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ルート1 ヒロインとお近づきになろう!
話して触れて感じて、あの子への温かい気持ち!
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「松風さん、ごめんなさいね! 私の元取り巻き立ちがあなたの靴をこんなところに置いたみたいですわ! 今から取りに行くのでそちらで鑑賞なさってくださいまし~!」
さっきまでの腰抜けは吹っ飛んだ。愛理へブンブンと手を降っては、鼻血が溢れそうな興奮状態へと高まっていく。愛ってすごい。好きな子を見ただけで、このみなぎるパワー。今ならなんだってできそうだ。
「危険です、桃尻さん! 私の靴なんかどうでもいいですからやめてください!」
「うふふっ、大丈夫ですわ」
「ダメです!」
愛理の反応はもっとも一般的。だけど私は自分でも認める、頭にある大事なネジが狂っている。だからそこで「はい」と言わず、不安げな様子で大声を出して心配してくれる行為ますます熱が上がっていく。なんなく前屈みになって、あと少しで靴に手が届くといったところで、身体は動かなくなった。いや、動けなくなっていたという表現が正しい。
私愛理の両目から涙がはらはらと落ちていっては、絞り出すようにこう言った。
「お願いですから、やめてください……っ」
泣きじゃくる姿はどんな酷い言葉よりも心を抉った。私が動けば、彼女は涙を流してしまう。言いようのない絶望にも苛まれ、好きな子をまた泣かせてしまった後悔が糸のように絡みついてくる。
違う。あなたを泣かすためにしたんじゃない。傷つけるためでもない。こんなはずじゃなかった。
曲げていた膝を伸ばして、しっかりと柵に手をついてから、身が焼き切れそうな痛い思いを吐き出したかったからか、意識とは裏腹に自然と唇が動いていた。
「ごめんなさい。泣かすつもりはなかったの……。あなたのことが本当に好きだった。ずっと前から、どんなに落ち込んだ日でも、疲れた日でも、あなたがそこにいるだけで私は生きるパワーをもらっていた。だからこうして目の前に、実際に触れられて会えることが本当に、すごくすごく嬉しかった……」
向こうからしたら何を言っているのか分からないと思う。今度こそ頭のおかしい奴って、引かれちゃったな。潤む瞳を手の平でこすって、顔を前にすれば、
「戻りましょう、桃尻さん」
愛理はこちらに手を伸ばしていた。頬にえくぼがでた、人のいい優しい笑いをつけて。
「まったく、あなたって子は……大好きよ……」
救われたような喜びで胸が波をうっては、視界が徐々にぼやけていく。温かい気持ちでいっぱいいっぱい。また後から改めて気持ちを伝えよう。そしてあの四人とも正々堂々戦ってやる。
「あの靴は、先生に説明して取ってもらうことにします」
「そうですわね。私もご一緒に付き合いましてよ」
「そんな悪いです」
「いいんですのよ。元はといえば、私が蒔いたようなものですわ」
「あはは、じゃあお言葉に甘えて」
私と愛理は微笑みなが互いの手を握ることに成功。後は柵を跨いで向こうの安全な場所へ行くだけ。危険なことはもうないであろうと、ほんのわずかな気の緩みが大敵だった。
「はへっ?」
こんなときにかぎって、風が大きく吹き荒れた。と同時に愛理の細い腕の掴んでいた握力が弱まっては、身体の重心が後ろへ倒れていく。私の後ろは、柵もない、剥き出しの外の世界。
下へ落ちていく感覚は、面白いほどスローモーションだった。
さっきまでの腰抜けは吹っ飛んだ。愛理へブンブンと手を降っては、鼻血が溢れそうな興奮状態へと高まっていく。愛ってすごい。好きな子を見ただけで、このみなぎるパワー。今ならなんだってできそうだ。
「危険です、桃尻さん! 私の靴なんかどうでもいいですからやめてください!」
「うふふっ、大丈夫ですわ」
「ダメです!」
愛理の反応はもっとも一般的。だけど私は自分でも認める、頭にある大事なネジが狂っている。だからそこで「はい」と言わず、不安げな様子で大声を出して心配してくれる行為ますます熱が上がっていく。なんなく前屈みになって、あと少しで靴に手が届くといったところで、身体は動かなくなった。いや、動けなくなっていたという表現が正しい。
私愛理の両目から涙がはらはらと落ちていっては、絞り出すようにこう言った。
「お願いですから、やめてください……っ」
泣きじゃくる姿はどんな酷い言葉よりも心を抉った。私が動けば、彼女は涙を流してしまう。言いようのない絶望にも苛まれ、好きな子をまた泣かせてしまった後悔が糸のように絡みついてくる。
違う。あなたを泣かすためにしたんじゃない。傷つけるためでもない。こんなはずじゃなかった。
曲げていた膝を伸ばして、しっかりと柵に手をついてから、身が焼き切れそうな痛い思いを吐き出したかったからか、意識とは裏腹に自然と唇が動いていた。
「ごめんなさい。泣かすつもりはなかったの……。あなたのことが本当に好きだった。ずっと前から、どんなに落ち込んだ日でも、疲れた日でも、あなたがそこにいるだけで私は生きるパワーをもらっていた。だからこうして目の前に、実際に触れられて会えることが本当に、すごくすごく嬉しかった……」
向こうからしたら何を言っているのか分からないと思う。今度こそ頭のおかしい奴って、引かれちゃったな。潤む瞳を手の平でこすって、顔を前にすれば、
「戻りましょう、桃尻さん」
愛理はこちらに手を伸ばしていた。頬にえくぼがでた、人のいい優しい笑いをつけて。
「まったく、あなたって子は……大好きよ……」
救われたような喜びで胸が波をうっては、視界が徐々にぼやけていく。温かい気持ちでいっぱいいっぱい。また後から改めて気持ちを伝えよう。そしてあの四人とも正々堂々戦ってやる。
「あの靴は、先生に説明して取ってもらうことにします」
「そうですわね。私もご一緒に付き合いましてよ」
「そんな悪いです」
「いいんですのよ。元はといえば、私が蒔いたようなものですわ」
「あはは、じゃあお言葉に甘えて」
私と愛理は微笑みなが互いの手を握ることに成功。後は柵を跨いで向こうの安全な場所へ行くだけ。危険なことはもうないであろうと、ほんのわずかな気の緩みが大敵だった。
「はへっ?」
こんなときにかぎって、風が大きく吹き荒れた。と同時に愛理の細い腕の掴んでいた握力が弱まっては、身体の重心が後ろへ倒れていく。私の後ろは、柵もない、剥き出しの外の世界。
下へ落ちていく感覚は、面白いほどスローモーションだった。
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