悪役令嬢になったんで推し事としてヒロインを溺愛しようと思う

マンボウ

文字の大きさ
上 下
11 / 84
ルート1 ヒロインとお近づきになろう!

危ない!ウキウキのお昼休みと四人の刺客!?

しおりを挟む
それから学生らしく長くて面白みのない授業が二時間、三時間、四時間と続き、睡魔に襲われながら自我を保つ。そして四時間目終了のチャイムが聞こえたら、合成な昼食が詰め合わせられた桃尻家特製の重箱を片手に愛理へとスキップをしながら走り寄っていく。

「松風さんっ、お昼行きましょう~!」

 待ちに待った昼休み。授業中、黒板じゃなく愛理をずーっと見つめている甲斐があった。距離が近いと存在そのものがより一層愛おしく感じてしまい、これから始まる多々あるイベントにやる気は満々となる。

「私がいつもお昼を食べている、おすすめの場所があるんですけど。よかったら、そこで食べませんか?」

「へぇ~、楽しみ! どこどこ?」

 案内場所は、これぞ二次元の特権でも呼べる何事もなく解放された屋上。それプラス、私たち以外には誰もいないお約束。転生された世界といえど、空気を読んでくれるシチュエーションに感謝感激。

 眩しい白い色のコンクリートが広がる爽やかな屋上に、柵の近くには季節の花たちが色を添えている。穏やかに流れゆく青雲に、天に近い地点だからか、空気が一段と澄み渡って、箸が止まらない。――それは私の口にではない。愛理の口に。

「はい、松風さんのお好きなエビチリですわよ~。あ~ん」

「あ、あーん」

 女子同士なのをいいことに、恋人まがいの行動をしてはキャッキャッと楽しんでいた。メニューはパスタにエビチリにグラタンといったJKが大体好きそうなものばかり。しかも桃尻家専属である一流のシェフが作っているらしく、見るからに高そうな食材ばかり。それには愛理も「美味しい」と言っては目を輝かせていた。

「ふふふ、まだまだありますからねぇ~! はい、あ~ん」

「あ、あー……ん、ちょっと大きいですね、このエビ……」

「オホホ、そうでしょう? とても大きくて、プリップリでございましょう?」

 なんてね。エビを縦にして入れようとするから強制的にお口を大きく開けなければならないのだ。これで無防備な口内が丸見え。ゲームでも見れなかった愛理の喉奥のアレが……見えりゅ……。

「あらあら~、もうちょっと大きく開けないと入らないですわ~?」

 グイグイと箸の上で立派に反り立つエビを向けて、変態オヤジの如く、さらに開くよう誘導していたら――

「アアアァン!?」

 バリバリブチィ! 突如、愛理の前に現れた三咲が鬼の形相でエビに食らいついた。無残にもエビは激しい音をあげながら粉砕。細かな無数の殻やヒゲが下のコンクリートへパラパラと落ちていった。私の心までもが虚しく、散っていく。

「ちょっと三咲! なにすんのよ、あんた! 私と松風さんの空間に入り込まないでくれる!?」

「それはこっちのセリフだっつーの。さっきから気色わりぃんだよクソ尻!」

 ペッと吐き捨てる三咲の横には雅人、睦月、恵の三人まで勢揃い。……もうなんとなく分かっていると思うけど、その通り。ここの屋上にいるのは、私と愛理の二人だけではない。この四兄弟もちゃっかりといた。それも屋上に来る前の、最初から。ウキウキで扉を開いたときの四人の顔と、私の顔は楳図かずお並みの絶叫フェイスで一致していたと思う。

 またも愛理を守ろうとしてか、私の横には誰も座らず、正面に愛理。その周囲を護衛するかのように四人が並んだ圧迫面接スタイル。

 最悪なことに、これは私のミス。四人と接点を持った時点で愛理は昼食を四人で食べるのが当たり前となっていたことを忘れていたのである。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました

さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア 姉の婚約者は第三王子 お茶会をすると一緒に来てと言われる アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる ある日姉が父に言った。 アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね? バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?

荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」 そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。 「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」 「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」 「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」 「は?」 さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。 荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります! 第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。 表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路

八代奏多
恋愛
 公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。  王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……  ……そんなこと、絶対にさせませんわよ?

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

処理中です...