悪役令嬢になったんで推し事としてヒロインを溺愛しようと思う

マンボウ

文字の大きさ
上 下
45 / 84
ルート3 ヒロインのお見舞いをしよう!

「ヤ」るしかねぇ!お見舞いルート選択中!

しおりを挟む
 いやいや、寝ぼけてるの? これは見間違い。そそっかしさを期待をして文章を読み直す。何度も何度も何度も何度も……。風邪、休み、今日は行けない。三つの単語がどうしても受け入れられず、最後には声に出してまで読むことに。当たり前のことだが、文章内容が変わるわけがない。

「そ、んな……」

 腕を脱臼したようにダランとぶら下げては、携帯を絨毯の上へ落とす。

「どうかなさいましたか?」

 眉間には溜まっていく汗を早まる鼓動。動揺を隠せるわけもなく、見かねた若林から心配をされてしまう。

「今日……私、学校休む……」

「えっ!? どこか具合でも――」

「なしになったの、カラオケ。風邪で休むって。あの子がいない学校なんて、行っても意味ない。楽しくない。だから私も休む」

「あら、それは残念でしたね。ですが明日はきっと元気に登校してくると思うので、今日一日だけ頑張ってみませんか?」

「嫌よ!!! 行きたくないの!!! 楽しくないのもあるけど、話せる人いないし、逆に全員敵だもの!!」

「あは、は」

 そんな私に若林は苦笑いで対応。気軽に話せない人がいないことに突っ込んだり否定しないということは、友達いなさそうと認めているようなものね。ひっど~い。

「とにかく行かないから。他の使用人には適当に話つけといて」

「えーっとですね、体調不良以外での欠席はー……ちょっと、厳しいかと?」

「行きたくないってばあああぁー!!!」

 駄々っ子みたく手足をバタバタと動かして鼻ちょうちんを垂らして号泣。ヘドバン並に頭を振ったので髪はぐっちゃぐちゃ。鼻水は高そうなドレスにも数滴付着して不潔さ倍増。見た目はJK、中身はアラサーのすることだろうか。客観的に見たら結構ヤバい奴認定。だけどそれはそれ。

 現実世界の年齢は置いといて、登校拒否を意地でも成功させようとベッドに潜り込んでシクシクと嘘泣きを発動。どうよ、これでもうお手上げでしょう? あの子のいない学校に行ったって無意味。生真面目な金持四兄弟は平気で行くんでしょうけれど。

「メソメソ……メソメソ……」

 裏声を時々出しながら泣く演技。そんなとき、一気にシーツを剥ぎ取る若林と嘘泣きがバレる私のご対面。うわ、やりすぎたかしら。これには激怒?

「エリカ様。――チャンスですよ」

 違った。誇らしげなどや顔を突き出して、鼻息を荒めに話を続けていく。

「風邪ということはですよ、放課後にお見舞いへ行けばいいんです。そうすれば気の利いた子だと思わるだけでじゃなく、おかゆを作って家庭的アピールもできます。ご家族がいれば、挨拶も礼儀正しくすれば好印象間違いなしです!」

「若林。――あなた、天才ね!!! そうよ、お見舞いをすればいいのよ! あーもう、どうしてそんなことも思いつかなかったんだろ!? あなた本当にすごいわね。もしかして過去にそんなテクニックを使って……?」

「ええ、その……実は今、お付き合いしている彼です!」

 ポッ、紅色の花が若林の頬全体に咲き誇る。

「キャー、やるぅ! てか聞いてよ。相手のことなんだけど、実は……訳ありの一人暮らしなの」

「なんと……それはもう、ヤるしかないですね」

「ちょっとちょっと、なんで『や』がカタカナなのよ! 若林のエッチスケッチワンタッチー! じゃ、とりあえず学校には行くから、悪いけど最初から髪の毛直してくれる?」

「もちろんです。気合い入れていきましょう」

 気合いを入れる。若林の言葉に嘘はなく、今までで一番の出来だった。梅雨の湿気に負けない艶と潤いのある縦ロール。先の最後までパサつきや不揃いをを許さない。まるで一本一本に生命が吹き込められていそうだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

悪役令嬢のビフォーアフター

すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。 腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ! とりあえずダイエットしなきゃ! そんな中、 あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・ そんな私に新たに出会いが!! 婚約者さん何気に嫉妬してない?

処理中です...