気持ちのみ。
「ひどいっ、なにをするの! 縄を解きなさい!」
「いいえ。千代姫の命令でもそれだけはできません。こいつは完全に黒です。神通城に盗みと姫に危害を加える曲者だと私は見なしました。まだ何にも知らない千代姫を一体どこまで汚した!? 吐けウジ虫!!」
髪を掴まれて、耳の中に罵声が次々と入り込む。
いてて、キーンと頭痛がしそうだ。たしかに向こう側からしたら、俺は不審人物に見えてもおかしくはない。それと携帯のこともあり、これは誤解をされても文句は言えない。――ので、こっちも負けずに強気で言い返すことにした。
「あのなあ、女の子に俺がそんなことするわけないだろ! ただ迷いこんだだけなんだ! やましい感情は一切ないんだって!」
「ふんっ、口ではなんとでも言える。そんな証拠どこにある? 顔も声も身に纏う衣も存在も全部が疑わしい。どうせ江戸の外でも女を狙う悪人で通っていたのであろう?」
「んなわけあるか! ハッキリ言うけど俺はな、未来から江戸時代に飛ばされた童貞なんだよ! 頭おかしいと思われてるかもしれないが、これだけは本当なんだ! 信じてくれ!」
「ど、どど、童貞っ!? ……じゃなく、よくもまあアホくさい嘘を並べられる。こんな外道は見たことがない。もう島流しですら生ぬるい。覚悟しろ、殿様に突き出してやる」
「やめろ! 逆に俺は被害者だー!!」
ギャーギャーと喚く俺に千代姫も助け船を出そうとする。
「そうよミツ! この方の物は立派なのよ!」
が、無意味。むしろ油に火を注ぐ。
「千代姫、今は黙っててくだされ……っ!」
「む!? 姫になんという口の利き方っ、死ね!」
「待て待てタンマタンマ!」
「た、たた……玉だと!? 貴様……っ、私まで辱めるか!?」
「もうやだこの忍者娘!」
カオスな空間と化するとこに、縁側の奥からドタドタとこちらに大慌てで向かう数人の足音がした。言い争いはここで一旦ストップ。
揃って三人が目線を暗闇にあてれば、袴姿の男たちと初老にさしかかった白い髭を生やした男。ざっくり例えるなら家来と爺や的な。
「千代姫様、ミツ! 一体なにごとじゃあ!」
白い髭をなびかせた男が息を切らして問う。
「あっ、爺やだわ」
本当に爺やだった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
パーフェクトアンドロイド
ことは
キャラ文芸
アンドロイドが通うレアリティ学園。この学園の生徒たちは、インフィニティブレイン社の実験的試みによって開発されたアンドロイドだ。
だが俺、伏木真人(ふしぎまひと)は、この学園のアンドロイドたちとは決定的に違う。
俺はインフィニティブレイン社との契約で、モニターとしてこの学園に入学した。他の生徒たちを観察し、定期的に校長に報告することになっている。
レアリティ学園の新入生は100名。
そのうちアンドロイドは99名。
つまり俺は、生身の人間だ。
▶︎credit
表紙イラスト おーい
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる