悪役令嬢になったんで推し事としてヒロインを溺愛しようと思う

マンボウ

文字の大きさ
上 下
33 / 84
ルート2 ヒロインとテスト勉強会をしよう!

愛しさと切なさを兼ね備えている、愛理!

しおりを挟む
 それからエスパー白髭の指示なのか若いメイドたちが入室して来ては、台車に載せたティーカップを鳴らさないよう一生懸命に、そしてどこか初々しくお茶を注いでいく。

 やられて当然といったお坊ちゃまではない四人兄弟。メイドがお茶を準備している間に勉強ができる環境にしようと、テーブルやらクッションやらを次々とセッティング。テーブルはシンプルイズベストのブラウン。手触りとか質感が無印良品さがある。なんだかちょっと実家に戻ってきた感があって、ホッとした~! あれ、裏側に文字が押されているえっと、メイドイン、フランス……。私の目利きは転生してご令嬢になろうが変わらないってこと……。

「じゃあ今から各自それぞれ勉強していこう。二人は分からない問題があったら僕や睦月になんでも聞いてね」

「恵先輩と睦月って、あとの二人は?」

「桃尻パイセンと違って課題すれば大体の点数はとれるんですよぅ。適当に読書でもしてますのでお気になさらず勉強頑張ってくださぁ~い」

「俺は課題もしなくても一位とれるから」

 大きいクッションに寝転んでいる雅人に、寝転がってスマホ画面に集中する三咲。勉強しないんだったらなんでここにいる。

「オホホ、お勉強のお邪魔になるのでご自分の部屋に行かれたらどうかしら?」

「ええ? 僕たち邪魔ですか?」

「ううん、そんなことないよ。みんなで一緒にいるとお昼休みみたくって楽しい」

「わ~い、愛理先輩やっさしい!」

 すると雅人は、猫なで声をしながら我が愛理へと近寄っていく。恨みを込めたガン飛ばしを嘲笑うかのように雅人は私にだけ分かる角度で口角を上げた。実にあざとい。愛理が拒否らないことを知っているくせして――!

「三咲くんも、分からないとこ教えてくれると嬉しいな」

「気が向いたらな」

 スマホから目線を離さずツンツンとした態度でも素早い返答。こいつもこいつで分かりやすい男。

「ちょっと三咲、あんたスマホばっかしか見てないけど何かゲームでもしてんの? モンスト? それともグラブル? 今なんのコラボしてんの?」

「喋んな尻」

「すみません、よく聞こえませんでした~。もしかしてデレマス? 誰のプロデューサーしてんの? ねぇってば!」

 冗談っぽく詰め寄っていけば……バンッ! 無言でブチ切れた三咲にクッションを投げつけられてしまった。

「こらこら、三咲に話しかけるよりも今日は勉強が優先だよ。特に君はね」

「チッ、反省してまーす」

「頑張りましょうね、桃尻さん!」

「うん、がんばろお☆」

「すごい変わり様……」

 ノートと教科書をテーブルいっぱいに広げて、位置は愛理の隣を確保。前に睦月と恵がいようとも身体的距離が近いのはこっち側。どんなハプニングが起きようとも男たちの恋愛フラグは全身全霊で阻止してみせる。だから愛理、あなたは私だけを見つめてほしい。リップのことは、思い違いだと流すから。

 安定して脈打つ鼓動が切なく鳴った。彼女の肩と自分の肩は数十センチしかないのに、ものすごい遠くにいる気がしてならない。

 午前九時半、テスト勉強会開始――。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

【完結】結婚式前~婚約者の王太子に「最愛の女が別にいるので、お前を愛することはない」と言われました~

黒塔真実
恋愛
挙式が迫るなか婚約者の王太子に「結婚しても俺の最愛の女は別にいる。お前を愛することはない」とはっきり言い切られた公爵令嬢アデル。しかしどんなに婚約者としてないがしろにされても女性としての誇りを傷つけられても彼女は平気だった。なぜなら大切な「心の拠り所」があるから……。しかし、王立学園の卒業ダンスパーティーの夜、アデルはかつてない、世にも酷い仕打ちを受けるのだった―― ※神視点。■なろうにも別タイトルで重複投稿←【ジャンル日間4位】。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

処理中です...