悪役令嬢になったんで推し事としてヒロインを溺愛しようと思う

マンボウ

文字の大きさ
上 下
51 / 84
ルート3 ヒロインのお見舞いをしよう!

ちょ待てよ!不穏な放課後!!

しおりを挟む
 ――時は放課後。

 クラスメイトたちは部活に行ったり、教室に無駄に居残ったりと有意義な学生時間を過ごしている横をトボトボと通り過ぎゆく私が向かった先は校門。何人もの女子生徒が校門に一人立つ人物に目を奪われている。その正体こそ、金持恵。遠くから教室まで迎えに行くと言われたけど、拒否して校門で待ち合わせして行こうと約束をしたのはいいが、近寄るどころか横に並んで歩きたくない。ブリブリドレスのJKとイケメンは確実に悪目立ちする。これなら他の三人の方がマシだった。

「やあ、桃尻くん」

「お待たせっしたー……」

 私は待っていた恵にテンション低めの挨拶をする。ヒールの先端に何故か大量の砂がついてはジャリジャリと耳障りな音を上げ、まるで私の荒れた心情を代弁しているかのようだった。周りにいる生徒、主に女子が「この二人が男女の関係!?」みたいなふうに見てくる。やめてよ違うから。全身を使って否定の雄叫びしてやりたい……っ!

「まずはコンビニに行って、愛理くんが軽く食べれるような物を買いに行こうか」

「はい」

 そんな恵は私の気も知らないで通常営業。爽やかなオーラを振りまきながら歩く後ろを私も睨みを利かせてついていく。二人っきりのお見舞いをぶち壊したあんたの罪は最大級に重い。今は大人しく従ってるけど、今後は覚悟しておくことね。

 掃き溜めるしかないむしゃくしゃを堪え、まずは近くのコンビニへ直行。病人でも食べれるヨーグルトに電子レンジで温める白米を購入。

 店に入り、出るまで何人の女性が恵をガン見していたことか。おばさんコンビニ店員に、お菓子を選ぶ幼女とその母親。学校帰りの女子中学生に偶然を装ったように出入口に立つ女子高生グループ、そして杖をつく白髪のおばあちゃん。一日で何人の女性ホルモンを活性化させてんのこの男は……。たしかに、かっこいい部類だとは思うけど、こうして一緒に歩いてもときめきゼロ。やっぱり私って愛理にしかときめかない一途な純情ってことが再確認されちゃった。――っていうか、これだけ異性から好意集まれば選び放題じゃない。どうして愛理にいくわけよ。

「恵先輩って、愛理のどこを見て好きになったんですか?」

 すごくすごく気になったわけではないが、愛理宅に着くまで何も話さないのもあれなので当たり障りのない質問をしてみることに。すると、

「んー、そうだね。そう聞かれると……どうだろう。すぐに答えられないな。気づいたら好きになっていたって言えばいいのかな? 桃尻くんは?」 

「私? そらもう初めて会ったときからですよ! 電流が膀胱が震えるぐらいビリッと痺れるっていうか、あの子のいろんな表情が見たいっていうか、でも知らない面を知るのも怖いっていうか……」

 そう早口で喋り倒す私に恵は唇に手を添えて笑う。

「本当に好きなんだね、愛理くんのこと」

「あったり前じゃないですか。言っときますけど正直なところ、今日も一人でお見合いに行きたかったぐらいです。誰かさんが仲間に告げ口して晒し首まがいな目に合ったり散々ですよ、まったく」

 場の勢いに任せて不満をぶつけても恵は眉の一本も変えずに笑みをキープしているだけであった。その微笑みは八割方嘘のように見える。サイコパスらしく、なにを考えているか検討もつかない。

 再びお互い無言状態となり、人か行き交う道を外れて静かな小道を歩いている中、何かを思い出したかのような口ぶりでこんなことを言い出した。

「僕も愛理くんのいろんな顔が見たいと思ったことがあるよ。でも、逆に僕だったら彼女が自分でも知らない一面を汲み取って導き出してあげたい。そして戸惑いながらもその色に染めあげていきたい」

 そのとき、桃尻の膀胱に電流走る。

 この先の未来がよくない、穏やかな暗示がされていない予感がーーというよりも、これ恵のヤンデレルートになりかけていない……?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った

冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。 「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。 ※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

処理中です...