悪役令嬢になったんで推し事としてヒロインを溺愛しようと思う

マンボウ

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ルート4 ヒロインとホテルに行こう!

神回避!桃尻ルート続行中!

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「こぉ~ら愛理、さすがに悪いわよ! 三咲ったらすごいゲームに夢中だっやじゃない? お邪魔しちゃ悪いし、今日はこのまま二人でショッピングを続けましょうよ!」

「へ? でも三咲くん一人で……」

「いいじゃない、一人が好きなのよあいつは! だからここを離れましょう! ねっ!?」

「えぇっと……」

 男ダメ。ゼッタイ。とんでもなく血走った眼球で訴える。なぜ私がこんなに必死なのか、愛理は知るはずもなく、ちょっと引いていた。

 しかし普通ではない凶気っぷりに、二人っきりで買い物の続きがしたいのだとベリーグッドな解釈に行き着いたらしく、三咲を誘ったのを気まずく瞳を横流しで移動しては、どうすればというように細くて長い指の先が上唇まで隠された。分かっている。あなたは悪くない。私の気持ちを汲み取ってくれてありがとう。満点花丸。

 問題は、男の方。あいつがこれからどう答えを出すかで、ルートが大きく違ってくるけど、この誘いを三咲が断るとは思えない。金持兄弟の四人は、移動教室ですら私を愛理から引き剥がそうと、とことん邪魔をする。

 とくに三咲は兄弟の中でも喧嘩っ早くてパワー系。力の差は敵わない。んもう、どうしよう。力で勝てないのなら薬盛って眠らせるしか手段がないけど、そんな便利なモノを常に持ち歩いているわけじゃないのよね……。

 ええい、桃尻エリカよ! 弱気になるな、女が廃る! もうここまでくると運命を受け入れるしかない。正々堂々、直球勝負!

 精神イメージは雷の音が轟く荒野に一人、錆びついた鎧を纏い、剣を勇ましく天へ振りかざそうとしていた。

「俺はいい。パス」

 そのとき、三咲から信じられない返事が飛び出す。私も一緒にいるとはいえ、愛理と休日にデートができる権利を自ら断ったのだ。

 要領よく上手くいけば、兄弟出し抜けてルートまっしぐらだった可能性もあった未来ををへし折っちゃって、んまぁ~……アホ、バカ、童貞! なんかよく分からないけど、勝った! 桃尻ルートが引き続き続行されたんだ!

「あらま、それは残念ですわね! じゃあ行きましょうか、愛理」

「三咲くん、また学校でね」


「おう」

 去り際に素っ気ない挨拶をした三咲は愛理を気にする様子もなく、またゲームをプレイし始める。速足でゲーセン内を突き進んでいくので、距離はどんどん遠ざかっていく。

 ふふ、来た来た! 来ちゃったよ、桃尻エリカの流れが! 順調すぎて鼻うがいをしたときのように気分がいい。このまま外に出たら、すぐ個室に行ける場所へ目指そう。そこから先は流れによるけど――。

「うーん、あともうちょっとでゲーセンから出れるのに出入口付近が異様に混雑してるわね。愛理、大丈夫?」

「はいっ、なんとか」

 お昼をすぎたショッピングモールの混み様は異常なのは心得ていたが、ゲーセンまでもこんなにうじゃうじゃ人だかりになるのは盲点だった。出入口付近はUFOキャッチャーの台が勢揃い。混雑の要因は、カップルが立ち止まって景品を眺めたり、ゲームをプレイする人の後ろで景品獲得するまで眺める野次馬が主で、若干の苛立ちを抱えつつ、ちびちびとつま先を前へ前へ移動。

「あの、あの……桃尻さん……」

 五歩ぐらい進めていれば、愛理がコソコソ話をするときのボリュームで私を呼び止める。

「あっ、ごめんね。早かった?」

「いえ……横の、ゲーム機にいる男の人なんですけど……」

 言われたとおり、愛理の隣に設置してあるUFOキャッチャーの台を見てみることに。

 そこには不摂生の証といったような太っちょな体格に、チェックのブラウスをズボンにインしたキモオタ風の男がいた。一瞬、それがなにかと声に出しそうになるも、すぐに腹の奥底へと蓋をした。男はゲームをプレイしていなければ、景品をガン見しているわけでもなく、不自然に台の前へしゃがみ込んで、右手の携帯カメラを上にして愛理のスカートの中を盗撮していたのだ。

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