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ルート1 ヒロインとお近づきになろう!
昨日の敵は今日の友!?そんなものまぼろし~!
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全員が桃尻の悪行を見てきたのだから、私はとにかく批判を受け止めるしかない。泣きそうな心情を持ちこたえつつ、行き場のない指先を一人で子どものように無意識にいじっていれば、今度は恵は話す素振りを見せた。また何か正論を言われるのかと、ぎゅっと瞳と心臓を縮こまらせていると、意外なことが耳に入ってきた。
「愛理くんが今朝僕たちと登校している途中、桃尻くんのこと変わった気がするって言ってたんだよね。それは僕も正直なところ思っているんだ。悪い意味じゃなく、いい意味でね」
「そ、そうなの?」
あの後そんなことがあったんだ。もう瞳には私なんか映ってもなく、頭にもいなくなっていたもんだと勝手に思っていた。それじゃあ、あのときから愛理は私と仲良くなりたいって思ってくれていた……?
「さっきの桃尻くんは少し暴走しすぎかなとは思ったけど、彼女を好きだと思う気持ちはここにいる全員が同じ。そこで僕たちが不仲だと愛理くんも学校生活を苦に感じてしまうかもしれない。だから……」
「だからこそ、協力よね!」
「え?」
「え? 違うの?」
恵の言いかけていたのをうまいこと横取りして、私がいいこと言おうとしたのにポカンフェイス。どうやら答えは違ったようだ。他三人は白けた感じで私を見てくるので、足底から羞恥心がうずくのなんのっ! ええい、ここは逆切れよ!
「じゃあなに? 協力以外で何かあるっていうのかしら?」
「うっわ~、逆切れ乙です」
「雅人お黙り! ――それで恵先輩はどうお考えでして?」
「いや、桃尻くんので正解だよ。僕たちは協力して、尚且つ仲良くしていかなければならない。例えそれが表面上でもね」
恵はそう話し終えると、フフッとからかうように口角を上げる。からかわれたことにキィーッと癇癪を起しかけた。
しかし、それはすぐに鎮静していく。本当に思い返してみれば愛理を好きになったのは彼らのおかげなのだから。愛理の笑顔にしてくれた雅人、泣き顔にさせた三咲、照れ顔を見せてくれた睦月、恥じらう顔にさせた恵。そして四人は各自それぞれのイベントで、愛理を性的な意味で堕ちる表情に変えてくれたっけ。そうよ、そうだった。あの子のすぐそばには、いつも四人がいた。彼らには、そんな力がある。ぽっと出の私なんか霞むのも無理もない。不覚にも敵わないと、初めて感じてしまった。
だとしても、恵の言う通り、愛理を大切にする気持ちは同じ。
「よし、じゃあ協力ということで円陣組もう!」
心をひとつにするため、私はこいつらと性的な意味じゃなく、肉体的にもひとつになろう!
「え……なんで……」
「ひゃ~、ノリが陽キャぶる陰キャって感じで痛いですっ」
「きも、密、感染」
「キィー! なによあんたたち! ノリ悪すぎ。協力するなら円陣くらい組んだっていいじゃない! ねぇ恵先輩?」
「はは、そうだね。協調性を上げるため組もうか」
さすがは金持家の長男。話が分かってる。しかしここで問題発生。ウキウキで円陣を組もうとすれば私の肩を触れることはなく、四体一のスクラム状態が完成。なんだこれ。
「ちょっと! 話が違う!」
「パイセンは一応女性ですし、そう簡単に触れたら問題ですよぅ」
「このままでいいんじゃない……」
「んなことより声かけ早くしろよ、恵」
「ああ、僕でいいんだ? じゃ、さっそく愛理くんのために――協力しよう」
「おーっ!!」
バレーボール選手がやりそうな試合前に始まる声量で叫んでは右足を大きく踏み込む。そんな気合を入れたのは私のみだったけど、別にいい。だって元々協力とか、こいつらとする気はないから。
誰が協力なんてするかバーカ!!
淡を吐き捨てるように胸の奥底で四人兄弟の罵声罵倒を闇に吹きかけている間に昼休みは終わりの鐘を告げたのであった。
「愛理くんが今朝僕たちと登校している途中、桃尻くんのこと変わった気がするって言ってたんだよね。それは僕も正直なところ思っているんだ。悪い意味じゃなく、いい意味でね」
「そ、そうなの?」
あの後そんなことがあったんだ。もう瞳には私なんか映ってもなく、頭にもいなくなっていたもんだと勝手に思っていた。それじゃあ、あのときから愛理は私と仲良くなりたいって思ってくれていた……?
「さっきの桃尻くんは少し暴走しすぎかなとは思ったけど、彼女を好きだと思う気持ちはここにいる全員が同じ。そこで僕たちが不仲だと愛理くんも学校生活を苦に感じてしまうかもしれない。だから……」
「だからこそ、協力よね!」
「え?」
「え? 違うの?」
恵の言いかけていたのをうまいこと横取りして、私がいいこと言おうとしたのにポカンフェイス。どうやら答えは違ったようだ。他三人は白けた感じで私を見てくるので、足底から羞恥心がうずくのなんのっ! ええい、ここは逆切れよ!
「じゃあなに? 協力以外で何かあるっていうのかしら?」
「うっわ~、逆切れ乙です」
「雅人お黙り! ――それで恵先輩はどうお考えでして?」
「いや、桃尻くんので正解だよ。僕たちは協力して、尚且つ仲良くしていかなければならない。例えそれが表面上でもね」
恵はそう話し終えると、フフッとからかうように口角を上げる。からかわれたことにキィーッと癇癪を起しかけた。
しかし、それはすぐに鎮静していく。本当に思い返してみれば愛理を好きになったのは彼らのおかげなのだから。愛理の笑顔にしてくれた雅人、泣き顔にさせた三咲、照れ顔を見せてくれた睦月、恥じらう顔にさせた恵。そして四人は各自それぞれのイベントで、愛理を性的な意味で堕ちる表情に変えてくれたっけ。そうよ、そうだった。あの子のすぐそばには、いつも四人がいた。彼らには、そんな力がある。ぽっと出の私なんか霞むのも無理もない。不覚にも敵わないと、初めて感じてしまった。
だとしても、恵の言う通り、愛理を大切にする気持ちは同じ。
「よし、じゃあ協力ということで円陣組もう!」
心をひとつにするため、私はこいつらと性的な意味じゃなく、肉体的にもひとつになろう!
「え……なんで……」
「ひゃ~、ノリが陽キャぶる陰キャって感じで痛いですっ」
「きも、密、感染」
「キィー! なによあんたたち! ノリ悪すぎ。協力するなら円陣くらい組んだっていいじゃない! ねぇ恵先輩?」
「はは、そうだね。協調性を上げるため組もうか」
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「ちょっと! 話が違う!」
「パイセンは一応女性ですし、そう簡単に触れたら問題ですよぅ」
「このままでいいんじゃない……」
「んなことより声かけ早くしろよ、恵」
「ああ、僕でいいんだ? じゃ、さっそく愛理くんのために――協力しよう」
「おーっ!!」
バレーボール選手がやりそうな試合前に始まる声量で叫んでは右足を大きく踏み込む。そんな気合を入れたのは私のみだったけど、別にいい。だって元々協力とか、こいつらとする気はないから。
誰が協力なんてするかバーカ!!
淡を吐き捨てるように胸の奥底で四人兄弟の罵声罵倒を闇に吹きかけている間に昼休みは終わりの鐘を告げたのであった。
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