5 / 84
ルート1 ヒロインとお近づきになろう!
イケメンどもよ、そこをどけ!私が通る!
しおりを挟む
四人は私を睨む――とまでいかない。喜怒哀楽どれにも当てはまらない真顔だったけど、どことなく強い敵意を感じた。四対一で人数もあちらが多ければ、接近して恋心を抱かれるチャンスも多い。
だけどそれがなに? そんなことぐらいで怯むとでも?
愛の大きさは断然私の方が勝っている。三百六十五日、寝る間も惜しんで肌荒れしても、クリスマスだろうとバレンタインだろうと、私はぐちょメモ、愛理の笑顔や泣き顔、発情顔、アへ顔。そして存在全てに全てを捧げてきたのよ。あの子が好きな物や感じる部位も好きな責めも頭の中に記憶してあるんだから!
――なんて声に出せるはずがない。あたおか認定されては、愛理との距離はますます遠くなるかもしれないのだから。ここは争う姿勢をやめて、警戒を解くのが先。
「あなたたちが私を軽蔑するのは当然ですわ。だけど、己の極悪非道な行いを恥じることなく、松風さんに対する嫌がらせを思い返して私は、本当に最低な人間だと感じましたの。謝罪をしたからといって許されるべきではありません。ですが、言葉にして謝りたいんです」
自分のした行為ではなくとも、桃尻エリカという存在が愛理を傷つけていた。実際、桃尻の裏の策略でバッドエンドに繋がったケースもあった。なんて考えていれば私の瞳からは自然と大粒の涙がこぼれていく。それと空気の読めない鼻ちょうちんが見事にぷくぅ~と膨れ上がったが、涼しい顔をして袖で拭った。
どうよ!? 女子がここまで泣いて後悔してんのよ? 少しは警戒心を解いてもいいんじゃないの?
「前もそんなこと言って愛理に嫌なことしてたよね……」
「なっ!?」
嘘!? そんなことあったっけ!?
ボソリと突っ込む睦月に他の三人がうんうんと激しく同意。警戒心を失くすはずが、それはウソ泣き判定されてしまい、逆効果となってしまったのだ。それ以前に桃尻が愛理に近づいて謝罪の真似事をした出来事なんて覚えがなく、頭はたいへん混乱した。
どうして? この私が忘れていた? そんなはずがない。……って、まさかっ! ぐちょメモのゲーム内にはない、プレイヤーの知らない嫌がらせがまだまだ多々あったってことなの!? おのれ桃尻……っ!
桃尻エリカの悪事に虫唾が走る。無意識に舌打ちとギリギリと歯ぎしりを立てたが、前にいる金持兄弟は本当の理由は知る由もない。嘘がバレたことによる逆切れだと解釈しては、あからさまにゴミを見る感じで視線を送る。とくに雅人と三咲。
「とりあえず桃尻パイセンはここでお別れですねっ。バイバイキ~ン☆」
「とっとと失せろ」
「また後でね」
「ちょ、ちょ、ちょっと押すんじゃない! こらセクハラ!」
雅人と三咲は強制的に私の体を横に押してくる。恵に至っては背中に手を添え、女性の階段の上り下りをエスコートするかのようにジェントルマンを装っているものの、じわじわとバス停から遠ざけていく。負けるかー!! 足元をふんばって頑としてどかない意思を示すが、あっけなく跳ね飛ばされてしまう、男子高校生といっても男の力には敵わない。
そうして桃尻エリカのいなくなったバス停に平和が訪れましたといわんばかりに、四人はこちらに一瞥もせず談笑をし始めた。
この金持ちボンボンブラザーズ……っ!
憎しみを背中越しに送りつけていたそのとき、一台のバスがやってきた。――そう、愛理が乗っている八時着のバスだ。それを目にした瞬間、憎む気持ちは一層され、バラ色の世界が広がる。画面越しでしか知らない、憧れだった子に会える嬉しさと緊張がごちゃ混ぜとなり、心臓に送る血液が渋滞しそうだった。
プシュー、気の抜けた音を出して停止するバスの扉が開く。学園近くなので生徒が多数降りてくる。
一番目、二番目、三番目、まだ降りてこない。四番目、そして五番目に降りる女子生徒の細く輝く足元を見ただけで分かった。
――愛理だ。ぐちょぐちょメモリアルの主人公であり、ヒロインの松風愛理がたしかにそこにいた!
だけどそれがなに? そんなことぐらいで怯むとでも?
愛の大きさは断然私の方が勝っている。三百六十五日、寝る間も惜しんで肌荒れしても、クリスマスだろうとバレンタインだろうと、私はぐちょメモ、愛理の笑顔や泣き顔、発情顔、アへ顔。そして存在全てに全てを捧げてきたのよ。あの子が好きな物や感じる部位も好きな責めも頭の中に記憶してあるんだから!
――なんて声に出せるはずがない。あたおか認定されては、愛理との距離はますます遠くなるかもしれないのだから。ここは争う姿勢をやめて、警戒を解くのが先。
「あなたたちが私を軽蔑するのは当然ですわ。だけど、己の極悪非道な行いを恥じることなく、松風さんに対する嫌がらせを思い返して私は、本当に最低な人間だと感じましたの。謝罪をしたからといって許されるべきではありません。ですが、言葉にして謝りたいんです」
自分のした行為ではなくとも、桃尻エリカという存在が愛理を傷つけていた。実際、桃尻の裏の策略でバッドエンドに繋がったケースもあった。なんて考えていれば私の瞳からは自然と大粒の涙がこぼれていく。それと空気の読めない鼻ちょうちんが見事にぷくぅ~と膨れ上がったが、涼しい顔をして袖で拭った。
どうよ!? 女子がここまで泣いて後悔してんのよ? 少しは警戒心を解いてもいいんじゃないの?
「前もそんなこと言って愛理に嫌なことしてたよね……」
「なっ!?」
嘘!? そんなことあったっけ!?
ボソリと突っ込む睦月に他の三人がうんうんと激しく同意。警戒心を失くすはずが、それはウソ泣き判定されてしまい、逆効果となってしまったのだ。それ以前に桃尻が愛理に近づいて謝罪の真似事をした出来事なんて覚えがなく、頭はたいへん混乱した。
どうして? この私が忘れていた? そんなはずがない。……って、まさかっ! ぐちょメモのゲーム内にはない、プレイヤーの知らない嫌がらせがまだまだ多々あったってことなの!? おのれ桃尻……っ!
桃尻エリカの悪事に虫唾が走る。無意識に舌打ちとギリギリと歯ぎしりを立てたが、前にいる金持兄弟は本当の理由は知る由もない。嘘がバレたことによる逆切れだと解釈しては、あからさまにゴミを見る感じで視線を送る。とくに雅人と三咲。
「とりあえず桃尻パイセンはここでお別れですねっ。バイバイキ~ン☆」
「とっとと失せろ」
「また後でね」
「ちょ、ちょ、ちょっと押すんじゃない! こらセクハラ!」
雅人と三咲は強制的に私の体を横に押してくる。恵に至っては背中に手を添え、女性の階段の上り下りをエスコートするかのようにジェントルマンを装っているものの、じわじわとバス停から遠ざけていく。負けるかー!! 足元をふんばって頑としてどかない意思を示すが、あっけなく跳ね飛ばされてしまう、男子高校生といっても男の力には敵わない。
そうして桃尻エリカのいなくなったバス停に平和が訪れましたといわんばかりに、四人はこちらに一瞥もせず談笑をし始めた。
この金持ちボンボンブラザーズ……っ!
憎しみを背中越しに送りつけていたそのとき、一台のバスがやってきた。――そう、愛理が乗っている八時着のバスだ。それを目にした瞬間、憎む気持ちは一層され、バラ色の世界が広がる。画面越しでしか知らない、憧れだった子に会える嬉しさと緊張がごちゃ混ぜとなり、心臓に送る血液が渋滞しそうだった。
プシュー、気の抜けた音を出して停止するバスの扉が開く。学園近くなので生徒が多数降りてくる。
一番目、二番目、三番目、まだ降りてこない。四番目、そして五番目に降りる女子生徒の細く輝く足元を見ただけで分かった。
――愛理だ。ぐちょぐちょメモリアルの主人公であり、ヒロインの松風愛理がたしかにそこにいた!
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる