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ルート4 ヒロインとホテルに行こう!
イケメンでも中身はお年頃!ホテルの名はLove so Sweet!
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たくさんの飲み屋を通り過ぎ、そのまま二次会に行けそうな小さなスナックが何軒も並ぶ道も素通り。次第に人とすれ違うこともなくなり、周りには静まった街だけがとり残された。
気がつけば愛理はおんぶされた状態ですやすやと眠りに入ってしまい、三咲と私の足音が不気味なほど夜道に反響してぞくりと背筋が凍る。ますます不安で落ち着かない気分を掻き立てられた。やだな~、怖いな~。そろそろ私の足も限界かも。
「まだホテル着かないの?」
「あと三分ほど」
あと三分か。こういったときの三分の体感時間はどうして長く感じちゃうのかしら。歩くスピードをアップしたい気持ちは山々だけど足の裏が悲鳴を上げそう。ヒールがない靴でもそれなりに痛くなってしまうのは、むくみ体質のせい? ふくらはぎを時々さすりながら歩く前に爽快と足を進めていく三咲がどことなく憎たらしく感じた。
「居酒屋もファミレスもない、むしろ田んぼが多くなってきたこの道の近くにホテル? なんて立地の悪いホテルなのよ……ま、まさかあんた! どさくさに紛れてラブホに予約したんじゃないでしょうね!?」
「はあ?」
「だってそうでしょ! インターチェンジ近くや森林近くに川沿い、または何もない田舎道にラブホが立地するのは一般常識じゃないの!! ラブホ断固反対!!」
「ば、おま……っ!」
ん? なんだか様子がおかしい。いくらイケメンでもラブホという単語に肩をビクッと揺らしては、初々しい娘のように顔を赤らめる。この反応、ゲームでも見たことがある。着替え中の愛理と鉢合わせして起こる三咲のツンケンとした表情が崩れる一番最初のイベントで、SNSにいる三咲推しのファンが大体堕ちたと囁かれている。
それをリアルで体感した感想は――やっぱりときめきも何もない。逆に何照れてんだ気色悪いとまで声に出そうになった。逆をいえば金持ちイケメンだろうと、愛理一筋の固いハートは絶対に開かないという証明にもなった。
「てかあんた、ラブホってワードに照れすぎじゃない? なんていうかそれがもう怪しいのよね」
「照れてねぇよ! 後ろにいるこいつが起きて耳にでもしてみろ! それがまずいから焦ってんだよ!」
どうやらあくまで愛理を配慮していたと主張。どこまで本当なのやら。言われなくても彼女は純粋。ラブホなんて言葉を知ってるわけがない。ラブホ、ビジホの口論を繰り広げつつ、つま先は着実に目的地へ向かっていた。
「で? ホテルの名前は何? どこの系列のホテルなのかしら。こんな不便なとこに建てちゃって、汚かったら桃尻家から名指しでクレーム入れちゃうわよ」
「確か『Love so Sweet』ってとこだったな」
「ラブソォ、スウィート? なにそれ聞いたことないんだけど」
「ここだな」
歩くのをやめた三咲がホテルを見上げる。釣られて私もホテルのある前方に視線をやってすぐワニみたく顎が外れんばかりの大口を開けることとなる。
輝いたのは鏡でも太陽でもなく、ライトアップされたメルヘンチックなお城。その横にでかでかとLEDライトに照らされたホテルの看板『Love so Sweet』と筆記体で記されていた。
気がつけば愛理はおんぶされた状態ですやすやと眠りに入ってしまい、三咲と私の足音が不気味なほど夜道に反響してぞくりと背筋が凍る。ますます不安で落ち着かない気分を掻き立てられた。やだな~、怖いな~。そろそろ私の足も限界かも。
「まだホテル着かないの?」
「あと三分ほど」
あと三分か。こういったときの三分の体感時間はどうして長く感じちゃうのかしら。歩くスピードをアップしたい気持ちは山々だけど足の裏が悲鳴を上げそう。ヒールがない靴でもそれなりに痛くなってしまうのは、むくみ体質のせい? ふくらはぎを時々さすりながら歩く前に爽快と足を進めていく三咲がどことなく憎たらしく感じた。
「居酒屋もファミレスもない、むしろ田んぼが多くなってきたこの道の近くにホテル? なんて立地の悪いホテルなのよ……ま、まさかあんた! どさくさに紛れてラブホに予約したんじゃないでしょうね!?」
「はあ?」
「だってそうでしょ! インターチェンジ近くや森林近くに川沿い、または何もない田舎道にラブホが立地するのは一般常識じゃないの!! ラブホ断固反対!!」
「ば、おま……っ!」
ん? なんだか様子がおかしい。いくらイケメンでもラブホという単語に肩をビクッと揺らしては、初々しい娘のように顔を赤らめる。この反応、ゲームでも見たことがある。着替え中の愛理と鉢合わせして起こる三咲のツンケンとした表情が崩れる一番最初のイベントで、SNSにいる三咲推しのファンが大体堕ちたと囁かれている。
それをリアルで体感した感想は――やっぱりときめきも何もない。逆に何照れてんだ気色悪いとまで声に出そうになった。逆をいえば金持ちイケメンだろうと、愛理一筋の固いハートは絶対に開かないという証明にもなった。
「てかあんた、ラブホってワードに照れすぎじゃない? なんていうかそれがもう怪しいのよね」
「照れてねぇよ! 後ろにいるこいつが起きて耳にでもしてみろ! それがまずいから焦ってんだよ!」
どうやらあくまで愛理を配慮していたと主張。どこまで本当なのやら。言われなくても彼女は純粋。ラブホなんて言葉を知ってるわけがない。ラブホ、ビジホの口論を繰り広げつつ、つま先は着実に目的地へ向かっていた。
「で? ホテルの名前は何? どこの系列のホテルなのかしら。こんな不便なとこに建てちゃって、汚かったら桃尻家から名指しでクレーム入れちゃうわよ」
「確か『Love so Sweet』ってとこだったな」
「ラブソォ、スウィート? なにそれ聞いたことないんだけど」
「ここだな」
歩くのをやめた三咲がホテルを見上げる。釣られて私もホテルのある前方に視線をやってすぐワニみたく顎が外れんばかりの大口を開けることとなる。
輝いたのは鏡でも太陽でもなく、ライトアップされたメルヘンチックなお城。その横にでかでかとLEDライトに照らされたホテルの看板『Love so Sweet』と筆記体で記されていた。
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