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ルート4 ヒロインとホテルに行こう!
3Pはファンタジー!デートに男はいらねぇ!!
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金持家の息子である男が、なぜこんな一般人ピーポーの来るショッピングモールに……っ?! それもゲーセンで行き場を失い、固定された者だけが集まりそうな音ゲーの空間なんかにいるのよ!
混乱からくる脇汗が断絶する気配なく落ちていく。しかし、いつもとは違う姿に私たちはすっかり釘付けになっていた。
ブラインドタッチをするかのように画面から目線を外さない。手元を一度も確認することなくボタンを高速で連打。小さなボタンであろうが、配置を完璧に覚え、人差し指一本で打ち込み。しかもミスしたときには、舌打ち寸前で口の端を引きつらせるも、すぐに熱心な面構えに切り替えていた。
いつも皆とは一歩下がってた位置にいて、何か話したかと思えば嫌味や不機嫌そうな返答ばかりの三咲が、ゲームであんな必死になっているなんて――
「きんも!」
「すごい!」
お見事、二人そろって絶妙なタイミングで各々の心情が唇からぽろっと落ちた。しかし内容は不一致。説明しなくとも分かっているだろうけど、私は「きんも!」の方。だって、ねぇ……日頃あれだけスカしているのに、一人でノリノリで音ゲーしているとこに出くわしたら、腫れ物扱いじゃないけれど、知ったらいけない一面を目の当たりにした感じというか、身内の性癖を知ったときのような気まずさ。
それから二分ほどでゲームは終了。最後まで物陰からちゃっかりと観察してしまった。三咲は私たちの存在に気づくはずもなく、両手を伸ばして台に手を置き、フーッと息をついて、台の横に百円のタワーを並べる。
うわあ……。あいつ、音ゲーに関しては、かなりのガチ勢? 怖いもの見たさでまだプレイスタイルを鑑賞したいという気持ちが芽生えるも、今日は愛理とのデート! バレないよう早くここから移動して……あれ、隣にいたはずの愛理がいない! 嘘、やだ、はぐれた? 迷子!?
プチパニックになりかけていたら、三咲に近づいて話しかける愛理の姿があった。やめて話しかけないで……っ!
止めに入ろうにしても、ここからではもう遅い。
「三咲くーん! 偶然だね!」
「うぉ! なんだよ愛理かよ。びびった、恵かと思った……。つーか、なんでお前ここにいんだよ?」
「あのね、今日は桃尻さんと買い物しに来てたの。それで今、プリクラ撮ってきたところなんだ」
「は? クソ尻もいんの?」
愛理の背後に恨めしそうに佇む私を見てから、露骨に嫌な顔をする三咲だった。んまー、失礼な奴! それはこっちも同じ気分だっつーの。
「あらまあ、ごきげんよう三咲! それにしても金持家のボンボンお坊ちゃまがこんな場所で、それも一人で音ゲーで遊んでいるなんて超意外というか……ぷぷっ、失礼!」
さっきのプレイスタイルを思い出し笑いをする。挑発にも近い煽りに三咲はわなわなと身を震わせながらもギリギリにこらえてみせる。そしてそこからは私をガン無視。愛理の方にだけ体と顔を向けて会話を続けた。
「今日は睦月くんとかいないの?」
「他は家。今日は親父が帰ってんだよ。だからここにいる」
「えっ! 帰らなくていいの? お父さんってたしか海外に仕事に行ってて、すごい久しぶりに帰ってきてるんだよね?」
「別に、顔合わせても話すことねぇから。残りの三人に任せときゃいい」
「そっか、そうなんだ。……あっ、あのね後から桃尻さんとカラオケに行くんだけど、三咲くんもよかったらどうかな? 一緒に行かない?」
「は!?」
「は!?」
とんでもない提案に私と三咲の驚愕した声がゲーセン内に響き渡った。これは好きだからとかではなく、きっと一人ぼっちでいる三咲を気にした愛理の優しさから出た言葉。
それでも――冗談じゃない。認めるもんか。デートの邪魔をするに決まっている。例え地球がひっくり返って仲良く3Pになったとしても、最後に三咲を眠らせてから海に沈めてしまう。とにかくそのくらい無理! 阻止!! 絶対に阻止!!!
混乱からくる脇汗が断絶する気配なく落ちていく。しかし、いつもとは違う姿に私たちはすっかり釘付けになっていた。
ブラインドタッチをするかのように画面から目線を外さない。手元を一度も確認することなくボタンを高速で連打。小さなボタンであろうが、配置を完璧に覚え、人差し指一本で打ち込み。しかもミスしたときには、舌打ち寸前で口の端を引きつらせるも、すぐに熱心な面構えに切り替えていた。
いつも皆とは一歩下がってた位置にいて、何か話したかと思えば嫌味や不機嫌そうな返答ばかりの三咲が、ゲームであんな必死になっているなんて――
「きんも!」
「すごい!」
お見事、二人そろって絶妙なタイミングで各々の心情が唇からぽろっと落ちた。しかし内容は不一致。説明しなくとも分かっているだろうけど、私は「きんも!」の方。だって、ねぇ……日頃あれだけスカしているのに、一人でノリノリで音ゲーしているとこに出くわしたら、腫れ物扱いじゃないけれど、知ったらいけない一面を目の当たりにした感じというか、身内の性癖を知ったときのような気まずさ。
それから二分ほどでゲームは終了。最後まで物陰からちゃっかりと観察してしまった。三咲は私たちの存在に気づくはずもなく、両手を伸ばして台に手を置き、フーッと息をついて、台の横に百円のタワーを並べる。
うわあ……。あいつ、音ゲーに関しては、かなりのガチ勢? 怖いもの見たさでまだプレイスタイルを鑑賞したいという気持ちが芽生えるも、今日は愛理とのデート! バレないよう早くここから移動して……あれ、隣にいたはずの愛理がいない! 嘘、やだ、はぐれた? 迷子!?
プチパニックになりかけていたら、三咲に近づいて話しかける愛理の姿があった。やめて話しかけないで……っ!
止めに入ろうにしても、ここからではもう遅い。
「三咲くーん! 偶然だね!」
「うぉ! なんだよ愛理かよ。びびった、恵かと思った……。つーか、なんでお前ここにいんだよ?」
「あのね、今日は桃尻さんと買い物しに来てたの。それで今、プリクラ撮ってきたところなんだ」
「は? クソ尻もいんの?」
愛理の背後に恨めしそうに佇む私を見てから、露骨に嫌な顔をする三咲だった。んまー、失礼な奴! それはこっちも同じ気分だっつーの。
「あらまあ、ごきげんよう三咲! それにしても金持家のボンボンお坊ちゃまがこんな場所で、それも一人で音ゲーで遊んでいるなんて超意外というか……ぷぷっ、失礼!」
さっきのプレイスタイルを思い出し笑いをする。挑発にも近い煽りに三咲はわなわなと身を震わせながらもギリギリにこらえてみせる。そしてそこからは私をガン無視。愛理の方にだけ体と顔を向けて会話を続けた。
「今日は睦月くんとかいないの?」
「他は家。今日は親父が帰ってんだよ。だからここにいる」
「えっ! 帰らなくていいの? お父さんってたしか海外に仕事に行ってて、すごい久しぶりに帰ってきてるんだよね?」
「別に、顔合わせても話すことねぇから。残りの三人に任せときゃいい」
「そっか、そうなんだ。……あっ、あのね後から桃尻さんとカラオケに行くんだけど、三咲くんもよかったらどうかな? 一緒に行かない?」
「は!?」
「は!?」
とんでもない提案に私と三咲の驚愕した声がゲーセン内に響き渡った。これは好きだからとかではなく、きっと一人ぼっちでいる三咲を気にした愛理の優しさから出た言葉。
それでも――冗談じゃない。認めるもんか。デートの邪魔をするに決まっている。例え地球がひっくり返って仲良く3Pになったとしても、最後に三咲を眠らせてから海に沈めてしまう。とにかくそのくらい無理! 阻止!! 絶対に阻止!!!
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