悪役令嬢になったんで推し事としてヒロインを溺愛しようと思う

マンボウ

文字の大きさ
上 下
43 / 84
ルート2 ヒロインとテスト勉強会をしよう!

我ら生まれた時は違えど、ヒロインを思う気持ちは同じ!

しおりを挟む
 問いかけに対して、返事はすぐに来なかった。というよりかは、何か言い出せずに喉仏辺りでモゴモゴ鳴らしては、ブランケットに包まれていても言葉にすることを悩んでいるようなシルエットが見えた。

 自分から話しかけといてなんなのよ、とんでもないことをカミングアウトするんじゃなかろうな? 

 しばらくすると、決意をした雅人がかすれ具合のあるトーンでこんなことを口に出した。

「――ありがとうございます」

「なにに対して?」

 えっ、お礼? あの雅人が……? みたいな温かい気持ちにもなれない。鼻をほじりながら、冷めた返答を突っぱね返す。いやだってさ、本当に何に対して感謝しているのか不明なわけ。主語をね、もうちょっと頑張りましょうって感じ。

「愛理先輩と仲良くしてくれてのお礼ですっ!」

 今度はブランケットに丸まって、逆切れ気味に言い返す雅人。もうこれ以上は言いたくないの意思表示らしいが、知ったこっちゃない。

「だーかーらー、なんで私がお礼されなきゃいけないの? ちゃんと最後まで言いなさいよ。もしかして察してちゃん? いるいる、そういった子。いやだわ、めんどくさっ!」

「あ~もぉ! 分かりましたよぉ! ……パイセンと仲良くなってから愛理先輩に笑顔が増えたんですよ! だから毎日楽しい愛理先輩を見れるのは僕も嬉しいことですし、それは間接的にパイセンのおかげかなって、そう思っただけですぅ! 終わりです、おやすみなさい!」

「あら……そ……?」

 びっくり。ブランケットにくるまった状態のまま、大声を出してまで言うことかね。そこは男のプライドっていうの? 恥ずかしいなら恥ずかしいで胸の内で秘めておけばいいものを。やっぱり無理。末っ子キャラの雅人のことが一番苦手かも。顔を合わせば、愛理に隠れて憎たらしい態度でクソ生意気だけど、唯一分かり合える共通のことが判明した。

「ねぇ!」

「もおなんですかぁ~?」

「愛理を大事に思う気持ちは同じってことでいいのよね?」

「そうですねぇ~、そうしておきますよ。じゃあ僕はもう寝るんでぇ」

「そうね。明日はテストなことだし……あっ、そうそう!」

「まだなにかぁ?」

「寝っ屁したらごめんね」

「早く寝てください」

 それから私は自分でも驚くほど、瞬時に眠りにつくことができた。深い睡魔の波に流されて眠りに落ちていく間、なぜか雅人のピロートークが耳の中で再生されていく。隣に本命が眠っているのになんで男を思いながら寝なきゃいけないのやら。まあ、ほんのちょっとだけ本当の雅人と話し合えたのかな、なんて思ったり――。

 雨風が通り過ぎて太陽がサンサンと昇った朝、

「うわあああ~!! 遅刻するぅ~!! パイセン、愛理先輩! ヤバいですってぇ! 早く起きてください! どおして睦月にい起こしてくれなかったのぉ~!」

 ベッドの上で寝ている女子組は雅人のけたたましい悲鳴で飛び起きた。非情なことに他の三人はとっくに学校へ行ったと白髭執事に告げられた。金持ちなだけに今日だけ学校の制服を借りて登校しようと話に。どうしてこの家に女子制服まで常備してあるのかは聞かないけどさ……。

「ふぇ? 雅人くんと桃尻さん……どうして私の家にいるの……?」

「んもう、この寝ぼけっ子め! ここは愛理んちじゃないぞう? ……なんてことしてたら、本気でマジでヤバい時間じゃないの! はい愛理、服を脱ぐからバンザーイ!」

「ふぁい……」

「急いでくださぁ~い」

「うるせぇ! こっちは今から禁断お着換えタイムじゃ! 覗くな!」

 朝に弱い愛理をなんとか起こしてから服を着替えさせて、さりげなしに訴えられない程度のボディタッチ。もう遅刻確定と思っていたところへ、白髭執事がベンツで公道を爆走してくれたことにより、テストにはギリッギリで間に合い、無事に受けられた。

 え? 赤点は大丈夫だったのかって? うん、八十五点以上はとれて留年回避でダブルピースの人生薔薇色のはずが、今度は三人に「どうして三人同じ部屋で寝ていたのか、納得いく説明を」なんて私が主に責められてしまい、違う意味で吊り上げられてしまった。トホホ、乱パなんかするわけないじゃない。なによこのオチは。



 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?

荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」 そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。 「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」 「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」 「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」 「は?」 さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。 荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります! 第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。 表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

処理中です...