74 / 84
ルート4 ヒロインとホテルに行こう!
どうしても男を倒したい!最大の悪あがき!
しおりを挟む
この「ぐちょぐちょメモリアル」の人気は四人のイケメン兄弟――なんだけど、その人気の理由のひとつとして顔採用ではない、ガチのイケメンボイスを起用してること。
しかも中でも金持三咲の声優は、超イケメンボイスで有名でその声を耳にした女性は下半身から涎を垂らすとかなんとか……。私は男キャラに興味ないから気にはしていなかったけど、ノーマルな愛理がそんな美声を聞いたら膣キュンするしかないじゃない!
勝ち目のない状況に血の気が引いていった。そんなことになっていることは知らない二人は仲良さげに会話を進めていく。元はといえば男をカラオケデートに誘ってしまったことが一番ダメだった。今まで散々あった自分の馬鹿さ加減にいい加減呆れる余裕すらない。曲を選んでいる三咲に今になって歌うなって言うのも場の空気を悪くしてしまう。せめて、せめて何か、もうこの際悪あがきでもいい。とにかく、三咲が歌うのをを邪魔したい、蹴落としたい……っ!!
頭の中にあるのは抹殺のみ。さっきまでのどうでもいい思考とは真逆のことばかり考えること数十秒、椅子から立ち上がり二人に向けてこう言った。
「ねぇ、喉乾かない? 私、飲み物持ってくるわね」
「あっ、そういえばまだドリンクバーまだでしたね。じゃあ私も」
「ううん、私が二人の分も取ってくるから大丈夫。ゆっくりしてて」
にこやかな笑みを残して部屋を後にした私は、大急ぎでジュースを取りに行く。
下剤でも入れるの? と思ったあなた、惜しい! 下剤は家に置いて来ちゃった。だけど心配ご無用! 私には立派な手と口があるの。だったら、阻止するためにとことん行動に移すのみ。それが地味な思い付きでも、悪あがきでも、金持三咲との恋愛フラグを折るためには色んなことを試すしかない――。
「お待たせ! 愛理はリンゴジュースでよかった?」
「はい、ありがとうございます」
「私がオレンジジュースで……三咲は、コーラでいいわよね?」
「なんでジョッキなんだよ」
「ジョッキのグラスがあったからよ。別にいいじゃない。男の子なんだし」
「飲み会じゃねぇんだから普通のにしろ」
悪態をつきながらも、よっぽど喉が渇いていたのかグビグビとコーラを喉に流し込んでいく。それを隣で確認すると、
「あー……あっ、愛理はさ! 最近気になる芸能人とかいる?」
笑いをこみ上げてくるのを防ぐようにわざとらしく愛理に話しかけた。
三咲が飲んでいるのは一見コーラだが、中身はコーラではない。カラオケに不向きな喉の油を少なくするウーロン茶と、ゲップの出やすいコーラを調合したドリンク。人にジロジロ見られながらもドリンクバーでちょっとずつ味見した甲斐があった。上手くいけば歌っている途中に下品ゲップを出す作戦。めちゃくちゃ地味で陰湿な攻撃なんでしょうけど別にいい。
仮に成功したとしてもゲップだけではインパクトが薄い。イケメンボイスとやらがそんなことぐらいで霞むにはまだまだ。声を妨げるためにスピーカーからたまに出るキーンという音、要はハウリングを起こすため、三咲をさりげなくスピーカーの真下に誘導させておく。ハウリングはスピーカー付近で起こりやすい。
そしてハウリングの原因として音量も上げられるから歌っている間に曲を探すふりをしてデンモクでマイクエコーの音量を爆上げしてやる。全てが上手くいけば、打倒できなくとも印象を薄くさせることができる。神様、お願い! 私に勝利の女神を――
「クソ尻、次歌えよ。俺はその次でいい」
「あれれ、まさか歌うのが怖くなっちったカナ??」
「ちげぇよ。とっとと先に歌え」
「はいはい。じゃあジュースでも飲んで発声練習でもしておきなさい」
「チッ、うっせぇな」
なんにも知らない馬鹿は不審がることなく調合コーラ飲みまくる。ゲップが出るのは五分後ぐらい? こっちが歌い終わるまで十分喉を潤すことね。
「じゃあ私はソロで翼をくださいを歌いまーす! 愛理のために歌っちゃうよ!」
「桃尻さん頑張ってください」
応援されたことにめちゃくちゃ張り切った私は、座りながらではなく立って後ろの方へと移動。宴会できそうな大部屋なだけあって軽くダンスもできる。まるで人気アイドルになった気分。翼をくださいのイントロが流れ出し、最高の爪痕を残そうと肩を軽く揺らしたとき、お腹から違和感の塊が胸辺りに浮かび上がってきた。
この違和感の名を知っている。――ゲップだ。
しかも中でも金持三咲の声優は、超イケメンボイスで有名でその声を耳にした女性は下半身から涎を垂らすとかなんとか……。私は男キャラに興味ないから気にはしていなかったけど、ノーマルな愛理がそんな美声を聞いたら膣キュンするしかないじゃない!
勝ち目のない状況に血の気が引いていった。そんなことになっていることは知らない二人は仲良さげに会話を進めていく。元はといえば男をカラオケデートに誘ってしまったことが一番ダメだった。今まで散々あった自分の馬鹿さ加減にいい加減呆れる余裕すらない。曲を選んでいる三咲に今になって歌うなって言うのも場の空気を悪くしてしまう。せめて、せめて何か、もうこの際悪あがきでもいい。とにかく、三咲が歌うのをを邪魔したい、蹴落としたい……っ!!
頭の中にあるのは抹殺のみ。さっきまでのどうでもいい思考とは真逆のことばかり考えること数十秒、椅子から立ち上がり二人に向けてこう言った。
「ねぇ、喉乾かない? 私、飲み物持ってくるわね」
「あっ、そういえばまだドリンクバーまだでしたね。じゃあ私も」
「ううん、私が二人の分も取ってくるから大丈夫。ゆっくりしてて」
にこやかな笑みを残して部屋を後にした私は、大急ぎでジュースを取りに行く。
下剤でも入れるの? と思ったあなた、惜しい! 下剤は家に置いて来ちゃった。だけど心配ご無用! 私には立派な手と口があるの。だったら、阻止するためにとことん行動に移すのみ。それが地味な思い付きでも、悪あがきでも、金持三咲との恋愛フラグを折るためには色んなことを試すしかない――。
「お待たせ! 愛理はリンゴジュースでよかった?」
「はい、ありがとうございます」
「私がオレンジジュースで……三咲は、コーラでいいわよね?」
「なんでジョッキなんだよ」
「ジョッキのグラスがあったからよ。別にいいじゃない。男の子なんだし」
「飲み会じゃねぇんだから普通のにしろ」
悪態をつきながらも、よっぽど喉が渇いていたのかグビグビとコーラを喉に流し込んでいく。それを隣で確認すると、
「あー……あっ、愛理はさ! 最近気になる芸能人とかいる?」
笑いをこみ上げてくるのを防ぐようにわざとらしく愛理に話しかけた。
三咲が飲んでいるのは一見コーラだが、中身はコーラではない。カラオケに不向きな喉の油を少なくするウーロン茶と、ゲップの出やすいコーラを調合したドリンク。人にジロジロ見られながらもドリンクバーでちょっとずつ味見した甲斐があった。上手くいけば歌っている途中に下品ゲップを出す作戦。めちゃくちゃ地味で陰湿な攻撃なんでしょうけど別にいい。
仮に成功したとしてもゲップだけではインパクトが薄い。イケメンボイスとやらがそんなことぐらいで霞むにはまだまだ。声を妨げるためにスピーカーからたまに出るキーンという音、要はハウリングを起こすため、三咲をさりげなくスピーカーの真下に誘導させておく。ハウリングはスピーカー付近で起こりやすい。
そしてハウリングの原因として音量も上げられるから歌っている間に曲を探すふりをしてデンモクでマイクエコーの音量を爆上げしてやる。全てが上手くいけば、打倒できなくとも印象を薄くさせることができる。神様、お願い! 私に勝利の女神を――
「クソ尻、次歌えよ。俺はその次でいい」
「あれれ、まさか歌うのが怖くなっちったカナ??」
「ちげぇよ。とっとと先に歌え」
「はいはい。じゃあジュースでも飲んで発声練習でもしておきなさい」
「チッ、うっせぇな」
なんにも知らない馬鹿は不審がることなく調合コーラ飲みまくる。ゲップが出るのは五分後ぐらい? こっちが歌い終わるまで十分喉を潤すことね。
「じゃあ私はソロで翼をくださいを歌いまーす! 愛理のために歌っちゃうよ!」
「桃尻さん頑張ってください」
応援されたことにめちゃくちゃ張り切った私は、座りながらではなく立って後ろの方へと移動。宴会できそうな大部屋なだけあって軽くダンスもできる。まるで人気アイドルになった気分。翼をくださいのイントロが流れ出し、最高の爪痕を残そうと肩を軽く揺らしたとき、お腹から違和感の塊が胸辺りに浮かび上がってきた。
この違和感の名を知っている。――ゲップだ。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

別に要りませんけど?
ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」
そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。
「……別に要りませんけど?」
※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。
※なろうでも掲載中
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる