悪役令嬢になったんで推し事としてヒロインを溺愛しようと思う

マンボウ

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ルート2 ヒロインとテスト勉強会をしよう!

ヒロインをハートキャッチ!挑め、不可抗力作戦!

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「ホラー得意なんですか?」

「あまりしないけど、まあまあかしら?」

「すごーい! 頑張ってください!」

 好きな子の前では大きく見せたい、または強がる男の気持ちが痛いほど分かる。ここまでしたのなら、もう後には引けない。胸説立証のためとはいっても、苦手なホラーVRゲームは避けられない。まだドレス丈が長くて助かった。こんな大口を叩いておきながら、太もも辺りから冷や汗ダラダラのガクブルで震えているなんて誰も思うまい。

「はい、着けたらすぐにゲームが開始されるはずだよ」

「了解ですわ」

 けれどそんな逃げ出したい恐怖を乗り越えてこそ真実の愛なのだと、私は思う。

 恵から渡されたゴーグルを装着する、ごくわずかな短時間で愛理がどの位置にいるかを瞬時に把握。自分の位置から右斜め四十五度ぐらいで窓際辺り。

 愛理と私は二メートルも離れていないから小股三歩で動いて「ガチョーン」の手を鎖骨よりやや下方にしたらバストへ一本橋が架かるってわけ。私と愛理を結ぶレインボーブリッジは、誰にも封鎖させないんだから。ふふふ、やっばい。考えるだけで興奮してきた。というか、そもそもゲームの画面は直視せずに、目をつむって適当に怖がる演技をしていりゃいいじゃない。漫画でよくある不可抗力作戦よ。

「きゃぁぁ~思ったより怖いですわ~! いや~んゾンビが~!」

 VRゴーグルを身に着けた私は愛理がいると思われる方向へ腕を伸ばしながらフラフラと歩いていく。もち、ゾンビなんか見ていない。瞼に光が入り込まないぐらい完璧に閉じている。この辺りできっと何かが、柔らかなモノに触れる感覚がくるはず。ガチョーンポーズをブレさせず、固定して進むこと三歩目で、柔らかくズブズブと指の先が沼に沈んでいくような感覚を捕らえた。

「ほあ……ああぁ……っ」

 これ、が、大好きなあの子の……愛理の……胸……。ぷにぷにで、赤子を抱いているような尊さが血管を通して全身に注入されていく……っ!

「あああ~しゅきぃ~!!!」

 私が胸だと思って両手でこねくり回していたモノの正体は、カーテンの束だった。染色性にも優れては、ナチュラルな風合いと柔らかい肌ざわりが特徴の綿素材。そらもう、興奮MAXでいる私が勘違いしてもおかしくはない。しかしその奇行じみた行動を囲む周囲の奴らがいるわけであって、

「桃尻さん落ち着いてください。それはカーテンですよ」

「見るな。見たら死ぬぞ」

「ん? おやおや、おかしいな。VRと同じ画面が映し出されているテレビには、難易度を決めるメニュー段階で止まっているんだけどな」

「パイセンには何か見えているのかなぁ? きも~っ!」

「どっちかというと……桃尻さん自体がホラーだよね……」

 皆が白けていることに気づかずに、私は長々とカーテンに欲情しまくったのを最後にゲーム大会はあっけなくお開きとなり、私語厳禁のクソ真面目でつまらない勉強会がまた開始されてしまった。まあ、赤点回避は絶対にしなければならないので、ちょびっと集中すれば時間は経つ。白髭執事が夕飯をを用意をしてくれて、有難く召し上がってお邪魔しましたの雰囲気が流れたときのこと。

 一人のメイドが慌てた様子で小走りをしてきたかと思えば、こう言った。

「大変です。予想もしていない大雨で道路が冠水して通れないとの情報が入りました。そこでお二方の安全確保のため、本日は金持家へ一泊するよう海外にいるお館様から直々に指示が入りました」

 なっ、なんだって――!?
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