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ルート2 ヒロインとテスト勉強会をしよう!
恋はスリル、ショック、殺意!
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「もちろんよ。私もそこまで得意なわけじゃないから楽しんでやりましょう」
「はい、お願いします」
卑猥な想像をしても愛理にはニッコリと最高の笑顔を振りまいた。
「お隣失礼するわね」
大画面を前に愛理の左隣に座って、コントローラーで走るコースを選択する。選んだのは初心者向きの優しい障害が比較的少なめコース。でもこれは常に左カーブを走行するため、ゲームに慣れない愛理は強制的に私のいる左側へドーンってわけ。適当にしているようで、計算しているのも私のポリシーよ。男たちは自分のスーパーキノコでも育ててなさい。
そしてレースの始まるカウントがされる。愛理はスリー、ツーのときも
「うう、ちゃんと操作できるといいな……」
蚊の鳴くような声でこぼす。ゲームでも本気で取り組もうとするあなたは本当に最高よ。熱い思いで恋焦がれる中、カウントがゼロになった同タイミングでアクセルのボタンを押した。
「すごい! 桃尻さん早い!」
「あらやだ偶然よ、偶然」
嘘である。このコースは現実世界にいた頃、馬鹿みたく毎日のように走り回っていたので目を閉じてもプレイできるけど、本気ではやらない。
「追いかけてごらんなさーい」
「ああっ、待ってください!」
「オホホ、こちらよー」
「あとちょっと、えい!」
十分挽回できる距離を保って走行するのが大事。そう、これこそ画面越しの恋人追いかけっこ。
しかし忘れちゃならない。左カーブに差し掛かるのはそろそろなのだ。期待に胸と鼻の穴を膨らませながら、今か今かと肩にくるぬくもりを待ちわびていると、
「きゃっ! 倒れちゃう!」
ふわりといい香りを振りまきながら、スローモーションでこちらに倒れてくる愛理。来た!! さあおいで、我が愛理!!
ぶつかるまで後、もう少し――のときに、愛理の体をガシッと支える者がいた。
「あぶねーな」
み、みみみみ……三咲ぃ――!? なにしとんじゃワレェ!!!!
本来なら今頃ごっつんこ☆からの押し倒しイベント大発生。悲惨な現状を目の当たりにし、コントローラを落としそうになった。ヒロインが倒れたことにより、金持四人兄弟はワラワラと群がり逆ハーレムを作り上げていく。
「大丈夫……? このゲームは酔う人もいるらしいから……」
「ごめんね。ちょっと目が回っちゃったみたいで」
「それは大変だ。横になるといいよ。歩けるかい?」
恵は肩を貸す名目でボディタッチしまくり。本人にその意図があろうとなかろうとも、恋愛イベント発生中の文字が浮かびあがっている。失神して泡を吹きかけていたら、雅人が横へ座りだした。それもちょこんといった効果音ではなく、ドカッと男らしく荒々しさを現した感じで。
「じゃあレースの続きは僕に任せてください。愛理先輩の仇は僕がとりますよぅ」
「は?」
もうレースは中断でしょ。言いかけようとすれば、煽ったような口ぶりでこんなことを言い出した。
「あれれ~? もしかして中断するんですかぁ? 僕は桃尻パイセンの走りってやつが見たいですぅ~」
そんなことを言っておきながら私を潰そうとする気満々なのが伝わる。しかもその本音を隠そうともしない。これだけ喧嘩を売られたら、そりゃもう買うしかない。
「いいわ。最初からやりましょう」
「わ~い、楽しみで~す」
十年とちょっとを生きたショタもどきが。人生ってやつを叩きこんでやるわ。このレースに勝って、どちらが愛理に相応しいのか決めてやる――!
「はい、お願いします」
卑猥な想像をしても愛理にはニッコリと最高の笑顔を振りまいた。
「お隣失礼するわね」
大画面を前に愛理の左隣に座って、コントローラーで走るコースを選択する。選んだのは初心者向きの優しい障害が比較的少なめコース。でもこれは常に左カーブを走行するため、ゲームに慣れない愛理は強制的に私のいる左側へドーンってわけ。適当にしているようで、計算しているのも私のポリシーよ。男たちは自分のスーパーキノコでも育ててなさい。
そしてレースの始まるカウントがされる。愛理はスリー、ツーのときも
「うう、ちゃんと操作できるといいな……」
蚊の鳴くような声でこぼす。ゲームでも本気で取り組もうとするあなたは本当に最高よ。熱い思いで恋焦がれる中、カウントがゼロになった同タイミングでアクセルのボタンを押した。
「すごい! 桃尻さん早い!」
「あらやだ偶然よ、偶然」
嘘である。このコースは現実世界にいた頃、馬鹿みたく毎日のように走り回っていたので目を閉じてもプレイできるけど、本気ではやらない。
「追いかけてごらんなさーい」
「ああっ、待ってください!」
「オホホ、こちらよー」
「あとちょっと、えい!」
十分挽回できる距離を保って走行するのが大事。そう、これこそ画面越しの恋人追いかけっこ。
しかし忘れちゃならない。左カーブに差し掛かるのはそろそろなのだ。期待に胸と鼻の穴を膨らませながら、今か今かと肩にくるぬくもりを待ちわびていると、
「きゃっ! 倒れちゃう!」
ふわりといい香りを振りまきながら、スローモーションでこちらに倒れてくる愛理。来た!! さあおいで、我が愛理!!
ぶつかるまで後、もう少し――のときに、愛理の体をガシッと支える者がいた。
「あぶねーな」
み、みみみみ……三咲ぃ――!? なにしとんじゃワレェ!!!!
本来なら今頃ごっつんこ☆からの押し倒しイベント大発生。悲惨な現状を目の当たりにし、コントローラを落としそうになった。ヒロインが倒れたことにより、金持四人兄弟はワラワラと群がり逆ハーレムを作り上げていく。
「大丈夫……? このゲームは酔う人もいるらしいから……」
「ごめんね。ちょっと目が回っちゃったみたいで」
「それは大変だ。横になるといいよ。歩けるかい?」
恵は肩を貸す名目でボディタッチしまくり。本人にその意図があろうとなかろうとも、恋愛イベント発生中の文字が浮かびあがっている。失神して泡を吹きかけていたら、雅人が横へ座りだした。それもちょこんといった効果音ではなく、ドカッと男らしく荒々しさを現した感じで。
「じゃあレースの続きは僕に任せてください。愛理先輩の仇は僕がとりますよぅ」
「は?」
もうレースは中断でしょ。言いかけようとすれば、煽ったような口ぶりでこんなことを言い出した。
「あれれ~? もしかして中断するんですかぁ? 僕は桃尻パイセンの走りってやつが見たいですぅ~」
そんなことを言っておきながら私を潰そうとする気満々なのが伝わる。しかもその本音を隠そうともしない。これだけ喧嘩を売られたら、そりゃもう買うしかない。
「いいわ。最初からやりましょう」
「わ~い、楽しみで~す」
十年とちょっとを生きたショタもどきが。人生ってやつを叩きこんでやるわ。このレースに勝って、どちらが愛理に相応しいのか決めてやる――!
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