25 / 26
第25話
しおりを挟む
「悪いけど私には裏切れない相手がいるの」
「そうでした。お姉さんは王子様と婚約していましたね」
「そうよ。だから無理」
アルフィ皇太子殿下との婚約は、妹のエリーとの浮気が原因でとっくに解消されている。でも少年は知らないようなので、今の状況ではそう思ってくれたほうが好都合だった。
それに少年なので幼げな顔立ちで無邪気な笑顔が広がっている。美形なので将来的には素敵な男性に成長して、情熱的な恋をして幸せをつかむだろう。
だからオリビアは素直に身を引こうとしたが、少年は腰に抱きついてきた。王子様と結婚するから無理だと分かって口にしても体は正直すぎるものです。
「離しなさい!」
オリビアの声が街中に響く。少し厳しい口調で言ったが少年は、すぐにはその手を離したくない様子だった。オリビアのことを諦めきれなかったし、諦める気もなかった。
「お姉さんが結婚してくれると言ってくれるまで僕は離しません!」
ほぼ街の中心部で少年が声高く叫ぶ。行き交う大勢の通行人たちが次々と足を止めて、何があったんだ?と不思議そうにこちらを振り返っていた。
「恥ずかしいからやめて!」
「やだ!」
何とか説得しようとするが、頑なな態度を少年はとりつづけている。見物している野次馬たちの視線がそそがれているのを感じてオリビアは顔から火がでる思いであった。
「坊主何やってんだ?美人のお尻に抱きついて……」
見物客の数人が近づいてきて、そのうちの一人が陽気に声をかけた。少年はオリビアの背後から抱きついている格好になっている。背も低いので丁度お尻に顔を埋めた状態になっているのだ。
「あなた達、見ているなら何とかしなさいよ!」
オリビアは鋭い命令口調で話すと、見物客の男たちは必死に少年を引き剥がそうとする。少年は最後まで抵抗しようと意気込んですさまじい形相で泣き喚いていた。
引き剥がされた直後、バチン!と大きな音がして少年の頬っぺたに強烈な痛みが走った。熱くなった頬が少しずつ赤く染まっていく。
「我慢できなくて……ごめんなさい……お姉さん許してください」
思いきり平手で叩かれた少年は、両目に涙を一杯溜めてオリビアをじっと見つめていましたが、やがて悲しそうに謝罪しました。
「もういいから」
オリビアは頭をそっと撫でてやりながら、少年に顔を寄せて小声でささやいた。
*****
新作「王子に婚約破棄されて国を追放「魔法が使えない女は必要ない!」彼女の隠された能力と本来の姿がわかり誰もが泣き叫ぶ。」を投稿しました。よろしくお願いします。
「そうでした。お姉さんは王子様と婚約していましたね」
「そうよ。だから無理」
アルフィ皇太子殿下との婚約は、妹のエリーとの浮気が原因でとっくに解消されている。でも少年は知らないようなので、今の状況ではそう思ってくれたほうが好都合だった。
それに少年なので幼げな顔立ちで無邪気な笑顔が広がっている。美形なので将来的には素敵な男性に成長して、情熱的な恋をして幸せをつかむだろう。
だからオリビアは素直に身を引こうとしたが、少年は腰に抱きついてきた。王子様と結婚するから無理だと分かって口にしても体は正直すぎるものです。
「離しなさい!」
オリビアの声が街中に響く。少し厳しい口調で言ったが少年は、すぐにはその手を離したくない様子だった。オリビアのことを諦めきれなかったし、諦める気もなかった。
「お姉さんが結婚してくれると言ってくれるまで僕は離しません!」
ほぼ街の中心部で少年が声高く叫ぶ。行き交う大勢の通行人たちが次々と足を止めて、何があったんだ?と不思議そうにこちらを振り返っていた。
「恥ずかしいからやめて!」
「やだ!」
何とか説得しようとするが、頑なな態度を少年はとりつづけている。見物している野次馬たちの視線がそそがれているのを感じてオリビアは顔から火がでる思いであった。
「坊主何やってんだ?美人のお尻に抱きついて……」
見物客の数人が近づいてきて、そのうちの一人が陽気に声をかけた。少年はオリビアの背後から抱きついている格好になっている。背も低いので丁度お尻に顔を埋めた状態になっているのだ。
「あなた達、見ているなら何とかしなさいよ!」
オリビアは鋭い命令口調で話すと、見物客の男たちは必死に少年を引き剥がそうとする。少年は最後まで抵抗しようと意気込んですさまじい形相で泣き喚いていた。
引き剥がされた直後、バチン!と大きな音がして少年の頬っぺたに強烈な痛みが走った。熱くなった頬が少しずつ赤く染まっていく。
「我慢できなくて……ごめんなさい……お姉さん許してください」
思いきり平手で叩かれた少年は、両目に涙を一杯溜めてオリビアをじっと見つめていましたが、やがて悲しそうに謝罪しました。
「もういいから」
オリビアは頭をそっと撫でてやりながら、少年に顔を寄せて小声でささやいた。
*****
新作「王子に婚約破棄されて国を追放「魔法が使えない女は必要ない!」彼女の隠された能力と本来の姿がわかり誰もが泣き叫ぶ。」を投稿しました。よろしくお願いします。
26
*****新作「病気で療養生活を送っていたら親友と浮気されて婚約破棄を決意。私を捨てたあの人は――人生のどん底に落とします。」を投稿しました。ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
お気に入りに追加
1,707
あなたにおすすめの小説

純白の牢獄
ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

白い結婚がいたたまれないので離縁を申し出たのですが……。
蓮実 アラタ
恋愛
その日、ティアラは夫に告げた。
「旦那様、私と離縁してくださいませんか?」
王命により政略結婚をしたティアラとオルドフ。
形だけの夫婦となった二人は互いに交わることはなかった。
お飾りの妻でいることに疲れてしまったティアラは、この関係を終わらせることを決意し、夫に離縁を申し出た。
しかしオルドフは、それを絶対に了承しないと言い出して……。
純情拗らせ夫と比較的クール妻のすれ違い純愛物語……のはず。
※小説家になろう様にも掲載しています。
私のことはお気になさらず
みおな
恋愛
侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。
そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。
私のことはお気になさらず。


貴方を捨てるのにこれ以上の理由が必要ですか?
蓮実 アラタ
恋愛
「リズが俺の子を身ごもった」
ある日、夫であるレンヴォルトにそう告げられたリディス。
リズは彼女の一番の親友で、その親友と夫が関係を持っていたことも十分ショックだったが、レンヴォルトはさらに衝撃的な言葉を放つ。
「できれば子どもを産ませて、引き取りたい」
結婚して五年、二人の間に子どもは生まれておらず、伯爵家当主であるレンヴォルトにはいずれ後継者が必要だった。
愛していた相手から裏切り同然の仕打ちを受けたリディスはこの瞬間からレンヴォルトとの離縁を決意。
これからは自分の幸せのために生きると決意した。
そんなリディスの元に隣国からの使者が訪れる。
「迎えに来たよ、リディス」
交わされた幼い日の約束を果たしに来たという幼馴染のユルドは隣国で騎士になっていた。
裏切られ傷ついたリディスが幼馴染の騎士に溺愛されていくまでのお話。
※完結まで書いた短編集消化のための投稿。
小説家になろう様にも掲載しています。アルファポリス先行。

幼馴染は不幸の始まり
mios
恋愛
「アリスの体調が悪くなって、申し訳ないがそちらに行けなくなった。」
何度目のキャンセルだろうか。
クラリッサの婚約者、イーサンは幼馴染アリスを大切にしている。婚約者のクラリッサよりもずっと。

もう愛は冷めているのですが?
希猫 ゆうみ
恋愛
「真実の愛を見つけたから駆け落ちするよ。さよなら」
伯爵令嬢エスターは結婚式当日、婚約者のルシアンに無残にも捨てられてしまう。
3年後。
父を亡くしたエスターは令嬢ながらウィンダム伯領の領地経営を任されていた。
ある日、金髪碧眼の美形司祭マクミランがエスターを訪ねてきて言った。
「ルシアン・アトウッドの居場所を教えてください」
「え……?」
国王の命令によりエスターの元婚約者を探しているとのこと。
忘れたはずの愛しさに突き動かされ、マクミラン司祭と共にルシアンを探すエスター。
しかしルシアンとの再会で心優しいエスターの愛はついに冷め切り、完全に凍り付く。
「助けてくれエスター!僕を愛しているから探してくれたんだろう!?」
「いいえ。あなたへの愛はもう冷めています」
やがて悲しみはエスターを真実の愛へと導いていく……
◇ ◇ ◇
完結いたしました!ありがとうございました!
誤字報告のご協力にも心から感謝申し上げます。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる