エロ絵師、江戸に飛ばされて春画描くってよ。

マンボウ

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第一幕 江戸にイこう!

第五話 触れ合う手と手

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「ああっと、そうだ! ここって電波ってあります? 俺のスマホ全然動かなくなっちゃって。タクシーとか呼びたいんでよかったら電話とか貸してもらえますか?」

「でんぱ、すまほ、たくすい?」

 またまた慣れない単語を初耳のように後から繰り返す。他の人だったらイラッとくるんだろうが、彼女は可愛いからOK。

「このスマホなんですけど――」

「まあっ! とても小さなまな板!」

 俺がポケットからどこにでもある黒色の携帯を取り出してみれば、物珍しい一品を見たように物凄い勢いで食いついてくる姫こ無邪気な笑顔が体同士が密着しそうなほどの距離にあることに邪な気持ちが出てくる。

 んほおおおっ! しゅごい近いいいぃーっ!

 時間よ、ここで止まれ! ザ・ワールド!!

 心臓は口から出てきそうなほどバウンドしていたもはやここにいる理由は後回し。とびきり可愛い子との接触が心も体も叫ぶように求めていた。

「よかったら持ってみますか?」

「いいんですか?」

「もちろん。どうぞ」

 欲求が高まった結果、携帯を渡すときにさりげなく手と手を触れあわすことに成功。俺は生まれてきて異性にこんな大胆な行動を起こしたことは思い出す限りない。

 感想は、とても小さくて柔らかかった。今のは完全に時が停止した気がした。向こうは一瞬の出来事だとしても。

 姫様は携帯を一通り触っては大興奮。小さな手の平で収まる携帯は縦上に持たれているからか、ちょっと卑猥な妄想に走りかけてしまう自分を殺すようにセルフ腹パンを食らわせた。

 すると、
「あなたは、とてもすごい人なんですね。私の知らない場所や物をたくさん持って、たくさん知っている。私もそんなふうに色々なことを知りたいです」

 嘆くように小さな声で漏らす姫様に言葉が出ない。

 うーん、やはり迫真の演技。設定上、姫様だから好き勝手なことが出来ずに他人から行動が制限されていると? 

 なるほど、どの時代にもありがちな話だ。男が平民で女が国のお姫様の身分差がどうしたって恋愛映画もあるくらいだし。……というかもう本気で終わってくれねぇかな、この茶番劇。見知らぬ男女が突然知り合ったら? とかいう恋愛リアリティーショーにもってこうとしたいのか知らんが、人の恋愛見て面白いと言えるほど頭パッパラパーになってみたいもんだ。

「どうすればいいと思いますか?」

 おいおい、演技続行か。

「えーと、なんていうかもう欲望のまま生きればいいと思いますよ。俺も今好きなことばかりして生きているんで。結局我慢したらいいことなんてないですし、今度しっかり自分の意見を話せば分かってくれますよ、きっと」

 THE・頭を掻きながらやる気のない棒読み。この際、ノリが悪いって叩かれてもいい。

 すると心に響きましたといった感じで大きな拍手をしては、

「そうですよね、ありがとうございますっ! 私、今日から正直に生きてみます!」

「はは、そんな立派なこと言ってないじゃないですか」

「いえいえ、有難いお言葉でした!」

「またまたご冗談を」

「そんなことありません。おかげで曇っていた道が見えた気がしました」

 こちらが低姿勢になってしまうぐらいお礼を繰り返す。

 道って俺は教祖様か? まあ、悪い気はしない。

 だがここで話を戻そう。

 俺は一刻も早く帰宅してエロを描きたい。

 なんならここで紙とペンを持たせれば一心不乱で軽く三枚は描き上げるだろう。要は描きたい欲が溜まっている。だがそれ以前に先ほどの違和感がどんどん募っていた。
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