エロ絵師、江戸に飛ばされて春画描くってよ。

マンボウ

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第一幕 江戸にイこう!

第一話 藤山スグルという男

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 おかしな話だが、目を開けると知らない場所に立っていた。

 場所といっても他所の敷地内。松の木が何本も生え、小さな池には鯉が二匹、優雅に泳いでいる。すぐそこに広がる石畳はきっちりと並べられおり、余計な草や葉はひとつも落ちておらず。手入れの行き届いた広い日本庭園という印象を受ける。

「人んちなら早いとこ出ないと不法侵入と間違われてしまうな……」

 ぐるりと見渡すと右側には石垣が塀のごとく高く積まれており、安易にここを出ることは不可能。左側には江戸時代に建てられた城を再現して建てたようなひときわ高い城が聳え立つ。

「はあ……?」

 ここはどこだ? 

 俺はどこに迷いこんでしまったんだ?

 なぜこんなことになっているか必死に思い出そうにも、ここに自分の足で来た記憶すらない。記憶があるとしたらそれは、バイト帰りの途中コンビニに寄ってアイスを買ったところから。

「だあーっ、今日も疲れた!」

 高校を卒業と同時にフリーターになった俺の名前は、藤山スグル。毎日いくつものバイトをかけ持ちして生計を立てていた。

 今日は体力勝負の居酒屋バイトを掛け持ち。いけるいける、余裕っしょ。と、若さ故に調子にのったら痛い目をみる。理不尽なクレームに忙しくなると当たり散らす店長。心身ともにヘトヘト。

 そんな自分にご褒美としてコンビニに寄ってちょっと高めのバニラアイスを購入。

 帰宅したらすぐにでもベットへ倒れこんで夢の中へ……といきたいところでもあるが、俺には毎日の生きがいとも呼べるものが唯一ある。

 それは、エロいイラストを描いて会員制交流サイトやイラストサイトへ投稿することだ。

 毎日最低でも二枚は描いては載せての繰り返し。一昨日は獣と交わるイラストを、その前は純愛ものをと基本ジャンルやシチュエーションにはこだわらず。今日はこれを描く、次はこれを描くというのも決めずに頭に浮かんだものをパッと。職人っぽく言えば手首が勝手に動いてくれる。流行りのキャラ、ジャンルだから描くというのもせずに、単純に自分が好きなものを描いて周囲の反応やコメントは二の次。

 有難いことに載せればいいねや、絵柄が好みといった嬉しいコメントばかりではない。ときには誹謗中傷に近いコメントがきたりするのもネットの世界。それでもエロい絵を描くのはやめられない。どんなに疲れていようとも眠たくってもペンを持てはもう冴える。描いている時間は一日で一番安らぐ時間。とにかく楽しくってしょうがないのだ。

 地道に絵をあげていたのを小さな同人誌からゲームのイラストを描いてくれ、小説の挿入絵をといった依頼もぼちぼち来るように。

 別に卑猥な絵にこだわらなくてもいいのでは? と思ってもそこにエロがないと描く気が一切起きない。この前はアナログ練習をするためスケッチブックに花瓶を模写。しかし自分の意思とは関係なしにいつの間にか触手を花瓶に張り巡らせていた。一時期はエロが絡まなきゃ描けんのか。なんて悩んだがもうそれも開き直った。
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