悪役令嬢になったんで推し事としてヒロインを溺愛しようと思う

マンボウ

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ルート3 ヒロインのお見舞いをしよう!

これは詰み!おめーのフラグねぇから!

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 暴言まみれの内側を感づかれないように、私は両手で机上を叩くと早口にならない程度の速度でこう言った。

「サリバン先生、私たち十代の世界はとぉーってもシビアなんですよ? たった一日休んだだけでも友達との会話が置いてきぼりになったり、いない間に陰口を叩かれてたり、好き放題言われたりするんです。ドラマ版ライフみたいな犯罪まがいのいじめにつながりかねない落とし穴は、そこらじゅうにあるんです! どれだけ偏差値が高かろうが、進学校だろうがですよ! 現代の女子高生たちは、そんな荒波にもみくちゃにされながらなんとか生きているんです。たかが一日、されど一日。一日の遅れは今日の遅れ。松風さんはきっと不安と孤立を強く感じて、非常に心細くなっていることでしょう。そこで! 私、桃尻エリカが親友を代表して一日あったことを教えてあげるんです!」

 今はあれだけどサリバンにも女子高生時代があった。それに生きている年齢も倍。だからこそ女の嫌な柵もたくさん経験してきたはず。生徒を指導するという立場のサリバンならきっと理解してくれる。

「シャラップざます。そんなふざけた理由が通るほど世の中は甘くないざますよ。分かったら教室へ」

 理想は幻でしかなかった。サリバンは戯言を耳したといった感じで一蹴して会話を終了へ導く。あれだけ熱意のこもった私の思いを無駄にした。のみにならず、愛理のお見舞いルートをこいつによって閉ざされようとしている……。

 そんなこと、させるかっての――!

 いつもなら金持兄弟の誰かとゴングを鳴らすところだが、今日ばかりは戦場は生活指導室。若林がきめにきめた縦ロールをわなわなと震わせて戦闘態勢へと入る。

「あのですね先生? 正直申しますと、松風さんは少し前までクラスの女子数名から非情に卑劣な嫌がらせを受けていました。その事実は承知の上で? まさか生徒を守る教師が知らないとは言わせませんよ?」

 ……ま、その首謀者が元・桃尻エリカなんだけど。

 その情報が初耳だったらしく、死人のような青白い表情へと瞬時に変わるサリバンは、こちらへ押し寄せれば、

「それは本当なんざますの……?」

 この気迫、すぐにでも学年集会やらアンケートやら聞き取り調査しそうな流れにきちゃったかも。面倒事になる前にフォローしておこう。

「え、ええ……。ですが、私が嫌がらせをした犯人たちをボコボコにやっつけたので松風さんをいじめる者はいません!」

「ぼ、ボコボコ!? あーた、なんて野蛮なことを……っ!」

 なんで私に怒りの矛先が来るわけよ。

「とにかくそういった過去があったとだけ、お伝えしておきます。松風さんは私がお守りするってことで平和が保たれています。ので! しおりを渡してもらえないでしょうか?」

「そうざますか。桃尻さんのおかげで松風さんは楽しい学校生活を過ごせていると。――ですが、これとこれとは話は別ざます」

「はあぁー!? なんでよー!! 先生もJK時代過ごしたなら女の陰湿さとか友情の素晴らしさとか分かっているもんでしょ!!? もしかしてライフじゃ伝わらない? あっ、もしや家なき子世代ですか!? あんな感じのいじめが横行しているんですよ!」

「いえなき……? って、またその口ぶり、おやめなさい! はしたない!」

「違う? じゃあ……おしん! おしんなら先生も好きそうなので見ていますよね!?」

「黙りやがれざます!」

「うーん? 小公女セーラ……は、ちょっと若すぎるか」

「セーラぐらい知ってるざます!!」

 いじめシーンのある世代ドラマやアニメを次々を出したことにより、なんとなくサリバンの年齢は軽く判明したけれど、それはどうだっていい。私は林間学校のしおりとプリントがもらえる許可が欲しい。熱で苦しんでいるお友達に学校の話題を話して共有したい、どこにでもいる女子高生の純粋な思い。ただ、それだけだったのに……。

「桃尻さん。今日から二週間、生活指導室へ通いなさい」

 サリバンの怒りに触れたあまり、とんでもない落雷を落としてしまい、正座をさせられているのと、生活指導室通い通告。ここから挽回は無理。二週間もここに通えば、教室にいる三咲や睦月に愛理との性的な距離の差をぐっと縮められてしまう可能性大。

 ――詰んだ。

 するとちょうど、生活指導室の戸をノックする者がいた。

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