悪役令嬢になったんで推し事としてヒロインを溺愛しようと思う

マンボウ

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ルート3 ヒロインのお見舞いをしよう!

えっ、イケメンはドジッ娘!?そんな情報、誰得〜!?

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 邪な気持ちと真面目に看病する気持ちが半々の中、私は人肌程度に蒸したタオルを愛理の額に点々と光る汗を拭き取ることに。すると意識を取り戻したらしく、うっすらと両目を開けて弱々しい声色を上げた。

「あ、れ……桃尻さん……と、恵先輩……? どうして……私、トイレから戻って……?」

「ふふ、お目覚め? あなた、倒れていたのよ。今回は玄関の鍵が開けっ放しだったから助かったけど、普段はそんな危ないことしちゃダメよ?」

「えぇ……そ、そうなんですか……? は、恥ずかしい……」

 耳たぶまで赤く染めた愛理は、あざとく布団を両手で持ってからすっぽりと顔を隠した。最高に可愛い。唇から垂れてきそうなほど口の中はよだれまみれ。

「大丈夫、熱があると正常な判断しにくいから仕方のないことよ。もうすぐでおかゆが完成するから待っててね。食べさせてあげる」

「そんな、悪いですよ」

「いいから。今日はうんと私に甘えていいわよ。付きっ切りで看病するつもりだから」

「すみません、ありがとうございます……」

「うふふ、お礼なんていいから! さ、身体を拭くからパジャマを脱いでもらえるかしら? 最初は胸からいくわね?」

「はい……」

 そして躇することもなく、パジャマの前にあるボタンをひとつずつ開けていき、私は白い素肌に咲く二つの蕾と再会を果たす。やはりとてつもない破壊力で、鼻の上辺りが大きくうずく。黒部ダムの並みの勢いで鼻血が放流しそうだった。

 それにしても愛理は下着をつけていないことを忘れているのか。はたまた熱があると正常な判断ができないのか。後者だったらもっと際どい部分を拭き取ることに使えちゃうわね。あとヨーグルトを食べさせて口の周りにつけるのも乙なもの。

 エロい妄想を繰り広げていると、キッチンにいるはずの恵がタイミングを見計らったかのように声をかけてきたのだった。

「おかゆが出来たよ。そこまで運んでくれるかい?」

「え!? あ、ああ、はい!」

 乳首に触れようとしたところだったから、めちゃくちゃ焦ったじゃない……。まさか背中にでも目玉があるんじゃあないわよね?

 恐る恐るキッチンへ行き、恵作のおかゆを持っていこうと左右の手に鍋つかみをはめれば、なにかひどく生ゴミが腐敗したような臭いが鼻を突き、しわくちゃになるぐらい顔全体をしかめる。

「オッエ!! ひっどい臭い……。ちょっと、なにかこぼしました?」

 鼻の両端をつまんで、何故か視界が不明な湯気で曇るキッチンに足を一歩二歩踏み入れると、そこには土鍋に真っ黒でドロドロの液体が山盛りになっていたのだ。しかも触手らしきものも生え、プシューと空気を抜いてしぼんでいっているが、生きているようにも感じた。おかゆならぬ、クリーチャーの爆誕。そんな気持ち悪いモノを目の当たりにした私は言うまでもなく、腰を床に落として大絶叫。

「いやああぁぁーー!! なによこれぇ!?」

「おかゆさ」

 ケロッと答える恵。これが食べ物だと信じて疑わない様子。マジかこの男……っ!

「おかゆなわけないでしょ! あんた、とんでもないクリーチャー生み出してんじゃないの! この一角だけベルセルクの世界観よ!? こんな物体を愛理に食べさせる気だったわけ!? ったくもう、食べ物を粗末にしてもったいない……」

「そっ、そんなにひどい出来かい? たしかに料理はあまりしないけれど、手順を間違えずに作ったんだけどなぁ……」

 ああ、本気だ。本気の目をして本気の戸惑いをしている。おかゆクリーチャーを食べた愛理が神経麻痺を起こして監禁ヤンデレルートに進むんじゃないかと裏を読んでいたけど、それは誤算だったということか……。そいや、今までしてきた恵ルートに料理を作るイベントとかなかった。料理音痴という新たな一面を知れたけど、鼻くそレベルでどうでもいい。

 
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