「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。

第32話 妻と愛人の話に恐ろしい雰囲気

飛び込みの来訪者マリアはソフィアに感謝で胸がふさがれていた。夫のジャックと不倫関係が明るみに出ても慰謝料など何も要求しなかった妻に深く感謝と敬意を表した。

妻にしてみれば夫と兄と関係した女性が何か探りにきたのか？良からぬことをしにきたのか？そういう先入観を持っていたので、マリアの自然な感じの笑顔が悪い笑みを浮かべているように見えたりしてしまった。

「こんなおぞましい物で夫の身体を叩けというの？」
「そうですか。奥様には余計なお世話だったようですね」
「本当よ。あなたが何を考えているのか分からないわ。そんな事を言いにきたの？」

マリアが黒革の鞄から取り出した物は長い鉄製の鞭むちでした。こんな物で夫を叩いたら死んじゃうじゃないの？この前は無理やりキスされて襲われそうになりましたが殺したいほどは憎んでいません。

それどころか逆に子供のためにも仲直りしたいとソフィアは思っていて、夫の部屋に行ったのですか夫の恥ずかしい姿を偶然にも見てしまい夫婦間の溝が深まって気持ちがすれ違うばかりです。

「……恋人と別れました。結婚はもうどうでもよくなって彼が好きなのか分からなくなって……」
「あなたも辛くて悲しい思いをしたのですね。ですが恋人と別れようと不幸になろうと私には関係ありませんけど？」

マリアは暗く沈んだ顔に変わって恋人と別れたと言う。確か結婚を誓い合った仲だと聞かされていました。彼が浮気をしてマリアは頭がおかしくなりそうなほど傷ついた。

浮気は許せないけど好きなので別れられないと兄に相談して心が楽になった。その事でますます兄が好きになって身体の関係を持つまでに至ったのである。

人の不幸は蜜みつの味といいますが、夫と兄と関係を持ったマリアの事をソフィアは許せていないので、恋人と別れたと聞いて心の中で楽しい気分になって叫びたいほど喜んでいた。ですが表面では同情したような顔をして労いたわる言葉をかけた。

「この前ダニエル様と会いました」
「その事はお兄様から聞きました。言い寄って誘惑したそうですね？」
「ダニエル様が寂しそうな顔をしていましたから可哀想に思って……」

奥様は本当は私の不幸を笑っていますね？という顔を正面に座っているソフィアに向けてから再び言い始める。マリアはダニエルと会って話したと言う。それは週に一度は家に遊びに来る兄から聞かされている。

その時に兄はマリアに身体を寄せられ抱きつかれた。おまけに耳が溶けるような官能的な甘い誘惑を受けた。だが負けることなく耐え抜いたと鼻息を荒くしながら話してくれた。

「お兄様に言い寄らないと約束をしましたが忘れたのですか？」
「覚えていますよ。誓約書に書いた事は守ります」

マリアが愛する人と別れたと聞いて喜びを感じた後から不安が押し寄せてくる。兄と夫と以前のように交際するのではないか？と急に不安な気持ちが稲妻のように胸に走る。

実はあの話し合いの場でマリアはある約束をし同意して誓約書にサインをした。ある約束とは言うまでもなく兄と夫と結ばれる行為です。それにより慰謝料などの罪を免まぬがれることができた。甘いかもしれませんがマリアとはそのようにして決着するしかありませんでした。

「あなた微塵も守ってないじゃないの！」

それなのに兄を誘惑するなんて約束した事と話が違います。ソフィアはテーブルを叩いて大きな声を張りあげた。

「うるさいのよ！」

すると先ほどまで笑顔で対応していたマリアの顔がみるみる変わると、かなり挑戦的な態度を表してきて噛みつくように言った。