悪役令嬢になったんで推し事としてヒロインを溺愛しようと思う

マンボウ

文字の大きさ
上 下
60 / 84
ルート3 ヒロインのお見舞いをしよう!

座薬を入れたのは…?バレるわけにはいけないこの事実!

しおりを挟む
 薬。意味が隠れている単語に私以外の全員が疑問に思ったであろう。視線が一斉に恵の方に向けられる。私は私で青筋を立て、鋭い目つきで睨む。

 ばーーっかじゃないの?! 座薬プレイのことを皆にバラす気!? 「あれ、僕なにか変なことしちゃいました?」って顔するな、腹立たしい!

「薬って……?」

 睦月の質問に咄嗟のフォローなんて出来ない。アホな恵はそこで気づいたのか、流そうと軽く笑ったが、誤魔化しきれていない。と、そこへ愛理が思い出したように口と目を大きく開いて、時を移さずに血の気を引いていく。

「あれ? 私、薬飲んだっけ? あれ? え? だってアレは、あの薬は、ざ――」

「あああー、思いだしたっ! そいや昨日、おかゆ食べた後に私達が帰ったら薬飲みますって言ってたよ! うん!」

 座薬と言いかける前にスライディングで真っ赤な嘘を投入。私だけじゃフェアじゃない、あんたもこの嘘に乗っかれ! 恵にしか分からない角度で懸命な訴えを顔面に込め、連携プレーを求めた。

「うん、そうだったね。愛理くんは、ゆっくり薬を飲みたいと話していたよ」

 よっしゃナイス! 上手いこと嘘に乗っかってくれた!

「そう、でしたか?」

 お見舞いに来た二人がそんなことを証言したら信じるしかないのだろう。とすると愛理は目線を右上にして記憶を探しているようだが苦戦している模様。ありもしない事を言ったから、そりゃいくら辿っても出てこない。

「そうよ。高熱のせいで記憶が飛んでもおかしくないわ」

「確かに、あのときは頭がこうズーンとしてボーッとしてました。まさか記憶をなくすまでの風邪だったなんて……」

「うふふ、そんな日もあるある♪」

 恵との連携の甲斐あって、上手く自分で座薬を入れたと思い込ませることができた。好きな子に嘘をついてデタラメな出来事を信じさせたことに罪悪感が揺れ動いた。それでも真実を知られるのとどちらがいいか選べと聞かれると、嘘をつくしか道はない。

「二人が来てくれなかったら、入院していたかもしれません。本当にありがとうございました」

「んもぅ、そんなことないわよ。治したのはあなたの力なんだから」

「いいえ。この風邪が治ったのは、桃尻さんと恵先輩がお見舞いに来てくれたからだと思っています」

 どんぐりみたくクリクリした上目遣い、ツヤツヤのプルップルな唇、指通り良さげな毛先。それと私がハイヒールを履いているので身長差を埋めようと力いっぱい背伸び。感謝の気持ちが積載量オーバーして体に出ているらしい。

 ほああ~っ! 目の中に入れても痛くない。なんて可愛らしい存在なのだろうか。性的な意味でも、そうでなくとも……ううん、やっぱり性的な意味で抱きしめたい。場所は体育倉庫? それとも保健室? やだ、すっごい迷う。場所選びが結構肝なのよね。

「あれれ? パイセン、なんか顔赤くないですかぁ?」

「どうせキモいこと妄想してるんだろ」

「ば、バーロー! そんなわけないでしょうが!」 

 いかんいかんっと。もー、私ったらどうしてすぐに顔に出るかな? これは私だけの秘めた計画にしておこう。バレたら公開処刑の比べ物にならない制裁されちゃいそうだからね。――にしても、顔もだけど体が全体的に熱い。性におませな思春期だから一度ムラムラしたら収まりが効かないのかしら。青春だけに性春してる。ふぅ……。

 このポジティブ気味のパッパラパー思考は長く持たなかった。三時間目の授業中にぶっ倒れたのを機に保健室へ運ばれ、三十九度の高熱を叩き出しては若林が迎えに来て無事に早退。  

 一日寝りゃ治ると浅はかな考えは一晩で吹き飛ばされ、次の日も自室のベッドでうなされている私だった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...