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ルート1 ヒロインとお近づきになろう!
あの子のためなら……桃尻、愛の罪滅ぼし!
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私は愛理に嫌がらせをしてはいない。
だけど、私が今の今まで散々これに近いようなことを彼女にしては、取り巻きを味方につけて、楽しんでいた。さっき見た、愛理の怯えた様子。決して私が手を下していなくても、取り巻きたちが勝手にやる。きっと今までもこうだったに違いない。
私である、桃尻エリカの存在が全てそうさせたんだ――。
階段を飛びをして駆けあがっていくのと同時に、息づかいも荒くなる。通り過ぎる生徒たちが異様な目つきで私を見るため振り返っている。それも無理もない。私は今、大量に涙を流しても顔を隠したり、拭う動作もしない。恥知らずな泣きっ面が堂々と疾走しているから。
苦しい、すごく苦しい。この苦しさは呼吸なんかじゃない。胸が苦しいのだ。好きな子が近いのに近いければ近いほど、傷つけてしまう。そんなやり場のない、捨てることもできない痛みで張り裂けそうだった。
「あったっ!」
屋上へ到着すれば、上履きがあった。あったのはいいが、柵の向こう側に置いてある。
「あいつら、人間じゃない……」
こんなの死ねって言っているようなもの。ふつふつと湧き出る苛立ちを抱いて腕をまくって、ボリューミーなスカートをたくし上げる。
そしてゴクリと唾を飲んでから片足を上げて注意深く柵を乗り越えていく。高所恐怖症でないにしても、鼻から口先にかけて戦慄が走る。ここからの眺めは歩いている人間がごまのように小さい。足を踏み外せば、コンクリートの地面に真っ逆さま。それだけはなんとしても避けたい。
「靴を、とりあえず靴だけを、手でキャッチすればいいのよ!」
私はもう柵の向こう側。すなわち飛び降り寸前のような格好となっている。柵から手を離さない、これは絶対。そんなマイルールを決めてから淵にちょこんとある靴へ手を出すも、全然届かない。立って取るのは無理。これは前屈みにならないととれない。
そんなこと嫌だ、無理、やりたくない。そんなことをしたら身が縮みそう。怖気づいて泣きそうになるも、そんな思いと反比例するかのように私は膝を急がず焦らず、安全を確かめながら曲げていく。馬鹿な思いなんか消えてなくなれ。これは私の責任だ。やりたくないという選択肢はない。やらなければならない!
そのとき、強い風が予告なしに吹き荒れる。
「うわああっ!」
我が身が引きちがれる悲鳴をこぼす。風があることを油断していた。今のが風がもう少し強く吹いていた絶対にバランスを崩して落ちていた。落ちることを想像しただけでゾッとする。
「やばいかも、これ……いけると思ったんだけどな……そ、そうだ。楽しいことでも考えないと! これは……そう、上級者向けのアスレチックよ! こんなのカイジの鉄骨渡りからしたらっ、全然全く、軽いもんじゃない! えへへ、そうよそうよ! 愛理への愛はこんなもんじゃないんだからっ!」
とか言いながら、一直線に鼻水を垂らす。身体はもう既に戦慄を覚えてしまったので動くことも難しい。子猫が木の上に登って降りられなく気持ち、すっごい分かる。
「どうしよう、最悪ここで桃尻家のヘリで助けを……あ! スマホ、カバンの中じゃないの! もおおお!」
我ながらのドジっ子属性に半分呆れては独りで大騒ぎ。こんなときに都合よく屋上なんかへ誰も来ないはず……そう諦めかけていたとき、扉が開いた。私は開く前からそれが誰なのか匂いで察知した。
「桃尻さん!?」
ビンゴ、愛理だ――!
よおっし、愛理のためにいいところ見せて頑張っちゃうぞう☆
だけど、私が今の今まで散々これに近いようなことを彼女にしては、取り巻きを味方につけて、楽しんでいた。さっき見た、愛理の怯えた様子。決して私が手を下していなくても、取り巻きたちが勝手にやる。きっと今までもこうだったに違いない。
私である、桃尻エリカの存在が全てそうさせたんだ――。
階段を飛びをして駆けあがっていくのと同時に、息づかいも荒くなる。通り過ぎる生徒たちが異様な目つきで私を見るため振り返っている。それも無理もない。私は今、大量に涙を流しても顔を隠したり、拭う動作もしない。恥知らずな泣きっ面が堂々と疾走しているから。
苦しい、すごく苦しい。この苦しさは呼吸なんかじゃない。胸が苦しいのだ。好きな子が近いのに近いければ近いほど、傷つけてしまう。そんなやり場のない、捨てることもできない痛みで張り裂けそうだった。
「あったっ!」
屋上へ到着すれば、上履きがあった。あったのはいいが、柵の向こう側に置いてある。
「あいつら、人間じゃない……」
こんなの死ねって言っているようなもの。ふつふつと湧き出る苛立ちを抱いて腕をまくって、ボリューミーなスカートをたくし上げる。
そしてゴクリと唾を飲んでから片足を上げて注意深く柵を乗り越えていく。高所恐怖症でないにしても、鼻から口先にかけて戦慄が走る。ここからの眺めは歩いている人間がごまのように小さい。足を踏み外せば、コンクリートの地面に真っ逆さま。それだけはなんとしても避けたい。
「靴を、とりあえず靴だけを、手でキャッチすればいいのよ!」
私はもう柵の向こう側。すなわち飛び降り寸前のような格好となっている。柵から手を離さない、これは絶対。そんなマイルールを決めてから淵にちょこんとある靴へ手を出すも、全然届かない。立って取るのは無理。これは前屈みにならないととれない。
そんなこと嫌だ、無理、やりたくない。そんなことをしたら身が縮みそう。怖気づいて泣きそうになるも、そんな思いと反比例するかのように私は膝を急がず焦らず、安全を確かめながら曲げていく。馬鹿な思いなんか消えてなくなれ。これは私の責任だ。やりたくないという選択肢はない。やらなければならない!
そのとき、強い風が予告なしに吹き荒れる。
「うわああっ!」
我が身が引きちがれる悲鳴をこぼす。風があることを油断していた。今のが風がもう少し強く吹いていた絶対にバランスを崩して落ちていた。落ちることを想像しただけでゾッとする。
「やばいかも、これ……いけると思ったんだけどな……そ、そうだ。楽しいことでも考えないと! これは……そう、上級者向けのアスレチックよ! こんなのカイジの鉄骨渡りからしたらっ、全然全く、軽いもんじゃない! えへへ、そうよそうよ! 愛理への愛はこんなもんじゃないんだからっ!」
とか言いながら、一直線に鼻水を垂らす。身体はもう既に戦慄を覚えてしまったので動くことも難しい。子猫が木の上に登って降りられなく気持ち、すっごい分かる。
「どうしよう、最悪ここで桃尻家のヘリで助けを……あ! スマホ、カバンの中じゃないの! もおおお!」
我ながらのドジっ子属性に半分呆れては独りで大騒ぎ。こんなときに都合よく屋上なんかへ誰も来ないはず……そう諦めかけていたとき、扉が開いた。私は開く前からそれが誰なのか匂いで察知した。
「桃尻さん!?」
ビンゴ、愛理だ――!
よおっし、愛理のためにいいところ見せて頑張っちゃうぞう☆
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