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ルート2 ヒロインとテスト勉強会をしよう!
意味深なリップ、それは誰のため!?
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「これは影からジュースを飲むところ、これは体育の時間に走っているところを激写したやつ。これは準備運動バージョンで――」
何十枚もの盗撮画像をスクロールをして一枚ずつアルバムに整理していた最中、後ろから駆け足でこちらへ走ってくる音がした。
「遅れちゃってごめんなさい!」
ハッハッと荒い息が混じった色っぽい声、愛理だ。通常よりワントーン上がっているのがまたいい!
「ずぇ~んずぇん、待っていませんわよ!」
余裕ある素振りをして体ごと振り返れば、そこにはシフォン素材の白いブラウスに紺色のフレアスカート。そして安定感のある低いローヒールパンプスを履いた、清楚系コーディネートをした愛理がいたのだ。ゲーム内のデートイベントはワンピースしか見たことがなく、このブラウスとスカートは初めて目にする。ゲームでも設定資料集にも載っていない、完全プライベートコーデということになる!
「いやあああぁー!! なにその服、超可愛いんですけどゅっ!! それ以上可愛くなってどうするの!? 全世界の女性が嫉妬しちゃうわよ!!?」
「そ、そんなことn……」
「あるっっ!!!!!!」
これだけで破壊力は相当ヤバいというのに、やはり女の子。今日は可愛いお顔も張り切って一段とおめかし。石鹸の香りがふんわりと風に乗り、私の鼻へ入り込んでいく。滅多に見れない校則禁止の色つきリップも塗って、唇が艶やかな富士の山を描く。このリップはデートイベントになると必ずつける物なので、誰とは決めていなくても、少なからず恋愛意識を持っていることが分かる。
「じゃあ、行きましょう」
「はぁ~い」
見慣れない服と休日スタイルに鼻下を伸ばしてデレデレ。こんな可愛い愛理を産んでくれたお母様にも感謝感激雨あられ。ああ~んっ、今から男の家に行くけど推しの隣で歩いているだけでも十分幸せ~!
「桃尻さん、金持くんたちの家に行くのって……なんだか緊張しませんか?」
「そう? 全然、これっぽっちも感じていませんわ!」
口には出さないが、桃尻家より豪邸だったら散々飲み食いしまくって最後に部屋を荒らしに行く覚悟でいる。
「すごいですね。実は私、男の子の家に行くの生まれて初めてなんです。だから服装もこんなのでいいのか、すごく悩んじゃって……変、じゃないでしょうか?」
「全くもって変じゃないですわよ。常識的に見れば、私の方が変ですわ。だから自信持って!」
「本当にそうでしょうか?」
愛理はいきなり立ち止まると審査してくださいといった感じで、くるりと一周。妖精のようで、あざとさ満点でベリーグッド。なのだが、下唇を甘噛みして恥じらう表情は私を通り越して異性を意識する匂いがした。
デートのときにしか塗らないリップ。まさか、塗ってきたのって……あいつらのため?
違う。一方通行の決めつけはよくない。これはゲームとは違う進み方をしている場合だってある。独りよがりの暴走は死亡フラグの元なんだから。――と思いつつも、頭がワンワンと鳴って金持家に到着するまで愛理との会話は上の空だった。
何十枚もの盗撮画像をスクロールをして一枚ずつアルバムに整理していた最中、後ろから駆け足でこちらへ走ってくる音がした。
「遅れちゃってごめんなさい!」
ハッハッと荒い息が混じった色っぽい声、愛理だ。通常よりワントーン上がっているのがまたいい!
「ずぇ~んずぇん、待っていませんわよ!」
余裕ある素振りをして体ごと振り返れば、そこにはシフォン素材の白いブラウスに紺色のフレアスカート。そして安定感のある低いローヒールパンプスを履いた、清楚系コーディネートをした愛理がいたのだ。ゲーム内のデートイベントはワンピースしか見たことがなく、このブラウスとスカートは初めて目にする。ゲームでも設定資料集にも載っていない、完全プライベートコーデということになる!
「いやあああぁー!! なにその服、超可愛いんですけどゅっ!! それ以上可愛くなってどうするの!? 全世界の女性が嫉妬しちゃうわよ!!?」
「そ、そんなことn……」
「あるっっ!!!!!!」
これだけで破壊力は相当ヤバいというのに、やはり女の子。今日は可愛いお顔も張り切って一段とおめかし。石鹸の香りがふんわりと風に乗り、私の鼻へ入り込んでいく。滅多に見れない校則禁止の色つきリップも塗って、唇が艶やかな富士の山を描く。このリップはデートイベントになると必ずつける物なので、誰とは決めていなくても、少なからず恋愛意識を持っていることが分かる。
「じゃあ、行きましょう」
「はぁ~い」
見慣れない服と休日スタイルに鼻下を伸ばしてデレデレ。こんな可愛い愛理を産んでくれたお母様にも感謝感激雨あられ。ああ~んっ、今から男の家に行くけど推しの隣で歩いているだけでも十分幸せ~!
「桃尻さん、金持くんたちの家に行くのって……なんだか緊張しませんか?」
「そう? 全然、これっぽっちも感じていませんわ!」
口には出さないが、桃尻家より豪邸だったら散々飲み食いしまくって最後に部屋を荒らしに行く覚悟でいる。
「すごいですね。実は私、男の子の家に行くの生まれて初めてなんです。だから服装もこんなのでいいのか、すごく悩んじゃって……変、じゃないでしょうか?」
「全くもって変じゃないですわよ。常識的に見れば、私の方が変ですわ。だから自信持って!」
「本当にそうでしょうか?」
愛理はいきなり立ち止まると審査してくださいといった感じで、くるりと一周。妖精のようで、あざとさ満点でベリーグッド。なのだが、下唇を甘噛みして恥じらう表情は私を通り越して異性を意識する匂いがした。
デートのときにしか塗らないリップ。まさか、塗ってきたのって……あいつらのため?
違う。一方通行の決めつけはよくない。これはゲームとは違う進み方をしている場合だってある。独りよがりの暴走は死亡フラグの元なんだから。――と思いつつも、頭がワンワンと鳴って金持家に到着するまで愛理との会話は上の空だった。
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