「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。

第31話 夫と兄の愛人が突然来て妻は混乱

夫のあんな姿を見てしまい夫婦の仲は余計に悪くなり気まずさを引きずっていた最中だった。そんな時あの人が訪問して来た。最初に名前を聞かされた時は話をするか迷いましたが、兄と夫の事を知りたい気持ちもありとにかく会って話を聞くことにした。

「――奥様お久しぶりです」

ふてぶてしい笑みを唇に浮かべて待っていたのはマリアだった。夫の不倫相手で兄とも関係を持つ魔性の女性。何をしに来たのか？ソフィアは不安そうな思いで敵意を込めた目を向けて席に着いた。

マリアは軽く微笑んで挨拶した。ソフィアは警戒するような眼差しで無言のまま視線だけで応えた。

「ジャック様と仲直りされて夫婦関係は修復されましたか？」
「あなたに関係ありません！」

ソフィアが黙っているとマリアが鼻で笑って言う。しゃべり終えるやいなやソフィアの怒鳴り声が響く。親しくもないのに失礼な態度で接してくるマリアに憤いきどおりを覚えずにいられない。

公爵夫人のソフィアと元男爵令嬢で今は平民のマリア。ソフィアがその気になればマリアは捕らえられ、即刻処刑するよう命令を下すこともできる。圧倒的なまでの権力差があるのに好戦的に見下す発言をとった。

「そんなに怒らないでください。でもその感じではまだのようですね」
「あなたは自分の立場はわかってるの？」

マリアは夫のジャックと不貞を働き兄のダニエルとも肉体関係を結んだ。独身のダニエルはともかく結婚しているジャックと関係を持ったマリアには妻の立場から慰謝料を請求できる。

だがマリアにはお情けで一切の金銭的な負担を強いていない。マリアは貧乏なのでお金に苦労しているが、ソフィアは特にお金の苦労はないのでお金をもらっても仕方ないという思いもある。慰謝料という理由でわずかなお金を支払われても気持ちは晴れない。

「お慈悲をいただいた奥様を怒らせるつもりはございません」
「それでは何をしにきたの？」

この世界には奴隷制度が認められているので、マリアを奴隷身分に落とすことも可能だが気分がスッキリし爽快な状態にもなれない。マリアの家族の母と弟が貧困生活に、いっそう拍車がかかるくらいなものと思ったのです。

処刑したらマリアの家族が悲しむだけで殺しても仕方ない。このため結果的にマリアのやり得で話がついた。

「ジャック様の喜ばせ方を伝えにきました」
「はぁ？」

マリアは慰謝料など何も求めなかったソフィアに感謝していた。なのでケンカを売りにきたわけではなく単純に親切心で訪問した。

マリアは公爵邸に呼ばれて話し合いをしてから数週間後に、一度だけダニエルと会って話した時にソフィアの夫婦関係がいまだに悪いと聞かされていた。マリアは恩義あるソフィアに力を貸しにきたのだ。

「今日は奥様にこれを差し上げに来ました」

マリアは黒い革製の手さげ鞄を持っていた。夫を喜ばせる方法を教えたいと言うマリアだが、妻にどんな奥義を伝授しにきたのか？

「鞭むち？」
「これをジャック様に使ってください」
「……これで私に夫の身体を叩けと言うのですか？」
「はい」

頭の中が疑問のソフィアにマリアは鞭を手渡した。なんでしょう？というようにソフィアは小首をかしげる。瞬間的に脳裏に閃くものがあった。ようやく納得したようなソフィアにマリアは明るい笑顔で返事をした。